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月刊The Lawyers 2013年5月号(第163回)

3. Brilliant Instruments, Inc. 対 GuideTech, LLC 事件

No. 2012-1018 (February 20, 2013))

- 機能・方法・結果テストから均等論を具体的に判断した判決 -

CAFCは、ブリリアント(Brilliant Instruments, Inc.)はガイドテック(GuideTech, LLC)の三つの関連特許の非侵害を認めたカリフォルニア北地区地方裁判所の略式判決を破棄した。

CAFCは、ブリリアントの製品の図表の証拠及びガイドテックの専門家証言に基づき、ブリリアントの製品が特許クレームの1つを文言上侵害しているか否か、及び、ブリリアントの製品が均等論に基づきガイドテックの他の二つの特許を侵害しているか否かに関する、重要事実の真正な争点が生じたと結論付けた。

係争特許である米国特許第6226231号(231特許)、第6091671号(671特許)、及び第6181649号(649特許)は、高速マイクロプロセッサにおけるデジタル信号のタイミングエラーを測定する回路に関するものである。

このような回路はタイムインターバル・アナライザーと呼ばれ、デジタル回路のクロック信号及び出力信号を分析してタイミングエラーを検知する。

これらの特許の明細書は共通しており、タイムインターバル測定回路の異なる特徴をクレームする。231特許は、「信号チャンネル」及び「複数の測定回路」を備えた回路をクレームする。671及び649特許は、測定回路の内部電気回路をクレームする。

231特許に関しては、CAFCは、侵害被疑品であるブリリアントのインターバル・アナライザー、BI200及びBI220に、信号チャンネルに複数の測定回路が定義されているか否かについて述べた。

地方裁判所は、「前記信号チャンネル内に定義された」との限定を、「信号チャンネルに含まれる」と解釈した。地方裁判所は、ガイドテックはBI200及びBI220の2つの測定回路が同じチャンネルに含まれることを立証する十分な証拠を示していないと認定した。

控訴審においてガイドテックは、専門家であるウエスト博士のレポートは、BI200及びBI220が1チャンネル|2エッジモードで動作中の場合は、1つのチャンネルに含まれる2つの回路を使用することを示していたと主張した。

ブリリアントは、各信号チャンネルは1つの測定回路だけを含み、1チャンネル|2エッジモードの間は単純に第2の測定回路を借りるものであると主張し、地方裁判所の「内に定義される」という解釈は、1つの測定回路が2つ以上のチャンネルに存在することを認めないものであると主張した。

CAFCは、ガイドテックの主張を認め、ウエスト博士の専門家証言と、ブリリアントの1チャンネル|2エッジモードで動作するBI200及びBI220の図面は、唯一アクティブな信号パスが、1つの入力から2つの測定回路へ流れることを示していると認定した。

この証拠をガイドテックに関して最も有利な観点からみると、ブリリアントの製品が231の特許を文言上侵害しているか否かに関する重要事実の真正な争点が生ずる。CAFCは、地方裁判所の略式判決を覆し、事件をさらなる審理のために差し戻した。

671及び649特許に関して、CAFCは、第一の電流回路に対して「動作可能に並列に配置した」コンデンサを含む測定回路を必要とするクレーム限定を、BI200及びBI220の測定回路が侵害したか否かについて判断した。

地方裁判所は、「第一の電流回路」に対して「動作可能に並列に配置した」という文言を、分路及びコンデンサが「電流が一方の経路と他方の経路とのいずれかを流れるような、電流の代替経路を形成可能に配置される」と意味するように解釈した。

侵害被疑品のコンデンサは第一の電流回路の一部であり、第一の電流回路と並列に配置されていないことは明白であった。このため、地方裁判所は、侵害被疑品は文言上の侵害も均等論に基づく侵害もしていないとするブリリアントの主張を認める略式判決を下した。

控訴審においてCAFCは、均等論に基づく侵害認定には、クレーム発明と侵害被疑品との間の相違が非本質的でなければならない、そして、均等論に基づく侵害の主張を扱う場合の1つのアプローチは、機能・方法・結果テスト(Function-way-result test:以下、FWRテスト)であると述べた。

ガイドテックは、均等論のFWRテストの下では、侵害被疑品の動作は、第一の電流回路に対して、分路及びコンデンサを動作可能に並列に配置することに対応すると主張した。

ガイドテックの均等論に基づく侵害理論に対してブリリアントは、その理論はクレームの「第一電流」及び「コンデンサ」が個別のクレーム要素である必要性を無効にすると反論した。

CAFCはガイドテックの主張に同意し、ガイドテックの専門家証言から、第一の電流回路内に配置されたブリリアントのコンデンサが、動作可能に分路と並列に配置されたクレーム中のコンデンサと実質的に同一方法で、実質的に同機能を実行し、実質的に同一の結果を得ているか、に関する重要事実に関する真正な争点が生ずると判断した。

CAFCは、均等物がクレーム限定の文言の範囲外であるとの指摘だけでは無効化テストの要件を充足しないとして、ブリリアントの無効の主張を却下した。

正しくは、文言上の限定と代替物とが、置換可能ではなく、本質的に異なり、そして実質的に同一の結果を得るために、実質的に同一の機能を実質的に同一の方法で実行しないことを、当業者が理解しうる場合に無効となる、とCAFCは述べた。

CAFCはさらに、侵害被疑品とクレームに記載の構成が正反対または大きく異なる場合、特に明細書または審査経過が当該相違点を示している場合は、均等論に基づく侵害を立証することは難しいと警告した。従って、均等論に基づく非侵害の略式判決は、671及び649特許に関して除外された。

ダイク(Dyk)判事は一部同意したものの、一部において、均等物のFWRテストは限定要素毎に行われるべきだと主張し、反対した。同判事は、ガイドテックの専門家証言は、クレームに記載の発明と侵害被疑品との間の相違点がなぜ非本質的であるか、そしてコンデンサを第一の電流回路の外に配置することを要件とする限定に関し、FWRテストがどのように充足されるかについて言及していなかったと判断した。

従って同判事の意見では、ガイドテックは裁判の真正な争点があることを立証する具体的事実を供述する義務を果たしておらず、またブリリアントは単に侵害を裏付ける証拠がないことを指摘するだけで十分であった。

ブリリアント事件は、争点の構成がクレーム要素と反対の要素を含む場合、特許権者は均等物であることを立証するのが難しいという、一般的な見解を再度示した。さらに、均等論の理論の下で非侵害の略式判決で勝訴するには、均等物に関する事実の争点が存在する場合は、侵害被疑品がクレーム限定の範囲外であることを示すだけでは不十分であることも教示している。

この判決のポイント

この事件においてCAFCは、係争品の構成がクレーム要素と逆の要素を含む場合に、特許権者は均等物であることを立証するのが難しいという、一般的な見解を再度示した。
 但し、均等物がクレーム限定の文言の範囲外であるとの指摘だけでは均等論を排除するには不十分であって、文言上の限定と代替物とが、置換可能ではなく、本質的に異なり、そして実質的に同一の結果を得るために、実質的に同一の機能を実質的に同一の方法で実行しないことを、当業者に理解させることが必要である。

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