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月刊The Lawyers 2013年6月号(第164回)

3. Power Integrations, Inc. 対 Fairchild Semiconduc-tor International, Inc. 事件

Nos. 2011-1218, -1238 (March 26, 2013)

- 米国内の直接侵害と世界的販売の損害回復を論じた判決 -

この判決は米国領域外における特許侵害の損害賠償の争点について言及したものである。

CAFCは、特許権者が「米国内における1つ以上の直接侵害行為を立証した場合に」、侵害者による世界的な販売が、米国内での侵害から一義的に予測可能なものであったとしても、その世界的販売による損害を回復することはできないとの判決を下した。

パワー・インテグレーションズ(Power Integrations)は、電子機器の電源に関する4つの米国特許の侵害を理由にフェアチャイルド(Fairchild Semiconductor International, Inc.)を提訴した。

地方裁判所はこの侵害訴訟を2つの陪審裁判に振り分けた。第一の裁判は故意侵害を含む侵害及び賠償額の争点に関するものであり、第二の裁判はパワー・インテグレーションズの特許の有効性に関するものであった。

第一の裁判において陪審員は、フェアチャイルドが全ての特許クレームを故意に侵害したと認定し、約3400万ドルの賠償額を裁定した。有効性の裁判では、陪審員は全てのクレームは有効であると認定した。

フェアチャイルドは陪審員による裁定額は世界全体の売上高に基づいており、フェアチャイルドによる特許発明の米国外での使用を計算に含めたことは不適切であると主張して、賠償額縮減を申し立てた。

地方裁判所はフェアチャイルドの申立てを認め、陪審員による賠償額の裁定を82%減額した。地方裁判所は、残りの18%はフェアチャイルドに責任がある米国内での販売によるものであると説明した。

控訴審において、パワー・インテグレーションズは、フェアチャイルドによる米国内での侵害行為によりパワー・インテグレーションズの外国市場での販売が減ることは予測可能であったとして、陪審員による世界的賠償額の裁定は法的に適切であると主張した。

パワー・インテグレーションズは、特許権者が国内での侵害行為に基づく行為を立証したならば、侵害行為により被ったあらゆる損害に対する完全な補償を受ける権利がある、という制定法を提示した。さらに、完全な補償は地理的な制限を受けない、と主張した。

パワー・インテグレーションズはさらに、関連市場において侵害行為をする競合者は一般的に補償が可能であり、フェアチャイルドの外国での販売は「関連市場」の一部と見なされるべきであると主張した。

CAFCはこの主張を却下し、米国特許法は外国での侵害行為を禁止するような米国領域外への効力はないと説明した。さらに、米国特許法は「侵害」を十分に補償する賠償額を認めているが、特許発明の外国での利用といった、侵害を構成しない行為についての補償は認めていないとした。

CAFCは、米国内での侵害との関連性にかかわらず、外国で完結した販売の賠償額の裁定を裏付ける根拠をパワー・インテグレーションズは何も挙げていない、したがってパワー・インテグレーションズには米国領域外で発生した侵害行為による損害を補償する賠償を受ける権利はない、と判断した。

地方裁判所は、陪審員はパワー・インテグレーションズの専門家証人であるトロクセル博士(Dr. Troxel)が提示した賠償額の基準を採用し、米国内と合わせて3300万ドルの賠償額の裁定に至った、と判決した。

CAFCは、トロクセル博士は、米国内でのフェアチャイルドによる販売申込みに基づく賠償額を算出したのではないと、反対尋問において証言していたことを見出した。

これらの事実を示してCAFCは、世界全体の売上高に基づく陪審員の賠償額の原裁定を支持する十分な法的根拠があるとしたパワー・インテグレーションズの主張を拒絶した。CAFCは、陪審員の原裁定額が法律に違反していることを地方裁判所は正しく判断した、と判示したのである。

賠償額減縮に関してCAFCは、地方裁判所が採用した国内売上高18%は、トロクセル博士の証言に基づいていたと述べた。トロクセル博士は2つの文書を18%の売上高の裏付けとしていた。その1つは、2004年及び2005年の第三四半期のサムソンの携帯電話の世界的出荷数を示したものであり、もう1つはサムソンの携帯電話の米国内における2005年の第三四半期の総売上高を示していた。

CAFCは、この証拠はサムソンの携帯電話の売上高とフェアチャイルドの侵害品の電源回路の売上高との間の直接的関係を示していないと判断し、さらにトロクセル博士のデータは、米国内で販売された、サムソンの携帯電話の18%がフェアチャイルドの電源回路を組み込んだ充電器を含んでいたことの裏付けとはならないと理由を述べた。

CAFCは、地方裁判所による賠償額減縮額は実質的証拠による裏付けがなく、地方裁判所がトロクセル博士の推測の18%に依拠したことは誤りであると結論付けた。

こうしてCAFCは、訴えられた米国内での販売行為の範囲内に相応すべき賠償額の新たな裁判へ事件を差し戻した。

この判決のポイント

この判決は、米国特許法が一般的に米国領域外への効力を持たないことに基づいている。特許権者が米国内での直接侵害行為を立証した場合に、侵害者による世界的販売が米国内での侵害から予測可能なものであったとしても、侵害者の世界的販売は損害賠償の対象にはならないと判示した。

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