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月刊The Lawyers 2012年7月号(第153回)

3. Cyclobenzaprine Hydrochloride Extended Release Capsule 特許訴訟事件

Nos. 2011-1399, -1409 (April 16, 2012)

サイクロベンザプリン(Cyclobenzaprine)事件において、CAFCは自明性に関する地方裁判所の認定を破棄し、生物学的同等性の認定だけでは、クレームを無効とするには不十分であると判断し、地方裁判所がクレームされた製剤形態に対して周知の薬物動態学(PK)/薬物力学(PD)の関係が欠如していたことを考慮すべきであったと認定した。

さらにCAFCは、非自明性に関する客観的な立証論証責任を不適切に原告へ転換させたことは、地方裁判所がCAFCの判例法に違反したと結論付けた。

医薬品メーカーであり特許権者であるセファロン(Cephalon)は、筋弛緩剤を製造し、アムリックスと名付けて販売している。アムリックスは、患者に塩酸シクロベンザプリンの放出調節製剤を提供する。

争点となっている特許権のクレームは、筋弛緩剤の製剤形態と筋弛緩剤を用いた筋痙攣の治療方法に関する。被告であるマイランファーマシューティカルズ(Mylan Pharmaceuticals Inc.)、マイラン(Mylan Inc.)およびパーファーマシューティカル(Par Pharmaceutical, Inc.)は、それぞれアムリックスのジェネリック製品の新薬簡略承認申請(ANDA)を提出した。それぞれのANDAの中で、被告は争点となっている特許権は無効であるとし、ジェネリック医薬品はそれらの特許権を侵害しないと主張した。裁判において、被告はクレームされた徐放性PKプロファイルが速放性PKプロファイルと生物学的に同等であることを理由に、争点となっている特許は無効であると主張し、地方裁判所はこれに同意した。

地方裁判所がその分析を誤ったと認定するにあたり、CAFCは、生物学的同等性は無効性の審理の終わりでなく、また自明性の認定に対する唯一の基準にもならないことを明らかにした。

まずCAFCは、生物学的同等性とは徐放性または速放性製剤のいずれかの投与後に、同じ割合で同じ量の原薬に人体をさらすことを意味すると説明し、地方裁判所の分析は治療有効性を要件とするクレームの限定を見落としていたと認定した。

この問題について、CAFCは、仮にPK/PDのような関係が存在していなければ、当業者は生物学的に同等であるものを含む特定のPKプロファイルが治療に有効な製剤形態を作り出すか否かについて予測することができなかっただろうと思われるため、発明当時PK/PDの関係が存在していたかどうかを地方裁判所は考慮すべきであったと述べた。

CAFCは、被告は発明当時にPK/PDの関係が周知ではなかったことを認めていたと認定した。

そしてCAFCは、地方裁判所がPK/PDの関係の欠如について考慮しなかったことに起因するそれぞれの判決を検討した。

まず、CAFCはPK/PDの関係が周知でなかったことを理由に、当業者は治療に有効な徐放性製剤を開発するという明確な選択肢に直面しなかっただろうと判断し、地方裁判所に同意しなかった。したがって、CAFCは当業者が治療に有効な製剤形態への到達に成功することへ合理的な期待を持っていなかったと認定した。

CAFCはさらに、争点となっている特許権の共同発明者でもある原告側の専門家のすべての証言が、特許発明を自明とするために被告および地方裁判所の双方が不適切に後知恵の分析を採用したことを示していると結論付けた。

最後にCAFCは地方裁判所が二つの追加の先行技術文献に頼ったことは不適切であったと認定した。実際、CAFCはこれらの追加の文献は治療に有効なPKプロファイルに関する情報を明らかにするものではないと認定した。

地方裁判所が犯したこれらの誤りの結果として、CAFCは争点となっている特許発明は自明ではなく、特許は無効ではないと認定した。

CAFCはさらに、地方裁判所は非自明性に対する客観的考慮を検討する前に、自明性に関する判断を不適切に下したと認定した。CAFCによれば、そのようなやり方は最高裁判所およびCAFCの判例に矛盾する責任の転嫁となる。実際に、CAFCは、事実認定者がその判断の前にあらゆる自明性に関する証拠を検討しなければならないと述べた。

CAFCは、地方裁判所が非自明性に関する客観的考慮を適切に考慮しなかったと説明した。特にCAFCは、徐放性製品が長く求められていたにも関わらず、研究者たちはそのような製品を製造することができなかったことを示していると認定した。

CAFCは、証拠全体の一部として検討された場合、そのような客観的考慮は非自明性の認定を裏付けると言及した。

この判決は、製薬特許訴訟に関して、自明性の適切な判断を下すために地方裁判所に求められる詳細な分析の複雑さとレベルを明らかにした点で重要である。この判決は、裁判所が特許発明が自明であったか否かの結論に達する前に、すべての客観的証拠が検討され、理解されなくてはならないというガイダンスを提供している。最後に、この判決は特定の状況において、非自明性に関する二次的な考慮の重要性を再認識させるものである。

この判決のポイント

この事件において、CAFCは、争点となっている特許発明が先行技術から自明であることを理由に特許を無効と認定した地方裁判所の判決を破棄した。そして、CAFCは自明性に関する判断をするためには、非自明性におけるあらゆる客観的証拠、つまり、二次的な考慮事項についても検討されなければならないことを明らかにした。

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