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月刊The Lawyers 2013年1月号(第159回)

2. SanDisk Corp. 対 Kingston Technology Co. 事件

No. 2011-1346 (October 9, 2012)

- 取り下げで最終判断されてない争点に関しては
CAFCが審理権限を持たないことを論じた判決 -

サンディスク(SanDisk)事件において、CAFCはサンディスクのクレームの大部分について、キングストン(Kingston)に有利な非侵害との地方裁判所の認定を破棄し、サンディスクが発明を公衆に開放したとする地方裁判所の認定をも破棄した。

コンピュータメモリの製造業者であるサンディスクは、フラッシュメモリ技術に関する特許権侵害のために競合他社であるキングストンを相手に訴訟を起こした。

争点となっている特許権は、許容可能な記憶信頼性レートを保ちつつ、より長くメモリを使用することを可能にするフラッシュメモリセルの損傷を軽減する方法のクレームを含む。フラッシュ技術は、ほとんどの家庭用電子デバイスの情報記憶にとって重要な媒体である。

まず地方裁判所は、キングストンに対してサンディスクが提起した5つの特許権に関わる2つの別々の訴訟を併合した。地方裁判所がクレーム解釈の見解を示した後、サンディスクは争点となっている特許権のうちの3件に関する侵害の主張を取り下げた。それから双方の当事者は略式判決を求めた。地方裁判所は、残りの主張に関して、キングストンに有利である非侵害の略式判決を認めた。サンディスクはCAFCに控訴した。

控訴審において、サンディスクは、元々主張されていた5つの特許権の全てにわたる複数のクレームの文言についての地方裁判所の解釈、及び地方裁判所によるキングストンに有利な非侵害の認定に関して法的な誤りがあると主張した。

キングストンは、CAFCが地方裁判所によるクレーム解釈の決定を審理する権限を持っていないこと、そしてサンディスクは控訴審において自身が提案するクレーム解釈を提出する権利を放棄した、と主張した。特に、キングストンは、非侵害との判断を要求せずに、サンディスクが自発的にその主張を訴訟から取り下げたことを理由に、それらの主張は適切に控訴されていないと主張した。CAFCは、この問題についてキングストンに同意した。

始めの問題として、CAFCは、サンディスクによる主張の取り下げを、訴状の補正、又は実体的に効果を持たない自発的却下と同等に取り扱った。アメリカ合衆国における控訴裁判所の権限は、一般に最終的な判断の控訴に限定されている。

「最終的判断の規則」のもと、当事者は地方裁判所の最終的な判決を控訴することのみ可能である。しかし、サンディスクは3つの特許権に関する判断を地方裁判所にさせることなく、これら3つの特許権についての主張を自発的に取り下げた。

CAFCは、裁判所によってなされた最終的な判断に影響しない場合、当事者によるクレーム解釈の弁論は審理不可能であると認定した。従って、CAFCは、サンディスクの取下げがどのように見なされたかに関わらず、その主張はもはや争点ではなく、裁判所には審理すべき最終的な判断がないとした。

しかしCAFCは、たとえサンディスクが略式判決において、残りの主張に関する地方裁判所の解釈に異議を唱えなかったとしても、CAFCは控訴されたサンディスクの残りの主張に関する地方裁判所の解釈を審理する権限を有していると認定した。

サンディスクは、マークマンヒアリングにおいて、そのクレームについての解釈に対する見解を適切に示した。この行動は、控訴に対しての弁論を維持するには十分であった。CAFCは、サンディスクが、後の略式判決の申立の手続のなかで、地方裁判所に対しては失敗した解釈の弁論を繰り返す必要はないと判断した。

地方裁判所によるクレーム解釈を審理する上で、CAFCは、地方裁判所の解釈が特許権のうちのひとつの明細書中のある実施例を不適切に排除していたと認定した。さらにCAFCは、地方裁判所の解釈は、「the」及び「said」の記述に基づく特定のクレームの文言を単一要素に限定することにより、一般に認められたクレーム解釈の原則に違反したと言及した。従来のクレーム解釈によると、不定冠詞「a」及び「an」は、別に特定されていない限り、「ひとつ以上」の要素を包含する。CAFCは、先のクレームの文言を引用するための「the」及び「said」の使用は、一般的にクレームの文言を単数に限定するものではないと述べた。最後に、地方裁判所が限定を従属クレームから独立クレームに帰属させようとしたことを理由に、CAFCは地方裁判所の手法はクレーム区別の法理に抵触すると判断した。

サンディスクはまた、均等な発明を公衆に開放したわけではなかったので、均等論に基づきキングストンの製品は侵害品でないと判断した地方裁判所の判断は誤っていると主張した。

サンディスクが発明を公衆に開放したと認定したことについて地方裁判所が誤っていたと認める中で、CAFCは、公衆に開放されたとみなされるより前に、出願人はクレーム限定の代替物としてクレームされていない発明を特定しなければならなかったことを明らかにした。この点で、均等論に関する主張は裁判所の基準を満たしていなかった。

従って、CAFCは、サンディスクの特許権のうちのひとつについて文言侵害はなかったとしたひとつの認定を除き、地方裁判所の全ての認定を無効とし、事件を差し戻した。

この判決は、後に続く訴訟において潜在的な落とし穴を避けるために、適切に特許出願の手続を進めることの重要性を明らかにした。特許実務者は、うかつに発明を公衆に開放することを避けるために、特許出願のなかで全ての重要な発明を完全にクレームすべきことを認識する必要がある。

また、この判決は、地方裁判所によって示されたマークマンヒアリングの見解は控訴審において審理を終結させる効果があることを明らかにし、さらに、CAFCが地方裁判所のクレーム解釈を覆した判例を提供している。

この判決のポイント

この事件においてCAFCは、取り下げられたために地方裁判所によって最終的な判断がされていない争点に関して、CAFCが審理権限を持たないことを明らかにした。また、CAFCは、クレーム区別の法理に一致しない他のクレームに関する地方裁判所のクレーム解釈を破棄した。

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