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月刊The Lawyers 2013年2月号(第160回)

3. Deere & Co. 対 Bush Hog, LLC 事件

Nos. 2011-1629, 1630, 1631 (December 4, 2012)

- 均等論を肯定的に適用してクレーム解釈をした判決 -

この事件で、CAFCは、事実審裁判所が一見して狭いクレーム解釈を下した場合に均等論を適用することに関する問題を扱った。

特許権侵害訴訟において、Bush Hog, LLC及びGreat Plains Manufacturing Inc.(以下、まとめてブッシュホッグ)はDeere & Co.(以下、ディーア)の有する特許権を侵害していないことの略式判決を求める申立てを提出した。本特許はカッターデッキ上での破片の蓄積を低減するように構築された回転カッターを開示する。

本特許の関連クレームでは、回転カッターは「略平坦な」デッキ下壁と、デッキ上壁とを備え、デッキ上壁はデッキ下壁に「係合し(into engagement with)、固定されるように」、下向きに傾斜することを要件としている。

下級裁判所は「係合」という用語を、2つのデッキが直接に接触することを必要とすると解釈した。ブッシュホッグの侵害被疑品は何れも仲介構造であるコネクタを介してデッキ下壁に接続されたデッキ上壁から構成されるので、下級裁判所は文言侵害に該当しないと判断し、文言非侵害の略式判決を付与した。

下級裁判所はまた、均等論の下での侵害を主張した場合に「係合」という限定を無価値にするので、ディーアはこのような主張をできないと判断した。よって、下級裁判所はブッシュホッグを支持する最終判決を行った。

控訴審において、CAFCは下級裁判所によるクレーム解釈及び略式判決の付与を再検討し、下級裁判所が「係合」という用語を、2つのデッキが直接に接触することを必要とすると解釈したことは誤りであると認定した。

この用語の解釈で、CAFCは、クレームの文言及び明細書では直接の接触は必要とされていないと認定し、係合とは、一方の物体の動きが他方の物体により制約されるような2つの物体を直接又は間接的に接続することを示唆すると言及した。

CAFCは、「係合」がデッキ上壁とデッキ下壁との間接的な接触を含むことを明細書が開示していると認定した。従って、CAFCは下級裁判所による用語の解釈を破棄し、略式判決の付与を覆し、更なる手続きのために事件を差し戻した。

さらに、均等論の適用に対するディーアによる他の主張を検討する際に、CAFCは、ディーアが均等論の下での侵害を主張できないという下級裁判所による判断を破棄した。

CAFCは「無力化(vitiation)」の概念に関する均等論の適用を明確化した。つまり、均等論の下で侵害被疑品が侵害すると認定されるためには、この原理をクレームに要件ごとに適用し、発明のすべてのクレーム要件又はその均等物が侵害被疑品に存在しなければならないとしたのである。

「無力化」は均等論の例外ではなく、2つの要件が均等であることを合理的な陪審が判断できなかったという証拠に基づく法的判断である。均等論の適切な分析の下で、裁判所は主張された均等物がクレーム要件と「実質的な差異がない」ことを示すかどうか、すなわち「代替要件がクレームに記載されている要件の機能・方法・結果に一致するかどうか」を問わなければならない。

合理的な陪審であれば、デッキ上壁とデッキ下壁との間接的な接続が直接の接触とは実質的な差異がないことを示すと認定できるので、下級裁判所は無力化の概念を適用する際に誤ったとCAFCは控訴審で判断した。

この文脈で、CAFCは「直接接触を有しないこと」を許容することにより裁判所の解釈を無価値にするだろうとして、下級裁判所は正しく認定しなかったと判断した。

CAFCは、均等論は本質的に、均等の代替技術がクレームで欠けている、即ち、文言通り対応していない要件を補うことにあるので、無力化テストは、クレーに問題となっている要件が足りないことに着目するだけでは充足され得ないと説明した。

この事件は、要件が存在するかしないかの「二択」を識別することによって検討を簡略化せずに、要件ごとに均等論の系統的な分析を行うことの重要性を強調した。この判決は、無力化の概念の適切な適用に関する指針を提供し、無力化が均等論の下での伝統的な非本質的差異テストに置き換わるものではないことを忠告した。この事件はまた、適切なクレーム解釈がクレームの文言及び明細書の示唆を実質的に重視することを理解するのに有益である。

この判決のポイント

この事件は、要件が存在するかしないかの「二択」を識別することによって検討を簡略化せずに、要件ごとに均等論の系統的な分析を行うことの重要性を強調した。この判決は、無力化の概念の適切な適用に関する指針を提供し、無力化が均等論の下での伝統的な非本質的差異テストに置き換わるものではないことを忠告し、均等論を肯定的に適用した。

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