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月刊The Lawyers 2013年4月号(第162回)

1. Presidio Components, Inc. 対 Am. Technical Ceramics Corp. 事件

Nos. 2010-1355, 2011-1089 (December 19, 2012)

- 特許発明が不実施でも回復不可能な損害を被る可能性を認定した判決 -

この事件のCAFC判決は、特許権者が発明を実施していない場合の終局的差止命令を出す可能性に関する。地方裁判所は、特許権者が発明を実施していないため、回復不可能な損害はなく、損害賠償金の不足もないと認定し、最終的に、終局差止命令の要件が満たされていないと判断していた。しかし、CAFCはこの判決を破棄した。

プレシディオ(Presidio)は、ベリード・ブロードバンド(Buried Broadband)という販売名称のコンデンサの製造者であり、従来の2ピースデザインを改良した1ピースデザインのコンデンサに関する特許権の所有者である。アメリカン・テクニカル(American Technical)は、競合するコンデンサの製造者である。

2008年に、プレシディオは、アメリカン・テクニカルのコンデンサによる特許権侵害を主張し、アメリカン・テクニカルを被告として提訴した。地方裁判所は2009年に陪審審理を行い、陪審員は特許権侵害を認め、逸失利益としてプレシディオに104万8677ドルの支払いと、23万5172ドルの追加賠償金を認め、侵害品であるとともに継続して製造しているコンデンサの特許権使用料を卸売価格の12%に設定した。

裁判の後、プレシディオは終局的差止を請求した。地方裁判所は、eBay Inc.対MercExchange, L.L.C.事件における4つの要因テストに基づき、プレシディオの請求を棄却した。

具体的に、地方裁判所は、一部で、特許発明を実施するようなコンデンサを製造していないという、プレシディオの譲歩に基づき、そして回復不可能な損害については、プレシディオおよびアメリカン・テクニカルの各コンデンサは、直接競合しているとはいえないという地方裁判所の認定に基づき、回復不可能な損害は発生しないと認定した。

賠償金の裁定に関しては、地方裁判所は、「アメリカン・テクニカルと競合するプレシディオのコンデンサに関して、需要があるとの陪審員の認定は、実質的な証拠に裏付けられている」と判断した。その証拠は、プレシディオとアメリカン・テクニカルが同一の市場において同一の顧客を獲得しようと争っており、さらにアメリカン・テクニカルは、プレシディオを、コンデンサの唯一のライバルとまでいかなくても、最も重要なライバルだと思っていた。

それでも地方裁判所は、回復不可能な損害の認定においては、アメリカン・テクニカルは直接の競合相手ではないと判断した。

プレシディオは控訴し、終局的差止命令を認めないのは地方裁判所の誤りであると主張した。

CAFCは、特許発明を実施していなくても、特許権者は回復不可能の損害を被る可能性があることを指摘し、さらに、賠償金の裁定に関しては競合を認め、回復不可能の損害の認定に関しては競合を認めないことは、一貫性を欠くと指摘した。

直接競合の記録された証拠を考慮し、CAFCは、地方裁判所が、プレシディオが発明を実施しなかったことを過度に重視したと認定した。同一市場内で直接競合することは、排他権を行使しない場合であっても、回復不可能の損害が出る可能性を強く示唆する一つの事実であると認定した。

したがってCAFCは、地方裁判所が回復不可能な損害の発生を認めなかったことは誤りであり、さらに、プレシディオに対して終局的差止命令を認めなかったことは裁量権の乱用であると判断した。

プレシディオ事件の判決は、侵害認定後の終局的差止命令が適切か否かを判断するための指針となる。侵害者と同一の市場内で直接競合する特許権者は、特許発明を実施していなくても、回復不可能な損害を被る可能性があることを本判決は示している。

この判決のポイント

この判決において、CAFCは、回復不可能な損害が発生しないという地方裁判所の認定と終局的差止を認めないという判決を破棄した。特許発明を実施していなくても特許権者は、回復不可能な損害を被る可能性があることが明らかにした。

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