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月刊The Lawyers 2013年5月号(第163回)

1. Semiconductor Energy Laboratory Co., Ltd. 対 Yujiro Nagata 事件

No. 2012-1245 (February 11, 2013)

- 発明、特許を譲渡した譲渡人に特許無効の主張を禁止する
譲渡人禁反言の適用をめぐる事件 -

この事件では、特許権者が連邦の事物管轄権の根拠として譲渡人禁反言を主張することができるか否かに関する問題を扱った。CAFCは、譲渡人禁反言の法理は譲渡人と譲受人との間で行われる特許権侵害に関する一定の主張に対する防御であり、合衆国特許法の下で独立した訴訟原因を構成するものではないと判断した。

別事件において、半導体エネルギー研究所(SEL)の特許の共同発明者であり譲渡人である永田勇二郎氏が、この特許が権利行使不可能であるとの主張を行った。その後、特許権者であるSELは、確認判決を求めて永田氏に対する訴訟を提起した。

この別事件は、SELがサムスンに対して提起した侵害訴訟に関するものであり永田氏がSELに譲渡した特許と関係するものであった。永田氏は、この別事件において、事実証人としてサムスンを支援したのである。

審理の際に、永田氏は、1991年の宣誓及び譲渡に関する彼の署名が不正なものであると証言した。この証言に基づき、サムスンは、「偽造」文書の提出に起因する不正行為により関連特許は権利行使不可能であると主張した。

現在の事件において、SELは、永田氏は自分が以前にSELに譲渡した特許の有効性及び権利行使可能性を攻撃したので、連邦法に違反していると主張した。地方裁判所は、事物管轄権の欠如を理由にSELの申し立てを棄却し、SELの州法の請求に関して付随的管轄権を行使することを拒絶した。SELは控訴した。

控訴審で、CAFCは、譲渡人禁反言の法理を根拠とするSELの最初の訴訟原因を地方裁判所が棄却したことを支持した。譲渡人禁反言は、特許または特許出願の譲渡人が侵害で訴えられた際に後になってその特許の有効性を攻撃することを禁じる、衡平法上の法理である。この法理の下では、侵害で訴えられた譲渡人は、自分が譲渡した特許が無効あるいは権利行使不可能であるという防御または反訴はできない。

SELは、連邦法は、永田氏が特許に関する権利を譲渡したので、永田氏がその特許の有効性及び権利行使可能性を攻撃することを禁じていると主張した。SELは、譲渡人禁反言の法理は公正な取引の義務を要求することによって「連邦特許法及びポリシーの基本原理」を実現するものであるので、単なる防御以上のものであると主張したのである。

CAFCはこれに同意せず、永田氏は侵害の被告の事実証人に過ぎず、彼自身が被告ではないので、この法理はここでは妥当ではないと指摘し、譲渡人禁反言は譲渡人と譲受人との間で行われる一定の特許権侵害に関する主張のみに対する防御であると強調した。更に、この法理は、第三者に対する訴訟において発明者または譲渡人が譲受人と対峙する事実証人として証言することを禁じる法的義務を課すものとして働くわけではないとした。

この判決は、発明者が譲渡した特許に関する侵害訴訟において、譲渡人である発明者が、譲渡人禁反言の法理に関係せずに事実証人として被告に協力できるということを示した。

この判決のポイント

この事件は、譲渡人禁反言に関するものである。譲渡人禁反言は、特許または特許出願の譲渡人が侵害で訴えられた際に後になってその特許の有効性を攻撃することを禁じる、衡平法上の法理である。判決は、譲渡人が被告ではない場合、譲渡人禁反言の法理は適用されず事実証人として被告に協力可能だと判示した。

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