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月刊The Lawyers 2013年7月号(第165回)

3. Bowman 対 Monsanto Co. 事件

No. 11-796 (May 13, 2013)

- 特許発明の種を自家採取し、再度作付した場合に特許権の消尽を否定した事件 -

この事件は、ボウマン(Vernon Bowman)に対してモンサント(Monsanto Co.)が起こした侵害訴訟の上訴に関する。モンサントは、ラウンドアップ(Roundup)という名前で販売しているグリホサートを基にする除草剤に対して耐性をもつ種に関する特許権の侵害を主張した。

モンサントは、この除草剤に対する遺伝的抵抗性をもつ大豆種子(「ラウンドアップ・レディー」種という)をライセンス契約に基づき栽培者に販売している。

ライセンス契約は、栽培者に1シーズンに限り作付を許可するが、収穫された種を再度作付するために保持してはらなない、と定めていた。除草剤に対する耐性は、蒔かれた種から収穫された大豆の種に伝わる遺伝物質の一部であるという認識の上で、モンサントは栽培者が自家採取したラウンドアップ・レディー種を栽培することを防ぎ、各シーズンにおけるこの種子の販売を独占する立場を維持しようとしていた。

ボウマンは、人や動物の食糧用農産物の大豆種子を穀物倉庫から購入した。しかしボウマンはその種を蒔き、畑にラウンドアップ除草剤を撒き、ラウンドアップ耐性を持つ新たな大豆を生産した。

ボウマンはその作物から種を採取し、採取した種を再度作付し、そしてモンサントに支払うことなくラウンドアップ耐性を持つ大豆を育てた。モンサントがその行為に気づき、ボウマンに対して侵害訴訟を提起するまで、ボウマンはこのプロセスを数回繰り返した。

訴訟においてボウマンは、彼の行為は特許権消尽理論により保護されていると主張し、以前に認可された販売により得られた大豆の使用に関してモンサントには権利がないと主張した。地方裁判所はボウマンの意見を認めず、ボウマンの特許権侵害および約8万5000ドルの賠償金を認定した。CAFCがこの判決を支持したため、特許権消尽の争点を審理するために最高裁判所がこの件を受け継いだ。

最高裁判所は、ボウマンの行為は特許権消尽理論によって保護されないと認定した。この理論によると、ある特許製品については、許可された最初の販売によってその製品に関する全ての特許権が消滅する。しかし、最高裁判所は、消尽理論がモンサントの特許権によって保護された新しい製品を生産する権利を付与するものではないと説明した。

特許権消尽理論は、特許製品の許諾販売後にその製品の使用を特許権者が支配しようとすることを防ぐものであるから、最高裁判所は、この件に適用することを拒否した。最高裁判所は、ボウマンが消尽対象の種を購入したことを認めたが、その種を蒔き、そして大豆植物を育てたボウマンの行為は単なる種の使用ではないと認定した。むしろボウマンは、新しい製品を実際に生産しており、それは消尽理論によって保護される行為ではないと認定した。

最高裁判所は、逆の結果の場合に生じる問題を利用してこの判断を説明した。最高裁判所は、単純なコピーが消尽理論により保護されるとしたら、特許の価値は、最初の製品の販売後に大幅に低下すると説明した。そのため、最高裁判所は、このような結果は特許法が成立した際にアメリカ連邦議会が求めていたイノベーションに関する動機を不適切に打ち砕くことに相当すると結論づけた。

ボウマン事件では、販売された具体的な製品にのみ特許権消尽理論の適用が限定されること、および、特許された製品のコピーには適用されないことが確認された。この判決は、特許権によって保護される製品を他人が許可なく生産することを禁じる権利を特許権者に与えるものとして、特許システムの保護を考慮した判決と考えられる。ただし、最高裁判所は、この事件の具体的な状況に限定されるよう慎重に判決しており、自己再生可能な製品に関する一般のルールを提供するものではない。

この判決のポイント

この事件において、最高裁判所は、農家が特許発明である種を特許権者の許可なく自家採取して再度作付した場合には、特許権消尽理論は適用されず、農家は保護されないと判示した。

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