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月刊The Lawyers 2013年5月号(第163回)

2. Function Media, LLC. 対 Google Inc. 事件

No. 2012-1020 (February 13, 2013)

- ミーンズ・プラス・ファンクションクレームの不明瞭性を論じた判決 -

この判決は3つの関連特許に関する不明瞭性、無効、非侵害の認定に対する控訴審判決である。控訴審では、陪審員のために係争対象クレーム文言を解釈する責任を下級裁判所が放棄したか否か、及び、侵害及び無効の評決が矛盾しているか否かが争点となった。

CAFCは、不明瞭性、無効、及び非侵害の判決を支持し、クレーム解釈する権限は陪審員に委任されていないと認定し、ファンクション・メディア(Function Media)は陪審評決の矛盾を主張する権利を放棄したと判示した。

ファンクション・メディアは米国特許第6446045(045特許)、第7240025号(025特許)、及び第7249059号(059特許)の3つの関連特許の侵害を主張してグーグルを提訴した。

これらの特許は、新聞やウェッブサイト等の複数の広告媒体に異なる形式要件で掲載することを容易にするシステムに関するものである。個々の特許において、開示されたシステムは、販売者・広告媒体・買い手の三者間のやり取りを調整する「セントラル・コンピュータ」を備えていた。

地方裁判所は、045特許の唯一の独立クレームが不明瞭であるとの略式判決を下した。陪審裁判において、陪審員は025特許及び059特許の主張クレームは無効であり侵害なしと認定した。地方裁判所は、4つのクレームの有効性に関する法律問題としての判決を求めるファンクション・メディアの申立てを認めたが、非侵害の陪審評決は維持した。

不明瞭性に関して、「送達手段(means for transmitting)」というクレーム要素が争点であった。地方裁判所は、販売者の提示物を選択された広告媒体の掲載場所へ転送するというクレームの機能を実行する構成が明細書に記載されていないことを理由に、そのクレーム要素は不明瞭であると判示した。

控訴審においてCAFCは、ソフトウェアを含むミーンズ・プラス・ファンクションクレームを用いた場合には、アルゴリズムを明細書に開示しなければならないという要件を強調して、地方裁判所の判決を支持した。

CAFCは、ソフトウェアが自動的に転送を実行するという明細書の記載は、ソフトウェアがどのように転送機能を実行するかを明記していなかったことから、記載不十分であると判断した。

また、CAFCは、当業者が対応する構成を理解することが可能であるならば、より詳細な開示は不要である、というファンクション・メディアの主張を拒絶し、当業者の知識は不明瞭性の判断に関係しないし、対応するアルゴリズムの開示は特許法第112条の構成要件を満たすために必要であると基本原則を述べた。

(CAFCが支持した)いくつかの地方裁判所のクレーム解釈に加えて、ファンクション・メディアは、裁判所がO2 Micro対 Beyond Innovation事件, 521 F.3d 1351 (Fed. Cir. 2008)の判例に背いて陪審員に対しクレーム解釈の争点を不当に提示したと主張した。

O2マイクロ(O2 Micro)事件において、CAFCは、事件を陪審員に提示する前に、争点となる文言を解釈しなければならないと判示し、ファンクション・メディア事件の陪審員は、地方裁判所のクレーム解釈を用いるように明瞭に指示されていたとして、本件をO2マイクロ事件とは区別した。

CAFCは、O2マイクロ事件は異なるクレーム範囲についての主張が実際に陪審員に提示された状況に関するものであったと述べ、ファンクション・メディアの主張を否認し、地方裁判所はいかなる争点のクレーム文言の解釈も拒絶していないと判断した。

ファンクション・メディアが実行できないような非常に高度な立証責任を負うという争点に関して、グーグルが陪審員に対し不適切な主張をしたか否かが争点となった。

最後にファンクション・メディアは、特許非侵害及び特許無効の陪審評決が矛盾していると主張した。

CAFCは第5巡回裁判所法を適用し、ファンクション・メディアは陪審評決後直ちに反対しなかったことにより、その主張を放棄したと結論付け、有効性と新規性の評決は一般的で特別な評決ではないことから、ファンクション・メディアは、陪審員が評決した時点で評決の矛盾を指摘する必要があったと判示した。

これは厳しい基準であると認めながらもCAFCは、陪審員が評決に至る際に侵害及び特許無効となる異なるクレーム解釈に依拠したという主張をする権利をファンクション・メディアは放棄したと判示した。

この判決は、「手段(means)」という文言をクレームに使用することは、機能の背後にある構成を十分に開示していない場合には不明瞭性の認定を受ける可能性があることを明らかにした。

もし特許権者がミーンズ・プラス・ファンクションの文言の使用を避けていたならば、不明瞭性の主張に対して特許を守るチャンスは著しく大きかったと思われる。

判決はさらに、法律問題としての判決の申し立て、もしくは新たな裁判の申し立てを、陪審裁判の期間の適切なタイミングにタイムリーに行うことにより権利を維持することの重要性を強調した。

この判決のポイント

この事件においてCAFCは、ミーンズ・プラス・ファンクションクレームに対応するアルゴリズムの記載(機能の背後にある構成)が明細書にないことを理由に不明瞭を認定した地裁判決を支持した。さらに、陪審評決の矛盾に対しては、評決の直後にタイムリーに指摘しなければ、その主張する権利を放棄したとみなされることが明らかとなった。

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