1. トップページ
  2. 米国連邦裁判所(CAFC)判決
  3. 2013年
  4. 1. Aristrocrat Technologies Australia Pty. Ltd. 対 International Game Technology 事件

月刊The Lawyers 2013年6月号(第164回)

1. Aristrocrat Technologies Australia Pty. Ltd. 対 International Game Technology 事件

No. 2012-1426 (March 13, 2013)

- 直接侵害はないが、誘導侵害としての間接侵害を論じた判決 -

この判決は、共同侵害/分割侵害の争点について言及している。CAFCは、クレームの全てのステップを単独で実行する者がいないため、被告は直接侵害の責任を負うことはないと認定した。そして控訴審の間に下された他の事件の判決結果を受けて、間接侵害の争点については事件を差し戻した。

アリストクラット(Aristocrat Technologies Australia Pty. Ltd.)は、International Game Technology及びIGT(以下、合わせて「IGT」)がアリストクラットの2つの特許を直接及び間接的に侵害していると主張して、カリフォルニア州北部地区地方裁判所に提訴した。

その特許は一般にスロットマシン等のゲーム用マシンに関する特許であり、メインゲームに加えて現れるボーナスゲームを介して、段階的な賞を与える方法をクレームしていた。

クレーム要素は主に、「前記特定のゲームマシンにおいて、第一のメインゲームを開始する」等、ゲームマシンにより実行されるステップに関する。しかし、あるクレーム要素は、「複数のゲームマシンのネットワークの中の特定のゲームマシンにおいて、賭けをする」とあり、地方裁判所はこれを賭け事と解釈した。つまりゲームマシンではないプレイヤーが実行する行為として解釈したのである。

地方裁判所は、IGTの非侵害との略式判決を下し、クレームの侵害には、ゲームマシンを提供するカジノ及びプレイヤーという二人の当事者が必要であることを説明し、クレームの全てのステップを実行する単独の当事者が存在しないため、直接侵害は法律問題として否定した。

アリストクラットは、地方裁判所のクレーム解釈及び略式判決に対して上訴し、「賭けをすること」は単に「賭けを実行すること」を意味し、よって他のステップを実行した同じ当事者により実行可能であると主張した。

控訴審において、CAFCは地方裁判所のクレームの解釈を支持し、さらにその解釈に関する圧倒的な支持を示した。これを基に、CAFCは、このクレームの解釈に基づくと、方法クレームの全てのステップを実行する単独の当事者が存在しないため、直接侵害なしとした地方裁判所の略式判決を支持した。

CAFCは、「IGTは、プレイヤーに賭けをさせ、ユーザ・インターフェースの起動をさせる」ことによって、「プレイヤーの行動は、IGTの行為の自然な、普通の、そして合理的な結果である」というアリストクラットの主張を明確に却下した。

一方、アリストクラット事件の控訴審中に、CAFCは、誘導侵害を再定義させたアカマイ・テクノロジーズ(Akamai Tech-nologies, Inc.)対ライムライト・ネットワークス(Limelight Networks, Inc.)事件の大法廷判決を下した。アカマイ事件を考慮し、CAFCは、間接侵害に関する地方裁判所の略式判決を取り消し、事件を差し戻したのである。

アカマイ事件に基づき、CAFCは、間接侵害の成立に直接侵害の立証は必要ないと認定し、方法特許のステップを複数の他人が実行するように意図的に誘導することは、単独の直接侵害者による特許侵害を誘導した場合と全く同じ影響を特許権者に対して与えると述べた。

よって、CAFCは、どちらの場合にしても、誘導侵害の訴えは可能であると説明した。従ってCAFCは、アリストクラットに誘導侵害を主張する機会が認められると結論付けた。

この判決は、特許侵害訴訟におけるアカマイ事件の影響を示している。直接侵害は、単独の当事者が全てのクレーム要素を実行する必要があるが、複数人による部分的な方法特許のステップの実行が、まとめるとステップ全体を実行するように誘導している場合には間接侵害の責任を負う可能性がある。

アリストクラット事件は、単独の直接侵害者が存在しない場合でも、侵害被疑者は、誘導侵害の訴えに対して抗弁の必要性があることを示唆している。

この判決のポイント

この事件でCAFCは、クレームの全てのステップを実行する単独の当事者が存在しないため、直接侵害は法律問題としては成立しないというクレーム解釈を支持した。しかし、CAFCは、方法特許のステップを複数の他人が実行するように意図的に誘導することは、単独の直接侵害者による特許侵害を誘導した場合と全く同じ影響を特許権者に対して与えると述べ、誘導侵害を肯定した上で、間接侵害に関する地方裁判所の判決の一部を取り消し、事件を差し戻した。

  1. トップページ
  2. 米国連邦裁判所(CAFC)判決
  3. 2013年
  4. 1. Aristrocrat Technologies Australia Pty. Ltd. 対 International Game Technology 事件

ページ上部へ