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月刊The Lawyers 2012年8月号(第154回)

1. Mintz 対 Dietz & Watson, Inc. 事件

No. 2010-1341 (May 30, 2012)

企業グループNeil Mintz, Marcus Mintz及びJif-Pak Manufacturing, Inc.(まとめてミンツ=Mintz)は、カリフォルニア州南部地方裁判所がPCM (Package Concepts & Materials, Inc.)に有利な無効及び非侵害の略式判決を認めたこととPCMの専門家証言を排除する申立が拒否されたので控訴した。CAFCは、地方裁判所による非侵害の認定を支持したが、無効の認定を破棄し、更なる審理のために事件を地方裁判所へ差し戻した。

ミンツは、加工食肉製造業者に対して食肉用包装ネットを製造、販売している。ネイル・ミンツ及びマーカス・ミンツは、米国特許第5,413,148号(148特許)の共同発明者である。148特許は、従来の食肉の包装に必要な複雑な充填作業を省き、食肉が網状の糸の間で膨らむことを可能にする肉製品を包装するための包装技術に関する。PCMはミンツのジフパック(Jif-Pak)製品の販売業者であった。

ミンツとの間の売買契約が終了した後、PCMはある食肉用の包装製品の販売を開始し、ミンツはそれが148特許の特定のクレームを侵害していると主張した。

2005年に、PCMはミンツに対して確認判決訴訟を起こした。同じく2005年に、ミンツはPCMに対し、PCMが販売していた特定の食肉用包装ネット製品が148特許の特定のクレームを侵害していると主張し、特許権侵害訴訟を起こした。二つの訴訟は統合された。

地方裁判所は、当業者であれば食肉の包装技術に精通しており、当業者にとってロッキング係合を試みることは自明であると認定した。故に、地方裁判所は自明性に関する略式判決を認めた。地方裁判所はまた、PCMはミンツの特許権を侵害していなかったと認定し、非侵害の略式判決を認めた。

上訴審において、CAFCは、地方裁判所が、当業者は編み物技術については精通しているが、食肉の包装技術には精通していないであろうと認定したことにより、その自明性の分析において誤りを犯したと判断した。CAFCは、食肉の包装技術を完全に除外することは、有効性の審理を誤った方向に導くと述べた。この誤りはまた、地方裁判所が頼りにする「常識的アプローチ」にも影響を与えた。

CAFCは、裏付けもなく「常識」という文言を述べるだけでは自明性を示すことにはならず、編み物技術における当業者の常識は、食肉包装技術における当業者が持つ常識とはおそらく違うであろうと述べた。CAFCはまた、地方裁判所が適切な観点から自明性の分析について考慮しなかったと認定した。

特に、CAFCは、地方裁判所の分析は、発明が解決しようとする課題が、発明時に当業者において自明であったかどうかを問うよりむしろ、この課題を定義するために発明を使用した、と言及した。

CAFCは自明性の分析の際に後知恵による先入観を回避する必要性について論じ、先入観を回避するために裁判所が行うべき3つの方法を明らかにした。3つとは、「常識」が明確にされていること、発明が解決しようとする課題の定義に、その特許(発明)自体を使用しないこと、そして、非自明性の客観的な指標を分析である。

この判決のポイント

この事件においてCAFCは、自明性の分析に関する後知恵による先入観を回避するために、裁判所には、「常識」が明確にされていること、発明が解決しようとする課題の定義に、その特許自体を使用しないこと、及び非自明性の客観的な指標を分析する、3点が必要なことを明らかにした。

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