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月刊The Lawyers 2013年7月号(第165回)

1. Motiva, LLC 対 International Trade Commission 事件

No. 2012-1252 (May 13, 2013)

- ITCへの提起に必要な国内産業要件を論じた判決 -

モティバ(Motiva, LLC)は、2010年9月に任天堂および任天堂アメリカ(合わせて以下、任天堂)に対し、任天堂のWiiが米国特許第7,292,151号(151特許)および第7,492,268号(268特許)の特許権を侵害しており、任天堂によるWiiの米国向け輸出(国内へ輸入)販売は1930年関税法第337条違反であると主張し、ITCに提訴した。

151特許および268特許は、人間の動作を測定するシステムに関するもので、エクササイズや体のリハビリ目的で、対話型の感覚フィードバックに応じてトランスポンダーの位置をユーザーが動かすことを可能にしている。

ITCの調査の間、任天堂はモティバが訴状提出時点で国内産業要件を満たしていなかったとする略式決定の申立てを提出した。2011年2月、行政法判事(ALJ)は、151特許および268特許との関係で任天堂の活動は、地方裁判所での係争中の裁判だけであったので任天堂の申立てを認める決定を下した。

ALJは、この活動は337条に基づく国内産業要件を満たさないと認定し、モティバは151特許および268特許のライセンスの申し出も、ライセンスの供与もしたことがないと判断した。

略式決定の申立てを審理して、ITCはALJによる略式決定を破棄し、151特許および268特許発明による国内産業の発展の可能性に関するモティバの活動を示す追加の事実認定を行うよう差し戻した。

ITCは、モティバの訴訟への尽力が、特許発明の採用と発展を目的とする十分なライセンス供与への努力であるか否かについて、重要事実の真正な争点がある、と判断した。さらにITCはALJに対し、Wiiとモティバのライセンス供与の努力との関連性を考慮し、モティバの技術の適用範囲を決定し、モティバの訴訟が特許発明の商業化に関連しているか否かについて考慮するよう指示した。

差戻し審においてALJは証拠開示ヒアリングを行い、モティバは国内産業要件を満たす証拠を提示しなかったと再び決定した。ALJは、モティバが2003年から2007年にかけて特許発明の商業化のための投資を行ったが、最終的に製品を作る前に、2007年1月までにその活動を中止していたことを発見した。

ALJは、これらの活動は2010年の訴状提出日よりかなり前に行われていたため、国内産業要件の成立の証拠とはならないと結論付け、訴訟は特許の営利利用とは関係ないため、地方裁判所における手続きに関する訴訟費用は国内産業要件の争点に関連しないと認定した。

ALJは、Wiiがモティバによる特許発明の市場開拓の試みに何ら影響を与えるものではなかったと結論付け、これに関し、モティバの潜在的な製品は異なる市場を意図していたことから、Wiiがその製品と競合することはなかったであろうと判断したのである。

ALJは、Wiiが消費者向けビデオゲームシステムであるのに対し、モティバの製品はエクササイズおよび理学療法向けに設計されていたと説明し、Wiiの存在と特許発明との唯一の関係は、モティバが任天堂から賠償金を引き出すことに関心があったという点であると説明した。

その根拠としてALJは、発明者同士の電子メールにおいて彼らが訴訟で得られる利益について話し合っていたことや、モティバが地方裁判所での訴訟において直ちに差し止めによる救済を受けることよりも、任天堂Wiiの発売から3年以上経過してからITCへ訴状を提出することを選んだことを挙げた。ITCはALJの決定を採択し、モティバはCAFCへ控訴した。

控訴審においてCAFCは、モティバの任天堂に対する訴訟は(モティバの)国内産業が存在したこと、あるいは設立される途中であったことを十分に示していないというITCの認定は、実質的証拠によって裏付けされていると判断した。

モティバの任天堂に対する訴訟における投資は、もしそれが相当の金額であり、それがモティバの特許発明を実施した製品の採用を動機付けるようなライセンス計画につながるようなものであるならば、国内産業要件を満たすであろうとCAFCは認めた。

しかしながら、Wiiには、モティバの特許発明の商品化もしくは採用を促進させるような取り組みに対する何の影響力もなかったことから、CAFCは、モティバの訴訟はそのような計画を発展させる目的で提起されたものではなかったと結論付けた。CAFCは、モティバの訴訟が自社の特許発明の採用を推し進めるものではなく、金銭的利益を目的としたものであったことを証拠は示していると説明した。

この事件は、特許権者のライセンス活動がITCの調査における国内産業要件を満たすか否かの指針を示した。特許権侵害訴訟が特許発明の採用を促進させるためのより協調的努力のうちの一つでない場合には、特許権侵害訴訟のみに依存すると国内産業の立証ができない可能性がある。この判決は、ITCを通して損害補償を求めようとする特許不実施主体にとって制約を与えるものとなるであろう。

この判決のポイント

CAFCは、ITCの求める国内産業要件を満たしていないので、関税法第337条の違反なし判断したITCの決定を支持した。国内産業要件は、単に特許侵害訴訟を提起だけでは不十分であり、特許発明の商品化もしくはその技術の採用を促進させるような努力が必要である。この判決は、パテントトロールがITCを使って金銭を求める手法に、一つの制約を与えると思われる。

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