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月刊The Lawyers 2013年1月号(第159回)

3. Matthews Intern. Corp. 対 Biosafe Engineering LLC 事件

No. 2012-1044 (September 25, 2012)

- 侵害被疑者が確認訴訟を提起する際の裁判管轄権有無の要件に関する事件 -

マシューズ(Matthews)事件において、CAFCは、下級裁判所の判決を支持した。下級裁判所の判決は、原告の訴えが、裁判所の確認判決の裁判管轄権を行使することをサポートするのに十分な緊急性及び現実性を欠いているというものであった。

米国では、確認判決を行うことを正当化するのに十分な緊急性及び現実性を伴う実質的な争いが当事者間に存在する場合に、特許権の侵害被疑者は、特許権者を相手に確認判決の訴えを提起することができる。

火葬用品の製造者であるマシューズは、廃棄物処理会社であるバイオセーフ(Biosafe)を相手に、バイオセーフの特許の幾つかについて非侵害、無効、及び権利行使不可能という確認判決を求めて訴訟を提起した。

訴訟提起に先立ち、マシューズは、人の遺体を火葬する焼却の代わりに化学薬品を使用する火葬代替製品であるバイオクリメーション(Bio Cremation)を販売していた。マシューズは、確認判決の訴えの2年前からバイオセーフが特許権及び他の知的財産権の侵害を訴えるとマシューズを脅すことを始めたと主張した。

また、その主張によれば、マシューズがバイオセーフの特許権を侵害していると顧客に通知する中傷キャンペーンをバイオセーフが立ち上げて、マシューズのビジネスに損害を与えたということである。

また、マシューズは、訴状を訂正し、最初の訴状の提出後に発行された追加の特許権が無効で権利行使不可能であると宣言するように求めた。

バイオセーフは、確認訴訟の裁判管轄権を欠いていること、及び、様々な州法の請求権を適切に弁論することが行われていないことを理由に、訴状を棄却するように求めた。

地方裁判所は訴状を棄却し、マシューズが「潜在的な侵害行為を行うのに意味のある準備を行っておらず」、州法の請求権の「悪意(bad faith)」要素を適切に弁論していないと結論付けた。

訴訟提起時に、マシューズは、3つのバイオクリメーションユニットを販売済みであったが、そのうちの1つも、顧客の設備に設置されてはいなかった。マシューズのデバイスが使用するパラメータは確定しておらず、これらのデバイスは特許において指定されたパラメータの外で動作可能であったので、地方裁判所は、バイオクリメーションシステムの侵害可能性のある特徴が「流動的で不確定」であると判示した。

控訴審で、CAFCは、閾値問題として、確認判決の裁判管轄権を確立しようとする当事者は、確認判決による救済の請求の提出時に裁判又は争いが存在するということを立証する責任を負うと述べた。

CAFCはそれゆえ、単に確認判決の訴えを提出するだけでは、裁判管轄権に関する独立した根拠とはならないと判断した。CAFCは、マシューズのバイオセーフとの争いが、確認判決の裁判管轄権を行使することをサポートする「緊急性及び現実性」の要件を欠いていると判断した。

マシューズは、マシューズの製品がバイオセーフの特許権を侵害する余地があるような態様で動作するか否かに関して、何らの事実も主張できなかった。従って、この論争は、「あまりに無関係で不確かである」と判断された。

CAFCは、仮に当事者が何らかの可能な行動を取った場合にその者が特許権侵害の責任を負うことになるか否かに関する助言的意見のようなものになってしまうので、その者が確認判決を得ることはできないと述べた。

CAFCはまた、マシューズが自社製品が動作するかもしれない具体的なパラメータに関する情報を提示できず、そのような動作が特許発明に含まれるクレーム要素を充足するか否かを判断することが不可能であったので、マシューズの訴えは「現実性」の要件を充足することができなかったと判断した。

一般的に、確認判決の訴えの主題における可変性が大きければ大きいほど、裁判所の判決が純粋に助言的なものになってしまう可能性が大きくなる。現実性の要件は、裁判所の判決が本質的に助言的なものにはならないことを保証する役割を果たす。

最後に、CAFCは、地方裁判所が元々争われていた特許権についての裁判管轄権を持っていなかったため、訴状提出後に発行された追加の特許権を考慮する権限を地方裁判所が有してはいなかったと判断し、裁判管轄権は、訴えが開始された時点での事物の状態に依存すると判示した。従って、CAFCは、マシューズの確認判決の訴えを棄却した地方裁判所の判決を支持したのである。

マシューズ事件は、特許訴訟において確認判決の裁判管轄が存在するか否かを判断する際の、別の指針を示した。侵害被疑者は、確認判決の訴えを提起する前に、十分な緊急性及び現実性を伴う争いが当事者間に存在するということを確実にしなければならない。また、特許権者は、潜在的な侵害者とのコミュニケーションが不用意に確認判決の裁判管轄権を作り出してしまわないように、注意しなければならない。

この判決のポイント

この判決では、特許の侵害被疑者が確認判決の訴えを提起する際に裁判管轄権が存在するか否かを判断するための要件を明らかした。裁判管轄権が認められるためには、侵害被疑者は、当事者間に十分な緊急性及び現実性を伴う争いがあることを明確にしなければならない。

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