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月刊The Lawyers 2013年2月号(第160回)

2. Brooks 対 Dunlop Manufacturing Inc. 事件

No. 2012-1164 (December 13, 2012)

- 失効特許に基づく虚偽表示を論じた判決 -

ブルックス(Brooks)事件において、CAFCは米国特許法第292条の虚偽表示に関する法律の遡及的な改正は、違憲ではないことを確認した。

虚偽表示に関する法律は、「公衆を欺く意思を持って」ある製品が特許されていると不正に主張する表示を「特許虚偽表示」として、その行為を違法とする。この条項に基づく虚偽表示の刑罰は、「そのような違反ごとに500ドル以下」の罰金である。

米国特許法改正案が署名され成立した2011年9月16日以前は、米国特許法292条b項により「何人(any person)」もこの法律の下に告訴すること、そしてこの刑罰による収益をアメリカ合衆国と分配することが認められていた。

政府に代わって何人でも告訴をすることを認める法律を「私人による代理訴訟法」といい、そのような訴訟を提起した私人による代理訴訟の原告を「訴追代行者」という。

2009年から2010年にかけてのCAFCの3つの判決は、虚偽表示の訴訟を急増させた。まず、2009年にCAFCはForest Group対Bon Tool事件において、虚偽表示の「刑罰」には「製品単位」基準が適用されなくてはならないと認定した。

次に、2010年にCAFCはPequignot対Solo Cup Co.事件において、失効した特許権が表示されている製品は、(たとえ特許権が失効する以前に、その特許権が製品を保護していたとしても)虚偽表示の法律に基づき「特許されていない製品」であると認定した。

CAFCはまた、訴追代行者は訴えられた製品が公衆を欺く意思を持って虚偽表示されたことを立証しない限り、虚偽表示の主張も立証することができないことを明確にした。そして最後に、2010年のStauffer対Brooks Brothe-rs事件では、法定刑の1/2を受け取ることになる訴追代行者は、政府の権利の部分的な譲受人としての機能を果たすことを理由に、この法律に基づく「何人(any person)」の当事者適格について米国議会は協議するだろうと判示した。

案の定、この3つの判決は、特許虚偽表示の訴追代行者がおよそ1年のあいだに1000件以上の虚偽表示に関する代理訴訟を提起する後押しとなった。

この法律の濫用に対し、米国議会は2011年9月にいくつかの点について第292条を改正した。第一に、私人による代理の条項は削除され、「アメリカ合衆国のみ」が第292条a項において500ドルの刑罰を求める告訴ができるようになった。

第二に、失効した特許権による表示は違法行為ではないと規定するよう法律を改正した。

第三に、虚偽表示の法律の「違反の結果として競争による被害を被った」者により損害賠償の訴訟が認められるよう法律が改正された。

第四に、米国議会は、法律の「制定日の時点で係属中、または制定日以降に開始される」すべての事件に改正法を適用すべきであると述べて、これらの改正を遡及可能なものとした。

ブルックスは、2010年9月に、ダンロップが既に失効し、無効であった特許権を機械に表示したことに対して、当時一般的であった虚偽表示の法律に基づき、ダンロップ(Dunlop)を提訴した。事件の係属中に、米議会は前述したように遡及効果のある法改正をした。

ダンロップは、新法の下で要件とされる競合による被害の主張をブルックスがしなかったので、ブルックスには当事者適格がないとの理由で訴訟を却下するよう申し立てた。

これに対してブルックスは、主として正当な法の手続(Due Process)を理由に、改正法の合憲性に異議を申し立てることにより反論した。

ブルックスは、仮にブルックスが勝訴したならば、ブルックスは自身の法定刑の分配において既得権があり、アメリカ合衆国憲法の正当な法の手続条項では、ブルックスの訴因を米国議会が遡及的に却下することはできないと主張した。

CAFCは、あらゆる法の原則において、一個人の利益のために改正されずに維持されなければならない既得権を個人に与えない、と認定し、この主張を却下し、遡及的な立法は、「合理的手段により推進された正当な目的」を後押しするものであるから合憲であると説明した。

そしてCAFCは、新法は、膨大な数の濫用された虚偽表示訴訟からビジネスを保護し、また訴追代行者が始めた訴訟に対して政府のコントロールが認められていなかった以前の私人による代理訴訟の規定に対する違憲申立を防ぐという正当な目的を推し進めるものである、と結論付けた。

ブルックス事件は、事実上ほとんどの虚偽表示訴訟、特に失効した特許権に基づく虚偽表示の主張を確実に終焉させるものである。しかしながら、特許権者はそれでもなお無効となった特許権、もしくは製品をカバーしない特許番号を製品に表示していれば、アメリカ合衆国、又は損害を立証することができる競合他社から訴追される可能性があることに注意しなければならない。

この判決のポイント

この事件において、CAFCは、失効した特許権の表示を違法行為から除外し、多くの私人による代理訴訟を終わらせた虚偽表示の法律に関する遡及効力を持つ米国特許法改正が、違憲ではないことを明らかにした。

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