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月刊The Lawyers 2012年9月号(第155回)

3. CLS Bank Int’l 対 Alice Corp. Pty. Ltd. 事件

No. 2011-1301 (July 9, 2012)

CLS銀行(CLS Bank)事件において、CAFCの合議体はコンピュータによって実行される主題に関連した特許適格性の適切な範囲について新たな意見を述べた。いわく、特許法は、特許適格性のある主題の範囲を定義している。最高裁判所は「自然の法則、物理的現象及び抽象的概念」は特許の対象でなく、これらの例外は特許法の中で黙示されていると認定している、というものである。

最近の最高裁及びCAFCの判決は、方法が特定の機械によって実行されるか、若しくは変換させることが可能であるか(機械または変換テスト)、特許の付与が技術革新の分野全体を専占するか、または方法がコンピュータ特定であるか、といった要因を考慮し、概念が「抽象的」であるか否かを判断するための指針を提供しようと試みている。これらの取り組みにも関わらず、抽象的概念の例外は裁判所にとって適用が難しいことが分かった。

アリス(Alice Corporation)は、第三者が他の二者間で債務を処理する際に、「決済リスク」をなくすことを目的とした債券を交換するためのコンピュータ化された取引プラットフォームを保護する一連の特許権を所有している。

アリスの特許クレームは、方法、システム及び製品クレームを包含する。2007年5月に、CLS銀行は、アリスの特許権は無効で、行使不可能であり、非侵害であるとの宣言的判決を求めた。アリスは、CLS銀行が自身の特許権の特定のクレームを侵害していると主張し反訴した。続いて、当事者それぞれは略式判決の申立を起こした。

コロンビア州地方裁判所はCLS銀行側の略式判決の申立を認め、特許適格性を有する主題をクレームしていないことを理由に米国特許法第101条に基づきアリスの特許権は無効であると認定した。

控訴審において、アリスは方法クレームが特定の機械または装置に関連付けられており、そしてコンピュータを介する特定の実行可能で技術的な実施に限定されていることを理由に、それらは特許適格性があると主張した。

換言すると、システム及び製品クレームは機械上での具体的な実施に関するものであり、抽象的概念ではない。CLS銀行は、全てのクレームが、当事者間で債券を交換するという特許できない概念に関するものであると反論した。

CAFCは地方裁判所による無効との略式判決を破棄し、下級裁判所は、アリスのクレームを誤って特徴付けたことにより「抽象的概念」の分析において誤りを犯したと認めた。

CAFCは、アリスのクレームに対する地方裁判所の特徴付け及び解釈は、そのクレームが特許適格性に対する抽象的概念の例外に該当するかどうかを評価しようとしたことにおいて不適切であったとしたのである。

コンピュータ化されたプラットフォームを介するほかの不適格な抽象的概念をただ述べただけでは、クレームを特許適格性があるとすることにはならないとしたが、CAFCはクレームされた方法の実行において機械が重要な役割を果たしており、クレームの範囲に重要な限定を課している場合には、クレームには特許適格性があると認めた。

CAFCは、最も合理的なただひとつの理解が、クレームは根本的な真理または具現化できない概念でしかなく、その真理または概念に特定の適用をもたらすクレーム中の限定がない限り、米国特許法第101条に基づき抽象的概念であるためにクレームが適格でないと認定することは不適当であると言及することでその考えを展開した。

この理由づけをアリスの特許クレームに適用することで、CAFCはコンピュータの限定は取引プラットフォームの実行において「重要な役割」を果たしたと結論付けた。アリスの事業構想は事実上その特定のコンピュータ化されたオペレーションを介してしか適用できなかったために、クレームが特許不適格であることは「完全に明らか」ではなかった。従ってCAFCは地方裁判所による無効との略式判決の認定を破棄した。

反対意見の中で、プロスト判事は合議体の多数派が Bilski 対 Kappos事件 130 S. Ct. 3218 (2010)及び Mayo Collaborative Services 対 Prometheus Laboratories, Inc.事件132 S. Ct. 1289 (2012)の米国最高裁による最近の判例を無視していると主張した。

プロスト判事はこれらの判決は特許性のある主題の適格性を狭めていて、多数派の意見は最高裁によって規定された基準に基づいて、裁判所が特許適格性の判断を事実上回避することができるような新しい枠組みを創造したと考えている。

CLS銀行事件は、コンピュータによって実行される方法及びシステムに関する特許権に対して重要な意味合いを持つ。クレームが特許適格性を有する主題に関するか否かを判断するにあたり、異なった合議体によって導かれた最近のCAFC判決における異なった結果を考えると、この部分の法律の記載はいささか定まっていない。

この事件は、特許適格性の広い範囲を主張する人々にある先例を与えたように思われる。この事件の分析によれば、クレームが抽象的概念でしかないものを保護することの「明らかな証拠」がない限り、クレームは特許適格性を有する主題に関するとされるようである。

この判決のポイント

この事件において、CAFCはコンピュータによって実行される主題に関連した特許適格性の適切な範囲について新たな見解を出した。CAFCの合議体によると、方法を特定の適用に関連づける限定がなく、単なる抽象的概念に関することが「完全に明らか」であるときにしか、クレームを「抽象的概念」と認定することができない。

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