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月刊The Lawyers 2013年11月号(第168回)

2. St. Jude Medical, Inc. 対 Access Closure, Inc. 事件

No. 2012-1452 (September 11, 2013)

- 限定要求によるセーフ・ハーバーと、二重特許の問題、
二重特許が侵害訴訟で有効な争点になることを示した判決 -

この事件でCAFCは、アーカンソー州西地区地方裁判所の判決を破棄した。地方裁判所の判決では、米国特許法第121条のセーフ・ハーバー規定(限定要求で選択しなかったクレームに基づく分割出願は二重特許を理由に拒絶されないという規則)により、対象の特許クレームが二重特許によって無効となることはないと認定された。

CAFCは、争点となった特許クレームが「調和(consonance)」ルールに違反しており、セーフ・ハーバー規定が適用されないため、争点となった特許クレームは二重特許により無効であると結論付けた。

争点の特許である米国特許第7,008,439号(以下、ジャンゼン特許)は、カテーテルのような医療デバイスが挿入された血管穿刺部位を封止するための方法およびデバイスを対象とする。ジャンゼン特許は左図に示される特許ファミリーの一部である。

「祖父」特許および「親」特許の審査過程で、出願人は、出願を方法クレームまたは装置クレームの何れかに限定する限定要求と3つの種のうちの1つに関するクレームを選択する選択要求とに直面した。

両出願において、出願人は同一の種に特徴を有する装置クレームの審査を選択した。ジャンゼン特許の出願時、出願人はインタフェアレンスを引き起こすために関係ない特許から装置クレームおよび方法クレームをコピーした。

インタフェアレンスを克服した後に、ジャンゼン特許は装置クレームと方法クレームの両方で発行された。また出願人は、3つの種の何れにも限定されない方法クレームを有する別の継続出願を提出し、それは米国特許第5,725,498号(以下、兄弟特許)として特許権が付与された。

地方裁判所の審理は陪審審理であった。陪審員は、ジャンゼン特許の特許権は侵害されているが、兄弟特許との二重特許により無効であると認定した。この争点は陪審員の審理対象とはならなかったため、地方裁判所は、非陪審審理を開始し、二重特許の認定を回避するセーフ・ハーバー規定がこれらのクレームに適用されるかどうかを判断した。

地方裁判所はセーフ・ハーバー規定を適用可能であると認定し、陪審員の特許無効認定を覆し、クレームが有効であると認定した。

控訴審において、CAFCは始めにセーフ・ハーバー規定および「調和」ルールについて説示した。米国特許法第121条は、セーフ・ハーバー規定に関し、次のように規定している。

「本条に基づいて限定すべき旨を要求された出願またはその要求の結果としてなされた出願に対して付与された特許は、分割出願が他の出願に関する特許の付与前に行われている場合は、特許商標庁においてもまたは裁判所においても、分割出願に対して、または原出願若しくはその何れかに基づいて付与された特許に対して引用されないものとする」

よって、セーフ・ハーバー規定は基本的に特許権者が米国特許庁における限定要求の実務に従えば、その後に後続の侵害訴訟で二重特許の疑念に直面することから特許権者を保護する。

「調和」ルールとは、セーフ・ハーバー規定が適用可能であるためにはファミリーで発行された特許全体を通じて限定要求を引き起こす発明間の差異を維持することを要求する判例法理であるとCAFCは説明した。

これらの原理を適用して、CAFCは、争点の特許クレームは「調和」ルールに違反するため二重特許により無効であると判断した。

CAFCは、ジャンゼン特許が3つの種のうちの1つを特徴とする装置クレームおよび方法クレームを含み、祖父特許が3つの種のうちの別の1つを特徴とする装置クレームを有すると説明し、クレームが別の範囲のものであるため、これは「調和」ルールに抵触しないと判断した。

合議体の多数意見によれば、3つの種のすべてを包括する方法クレームを有する兄弟特許のせいで問題が生じたとのことである。

CAFCは、ジャンゼン特許が3つの種のうちの1つに関する装置クレームおよび方法クレームを含み、兄弟特許に包含されている方法クレームを含むことは、これらのクレームが重複することを意味すると理由づけた。

CAFCは、この重複する範囲により「調和」が維持されないとした。従って、CAFCは、セーフ・ハーバー規定が適用されないため、ジャンゼン特許のクレームが兄弟特許に対する二重特許により無効であると判断した。

ローリー判事は多数派が到達した結果に同意した。ローリー判事の意見では、ジャンゼン特許が装置クレームと方法クレームとの両方を含むため、祖父特許および親特許における限定要求に調和しないとのことである。

ローリー判事は、ジャンゼン特許は限定要求によって要求された方法クレームと装置クレームとの間の差異を維持していなかったため、「調和」ルールに違反すると考えた。ローリー判事は、兄弟特許に関する多数派の分析と、種の選択要求に関する多数派の対処は不要であると判断した。

この判決のポイント

この事件では、二重特許が侵害訴訟において役立つ防御になりうることを注意喚起した。二重特許の主張に対して特許権者がセーフ・ハーバー規定の利益を受けるためには、「調和」ルールに違反してはならない。審査手続において、出願人は、限定要求による複数の発明間の区別を無視したようなクレームでもって関連出願の手続きを進めることを避けるように留意しなければならない。

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