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月刊The Lawyers 2013年9月号(第166回)

3. Douglas Dynamics, LLC 対 Buyers Products Company 事件

No. 2011-1291 (May 21, 2013)

- 差し止め命令の諾否を、最高裁が定めた要因テストを採用して判断した判決 -

この事件は、ダグラス・ダイナミクス(Douglas Dynamics, LLC)が所有する除雪車へ装着する組立部品に関する3件の特許:米国再発行特許第RE35,700号(700特許)、米国特許第5,353,530号(530特許)、第6,944,978号(978特許)に関し、バイヤーズ・プロダクツ(Buyers Products Company)を特許侵害で提訴したことに対する控訴審および交差上訴審である。

ダグラスとバイヤースは共にトラックの前方に装着する除雪用組み立て部品を製造している。ダグラスはその市場における高価な製品を扱っており、一方バイヤースは低価格品を扱っている。

ダグラスの700特許は、トラックのバンパーの裏に隠れた装着フレームに対し、単体のユニットとして着脱が可能な除雪用組み立て部品を記載する。その特許は、除雪ブレードがAフレームに装着され、そのAフレームはリフトフレーム(またはサポートフレーム)に接続されていた。リフトフレームとAフレームはさらに装着フレームに接続していた。

700特許のクレーム1および38は、Aフレームがリフトフレームを支持することを構成要件としていた。クレーム45はAフレームがリフトフレームに接続し、さらにリフトフレームと共に装着フレームに接続することだけを要件としていた。

バイヤースの除雪機の特徴は非常に類似したデザインであったが、その組み立て部品は、リフトフレームがAフレームを支持し、Aフレームは直接装着フレームに接続していなかった。

ダグラスはバイヤースを特許侵害で提訴した。地方裁判所はバイヤースの主張を認め、700特許の侵害なしの略式判決を下した。地方裁判所は、クレーム1及び38はAフレームがリフトフレームを支持し、バイヤースの組み立て部品はリフトフレームがAフレームを支持していることを理由とした。

さらに地方裁判所は、クレーム45はAフレームが直接装着フレームに接続していることを要件としており、さらにバイヤースの組み立て部品はAフレームがサポートフレームを介して間接的に装着フレームに接続することを特徴とすると説明した。

陪審員は530特許及び978特許の侵害および特許の有効性を認定し、地方裁判所は現在の特許権使用料を裁定したが、バイヤースに対する差し止め命令については棄却した。ダグラスは上訴し、バイヤースは交差上訴した。

CAFCは地方裁判所のクレーム1及び38の解釈に同意したが、クレーム45に関する略式判決は破棄し、クレーム45の通常の意味は間接的な接続も含んでいると判断した。

ダグラスの組み立て部品においても、リフトフレームは取り外し可能な連結アームを介して間接的に装着フレームに接続していると述べた。さらに、クレーム45はAフレームとサポートフレームの両方が装着フレームに接続すると記述しているが、このような文言は、Aフレームとサポートフレームを組み合わせたユニットが装着フレームに接続することを要件としているにすぎないとCAFCは説明した。

CAFCはさらに、地方裁判所による530特許及び978特許に関する差し止め命令の棄却も覆した。差し止め命令の諾否を判断するために、CAFCは最高裁判所によって定められた関連する4つの要因テストを用いて、@ダグラスが回復不可能な損害を受けたか、A現行の法的救済がその損害に対して不十分であるか、B両者の困窮度のバランスが衡平法上の救済を必要としているか、及び、Cそのような救済が公共の利益に寄与するか、という点について考慮した。

CAFCは、一連の侵害行為によりマーケットシェアを拡大したバイヤースの行為によりダグラスは回復不可能な損害を受けたと判示した。特にCAFCは、両社は直接競合していないが、ダグラスの高品質で革新的な製造業者としての評価と除雪車の組立部品の独自性が、廉価な代用品の存在だけで損害を受けたと判示した。

さらにCAFCは、他の3つの要因も差し止め命令を下すに有利な判断を下した。一般大衆は、特許製品の廉価な代用品が入手可能であることよりも知的所有権の保護の方に高い関心を持っていると理由づけた。

ハルデーン・マイヤー判事は、特許侵害品の販売から回復不可能な損害の推定はできないと述べて反対意見を表明した。同判事は、ダグラスは、特許権使用料または同様な金銭的損害では、自己の損害の補償としては不十分であることを示す証拠、あるいは、バイヤースの侵害により自身の販売・評価・独自性が損なわれたことを示す証拠を提示していないと強調し、クレーム45に関する多数派の解釈についても否定し、クレーム45は直接接続することしかカバーしていないとの見解を示した。

ダグラス事件は特許訴訟において差し止め命令を下す判断に用いる4つの要因に関する指針を示した。差し止め命令は特許侵害認定に左右されるという正式な推定はもはや存在しないが、差し止めの分析は、特許明細書に記述された発明を実施する特許権者に対して有利に行われる。

この判決のポイント

この事件においてCAFCは、地方裁判所の特許クレームの解釈は誤りであると認定して、その判決を破棄し、さらに最高裁判決に基づく4つの要因テストに基づき、地裁の差止命令の棄却も覆した。

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