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月刊The Lawyers 2012年8月号(第154回)

2. Merial Ltd. 対 Cipla Ltd. 事件

Nos. 2011-1471, -1472 (May 31, 2012)

シプラ(Cipla Ltd.)とベルセラ(Velcera)は、先の差止命令に対するシプラの法廷侮辱罪、及びシプラと協調して差止命令を違反したことによるベルセラの法廷侮辱罪を認めたジョージア州中部地区地方裁判所の判決に対し控訴した。控訴審においてCAFCは両方の判決を支持した。

シプラは、インドのムンバイに本社を置くインドの製薬会社である。2007年11月、メリアル(Merial Ltd.)は、飼い犬、猫をノミ・ダニの寄生から守る薬品の配合をカバーする2つの特許権を、シプラ及び数多くのインターネット上の小売業者が侵害したと主張して、ジョージア州中部地区地方裁判所に提訴した。

メリアルは、シプラ自身がジョージア州との接点を認めていること、及びシプラのジョージア州内での行為に基づき、シプラは対人管轄権の対象となると主張した。メリアルはシプラに対し宅配及び書留によってムンバイに訴状を送達した。

訴状によると、シプラと他のオンライン小売業者は、フィプロニル製剤、またはフィプロニル・メソプレン製剤の特許権侵害となる、動物用殺虫剤の模倣品を全米で販売していた。

シプラ及び他の被告等は訴状に対し回答せず、裁判にも出席しなかった。地方裁判所は、メリアルの特許権は有効であり、シプラはメリアルの個々の特許権を侵害したと判示して、欠席裁判においてメリアルの申立てを認める判決を下した。

裁判所は、シプラに対し特許権の直接・間接侵害を妨げる差止命令を下した。シプラは非公式の手紙を裁判所に提出した。その手紙には、裁判に出席するつもりはないこと、特許権侵害を否定、および米国内に所在しないこと、そして裁判の却下を申し立てる内容が記載されていた。地方裁判所はシプラの要求を却下し、終局判決を下した。

ベルセラは、ペットアーマー・プラス(PetArmor Plus)という、ノミ・ダニを駆除する製品の開発・製造・販売する契約をシプラと結んでいた。ベルセラとの合意に基づき、子会社を通して、オムニファーム(Omnipharm Ltd.)という英国企業に発注し、オムニファームはさらにシプラに注文を出す。

シプラはインド国内で製品を製造し、アラブ首長国連邦の会社で、オムニファームの役員が所有する会社であるQEDetal LZEへそれを販売する。QEDetal LZEは、製品をインドからドバイへ輸送し、権利をQEDetal Ltd(以下、QEDetal)へ移す。QEDetalはオムニファームの役員が完全に所有するアイルランドの会社で、オムニファームとシプラの提携により設立された。

形式上の所有権はQEDetalからベルセラの完全子会社であるFidoPharmへ移ることにより再びドバイへ移転され、FidoPharmが製品を米国への販売用に輸出する。これらの手配は最終的に、フィプロニル及びメソプレンを含む害虫駆除成分の類似品の米国内での販売につながっている。

メリアルはシプラの行為が裁判所による先の差止命令に違反していると主張し、法廷侮辱罪の申立てをした。シプラは、裁判所が欠席裁判で判決を下したときに、シプラに対する対人管轄権を欠いていたと主張し、差止命令は無効として破棄するよう申し立てた。

地方裁判所は、連邦民事訴訟規則第4条(k)(2)にしたがい、シプラは管轄権の対象にあり、PetArmor Plusは先に差し止められたシプラの製品と実質的違いがなく、シプラとベルセラは裁判所の命令違反を知りながら協調して行ったと判示した。

地方裁判所はシプラによるフィプロニル及メソプレンを含む動物用薬品の製造・使用・販売・もしくは米国内への輸入を排除し、また、ベルセラが、シプラの援助または関与により同様の行為により製品を開発・製造・包装することを禁止する終局的差止命令を発行した。

控訴審において、シプラは、イリノイ州北部地区での裁判権に自ら服することに同意していることと、メリアルがインド国内での工程のサービスの有効な手続を守らなかったことを理由に、規則第4条(k)(2)は、ジョージア州中部地区におけるシプラに対する管轄権を与えることはできないと主張した。

CAFCは、規則第4条(k)(2)は「被告の法廷地との接点が、州のロング・アーム法に基づく管轄権の裏付けとならない場合であっても、(1)原告の主張が連邦法に基づいている、(2)被告がどの州の裁判所の対人管轄権にも該当しない、(3)管轄権の行使が適正手続の要件を満たしている限りにおいて、地方裁判所に対人管轄権を行使することを認めることにより、連邦法のロング・アーム法に近づけるものである」と説明した。

CAFCは、さらに「被告がどの州の裁判所の対人管轄権の対象にもならない」ことを立証することを原告に要求することが困難であるならば、「もし被告が裁判地で裁判を受けることができないことを主張し、他の裁判が可能な場所を示すことを拒絶したならば、連邦裁判所は規則第4条(k)(2)を適用することができる」、という責任の転換ルールを認めた。CAFCは、事後に駆け引きが生じることを懸念し、裁判を受けたかった裁判地をシプラが事後に表明することを認めなかった。

控訴審において、シプラは地方裁判所による法廷侮辱罪の判決に関する領域的問題を取り上げ、シプラがインド国内の事業活動に限定していたことを強調した。純粋に国外での行為は米国特許法第271条(a)項に基づき直接侵害を構成しないことを認めつつも、CAFCは、米国特許法は米国の領土を超えて適用されないという、より一般的な問題を拒絶した。

直接侵害は米国内での侵害行為を要件とするが、CAFCは「外国企業が、必要な知識と意思を持って、米国内で生じる直接侵害の行為を積極的に誘導する手段を国外で用いたならば、そのような行為は271条(b)に基づく救済から完全に除外される」と述べた。

したがって、CAFCは、シプラが直接侵害を誘導したとする地方裁判所の判決を支持し、地裁の判決には領土外適用の欠陥もない、と判断した。

メリアル事件は、連邦民事訴訟規則に基づく対人管轄権が、米国内での販売用に製品を米国へ輸出する外国企業に対しても及ぶことを明らかにした。この裁判は、米国外での行為が、必要とする知識と意思の要件を満たすならば、侵害の誘導と判断される可能性を示している。

この判決のポイント

この事件においてCAFCは、外国企業に対し法廷侮辱罪を適用した地裁判決を支持し、連邦民事訴訟規則に基づいて連邦地方裁判所が外国企業に対して対人管轄権を認める範囲を明らかにした。外国企業が必要な知識と意思を持って、米国内で生じる直接侵害の行為を積極的に誘導する行為を米国外で行えば、その行為は特許の間接侵害と判断される可能性がある。

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