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月刊The Lawyers 2013年4月号(第162回)

3. CLS Bank 対 Alice Corp. 事件

No. 2011-1301 (February 8, 2013)

- ソフトウェア発明の特許適格性の有無が大法廷で議論された事件(Alice 判決) -

CAFCは近頃、特許権により保護されうるソフトウェアおよびビジネス方法の範囲に関するこの事件について大法廷で口頭弁論を開いた。訴訟に係る特許発明は債券を交換するためのコンピュータ化された商取引プラットフォームを対象とし、第1当事者および第2当事者の債券を決済するために信頼できる第三者を使用して決済リスクを減らすものであった。

地方裁判所は、クレームが抽象的概念を対象としており、米国特許法101条の下で保護の対象として適さないと認定し、特許は無効であるとの略式判決を付与した。

控訴審において、CAFCは地方裁判所の判決を破棄し、主題適格性の判断に役立つ以下のルールを作成した。すなわち「クレームの記載をすべて考慮した後に、クレームが特許適格性を有しない抽象的概念を対象とすることが完全に明白ではない場合に、それを理由としてこのクレームが101条に基づく適格性が不十分であると判断されるべきではない」というものである。

CAFCは、クレームがいかなる用途であっても、根本的な真理または具現化できない概念を対象としていない限り、特許発明が101条の下で不適格であると認定するのは適切でないと判断した。このルールを適用して、CAFCは、特許クレームに含まれる発明特定事項であるコンピュータが、発明の実施に重要な役割を果たしており、抽象的概念ではなく、特許適格性のある主題の範囲に入る実用的な実施を具現化する、と結論付けた。

以前のCAFC判決であるCybersource Corp.対Retail Decisions, Inc.事件は、特許適格性について、一見より厳格な基準を与えた。例えば、この事件の裁判所は、クレームが人間の頭の中で実行できるか、紙と鉛筆を使って人間が実行できるならば、特許適格性を有しない抽象的概念であることを示した。

さらに、この事件の裁判所は、特許適格性の調査では、クレームの形式ではなく根底となる発明に着目すべきであることを示し、抽象的概念がコンピュータ可読媒体(製品)の一部としてクレームされたとしてもクレームの特許不適格性は治癒されないと判断した。

CAFCは、以下の2つの争点に関して大法廷での審理を求めるCLS銀行(CLS Bank)の請願を許可した。

(1)コンピュータで実施される発明が特許適格性を有しない「抽象的概念」であるかどうかを判定するために裁判所はどのようなテストを採用すべきか?そして、このようなテストが存在するならば、クレームにコンピュータが存在することによって、他の特許適格性を有しない概念に特許適格性が付与されるのはどういう場合か?

(2)101条の下でのコンピュータで実施される発明の特許適格性を評価する際に、発明が方法、システムまたは記憶媒体としてクレームされているかが意味を持つべきか?そして、このようなクレームは、ときとして101条の法目的に合致していると考えられるべきか?

近頃の口頭弁論の間に、ソフトウェア発明の特許適格性の上限および下限に関して当事者間で一般的な合意が形成されていた。特に、当事者は、基本計算を実行するため、または課題を解決した後の重要でない動作を実行するためにコンピュータを単に使用するだけではその発明は特許適格性を満たさす、特定の機能を実行するように特別に設計されたコンピュータであれば特許適格性を満たすことに合意したように思われた。

口頭弁論の間に、大法廷による審尋は、クレームが抽象的概念をカバーするかをどのように判定すべきか、そしてコンピュータを抽象的概念と組み合わせたものが特許適格性を満たすクレームとなるのはどんな環境の下であるかに集中した。

アリス(Alice Corp.)の提案したテストは、すべての発明特定事項を全体としてとらえたクレームが単なる抽象的概念を大幅に上回っているか、そしてコンピュータに関してはクレーム発明を実施できるようにするためにコンピュータが重要な役割を果たしているか、を判断することであった。

CLS銀行は、Cybersource事件を引用して、抽象的概念とは頭の中でまたは紙と鉛筆だけで実行されうるものと定義した。CLS銀行は、コンピュータを用いてクレームに記載された処理を単に高速化するだけで、この処理が特許可能な主題に変わることはないと主張した。とりわけ、米国は主にCLS銀行に同調する主張を提示した。米国によって提案されたテストは、クレームに記載されたコンピュータハードウェアから抽象的概念が分離可能かどうかであった。

米国によって提供されたこのテストの下での特許適格性を有する主題の例は、エネルギー効率を向上させるように、発明特定事項がコンピュータをコンピュータとして、より良く動作させるかどうかであった。

大法廷は、複数のハードウェアコンポーネントを記載している争点となった特定のシステムクレームを検討した。ムーア判事は、有体物であるコンポーネントを含むこのようなクレームが単なる抽象的概念として分類されうるというCLS銀行の主張を受け入れないように思われた。

リン判事は、いかなる特許クレームからも「何らかの本質的な概要を抽出しうるが、これは特許適格性を評価する方法ではない」と述べた。

その後、ムーア判事は、コンピュータ自体は明らかに特許適格性を有する主題であるのに、ハードウェアコンポーネントを含むアリスのクレームのような、特定のプログラムを含むコンピュータはなぜ特許適格性を有しない可能性があるのかを問うた。

CLS銀行は、アリスのクレームは真のシステムクレームではなく、システムクレームに粉飾された方法クレームであり、コンピュータ要素を追加してもその特許不適格性は治癒しないと主張した。

この判決のポイント

この事件の口頭弁論では、発明が特許適格性を有するかどうかの判定方法が議論された。ビジネス方法およびソフトウェア特許クレームを作成する場合に、それがシステムまたは製品のクレームであったとしても、ハードウェア/コンピュータ・コンポーネントの重要性がクレーム中の処理に十分に反映されるようにクレームを作成すべきである。

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