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月刊The Lawyers 2013年10月号(第167回)

3. Robert Bosch, LLC, 対 Pylon Manufacturing Corp. 事件

Nos. 2011-1363, -1364 (Fed. Cir. June 13, 2013)

- 損害賠償及び故意侵害の判断が地裁でなかった場合でも、
CAFCは侵害論を再審理する裁判管轄権を持つことを論じた判決 -

ボッシュ(Robert Bosch, LLC)対パイロン(Pylon Manufacturing Corp.)事件の大法廷において、CAFCは、(1)損害賠償に関する審理がまだ行われておらず、(2)故意侵害に関する争いが進行中で結論が出ていない状況において、特許権の侵害論の判決に対する控訴を審理する裁判管轄権をCAFCが有する、との判決を下した。

ボッシュは、パイロンが特許権を侵害したとして訴訟を提起したが、パイロンは、ボッシュに対して特許権侵害の反訴を提起した。

地方裁判所は、侵害論を損害賠償及び故意侵害から分離するというパイロンによる申し立てを認めた。損害賠償に関する争いが残される一方で、侵害論に関する陪審審理が行われた。地方裁判所が侵害論の争いについて判決を下した後に、両当事者は控訴及び交差上訴を行った。CAFCは、裁判管轄権に関する問題を判断するために、この事件を大法廷で審理することに決めた。

CAFCは最初に、28USC§1292(c)(2)は、損害賠償に関する審理がまだ行われていない時でも、控訴に対する裁判管轄権をCAFCに認めていると判断した。§1292(c)(2)の下では、「特許権侵害に対する民事訴訟における判決が…償還を除いて最終的なものである」場合にCAFCへ控訴することができる。

この事件における問題は、損害賠償または故意侵害に関する審理が§1292(c)(2)の目的にとっての「償還」に該当するか否かということを主題としていた。

判事たちの多数意見は、「償還」が侵害者の利益及び特許権者の損害の両方の判定を含むと考えた。プロスト判事が書いた意見によれば、多数意見は特許訴訟における「償還」に関する歴史的分析を行った。

元々、特許訴訟における「償還」は、損害賠償額の算定を含んでいなかった。しかしながら、1927年、議会は「償還」を除く特許侵害判決に対する中間判決控訴管轄権を与える法律を制定した(これが後に§1292(c)(2)になる)。

CAFCは、判例の下では、この法律の制定後は「償還」が利益及び損害の両方の判定を含むものと一貫して考えられてきたと判断した。それゆえ、多数意見は、損害賠償の判定は「償還」の範疇に含まれると結論した。

ボッシュは、たとえ「償還」が損害賠償の判定を含むとしても、「償還」はエクイティ裁判所でのみ可能であるから、この用語は審理をカバーしないと主張した。ボッシュは、陪審員はエクイティを扱わないから、「償還」は損害賠償に関する陪審審理を含み得ないと主張した。

多数意見は、ボッシュの主張を却下した。その理由は、議会は、特許訴訟における中間判決控訴管轄権を、エクイティの事例から「償還」を除いて最終的である「民事訴訟」へと拡張したというものであった。加えて、CAFCは、ここ25年間にわたり「償還」が損害賠償の審理を含むというパネル判決を行ってきているので、先例拘束性がこの判断を支持すると判断した。

2番目の問題に関して、CAFCは5対4の多数決で、適用可能な法律は地方裁判所によって故意侵害が判断される前に裁判管轄権を与えていると判断した。多数意見は再び、特許訴訟に関する歴史的分析を行い、§1292(c)(2)の前身の制定前に、「償還」の手続が故意侵害に関するスペシャルマスターズ決定(special master's determination)を含んでいたと判断した。

更に、§1292(c)(2)の前身の制定後も、「償還」は故意侵害の判断を含んだままであった。それゆえ、CAFCは、§1292(c)(2)は故意侵害が判断される前にCAFCが控訴を審理することを認めていると判断した。

補足意見として、CAFCは、地方裁判所は故意侵害及び損害賠償を侵害論から分離する裁量を有すると述べた。

少数意見として、オマリー判事は、ヴァラッハ判事と共に、「償還」が損害賠償を含むという広い意味での解釈に反対した。少数意見は、「償還」は、陪審員が損害賠償の判断に関係する全ての事柄について決定を下したが具体的な数値にまでは至っていないという事例を含むだけであると主張したのである。

少数意見は、故意侵害に関する多数意見の結論は妥当ではないと信じており、侵害判断を故意侵害から分離して異なる陪審団により審理することが認められるかどうかについて疑問を投げかけた。

オマリー判事は、2つの異なる陪審団の一方に侵害及び有効性を扱わせ他方に故意侵害を扱わせることは、陪審裁判に対する被告の憲法修正第7条の権利を侵害しかねないと述べた。

ボッシュの判決は、地方裁判所において損害賠償及び故意侵害がまだ判断されていない場合であっても、CAFCが侵害論の判断を再審理する裁判管轄権を有するということを明らかにするものである。

両当事者は、侵害論の判決について迅速な再審理を求めることができるので、より分離を求める傾向になるかもしれない。この判決に鑑み、地方裁判所は、侵害論を損害賠償から分離することが争いを単純化すると信じる場合には、そうすることをより積極的に考慮するようになるかもしれない。

この判決のポイント

この判決では、地方裁判所において損害賠償及び故意侵害が判断されていない場合でも、CAFCが侵害論の判断を再審理する裁判管轄権を有するということを明らかにした。また、地方裁判所が故意侵害及び損害賠償を侵害論から分離する裁量をもつことも確認された。

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