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月刊The Lawyers 2012年6月号(第152回)

2. Caraco Pharm. Labs, Ltd. 対
Novo Nordisk A/S 事件

No. 10-844 (April 17, 2012)

ノボ(Novo Nordisk A/S)は、糖尿病の治療薬であるレパグリニドの商品名であるプランディン(Prandin)を製造している。プランディンの販売認可を得るために、ノボはレパグリニドの新薬承認申請(NDA)を米国食品医薬品局(FDA)に提出した。

このNDAに関連して、FDAは糖尿病を治療するための、プランディンの3つの使用形態を承認した。それらは、レパグリニド単独、レパグリニドとメトホルミンとの組み合わせ、及びレパグリニドとチアゾリジンジオン系薬剤(TZDs)との組み合わせである。

ノボは独自のレパグリニド化合物に関する特許権を所有していたが、2009年に失効した。2004年にノボは、2018年まで有効なレパグリニドの使用法に関する特許権(358特許)も取得した。358特許はレパグリニドをメトホルミンと組み合わせて投与する糖尿病の治療方法に関する。

2009年以降、ノボはFDAが承認したレパグリニドの3つの使用形態のうちのひとつ(メトホルミンとの組み合わせ)に対する特許権保護しか有しておらず、他の2つの使用形態(レパグリニドとTZDsとの組み合わせ及びレパグリニド単独)についての特許権保護はなかった。

2005年にカラコ(Caraco Pharm. Labs, Ltd.)は、レパグリニドのジェネリック製品を販売するための新薬簡略承認申請(ANDA)を提出した。358特許のために、カラコはTZDsとの組み合わせ及び単独での使用におけるレパグリニドの販売のみを求めていた。従って、カラコはメトホルミンとの組み合わせによるレパグリニドの使用は適用除外しようとした。

ジェネリック医薬品の販売申請を判断する際、FDAは申請された新薬が先発医薬品メーカーの所有する特許権を侵害するかどうかを審理する。その評価のために、FDAは先発医薬品メーカーに対し特許権の範囲の説明を提出するように求め、これはユースコードとして知られている。

これらのユースコードはFDAが管理するオレンジブックに掲載される。FDAは先発品の申請者によってオレンジブックに提供された情報が正確かどうかの判断は行わない。むしろ、FDAはその情報が正確であることを前提として、その上でジェネリック医薬品を認可するかどうか決定する。

2005年に、プランディンの申請に関してオレンジブックに記載されたユースコードは、358特許は「血中グルコースを低下させるためのメトホルミンとの組み合わせによるレパグリニドの使用」を包含すると記載されていた。従ってFDAはカラコに対し、メトホルミンとの組み合わせでの使用におけるレパグリニドの販売を求めなければ(そしてカラコのANDAが他の適用される要件を満たすことを前提として)、他の2つの使用形態についてのジェネリック医薬品の販売を認めると通知した。

しかし、カラコの申請が最終的に承認される前に、ノボは358特許に関するユースコードを変更した。新しいユースコードは、「成人の2型糖尿病に対する血糖コントロールを改善するための方法」を記載していた。

そのコードは、358特許が糖尿病の治療のためのレパグリニドの使用について認可された3つの方法全てを保護することを示唆していたので、カラコの申請した使用形態は新しいユースコードの記載要件に抵触し、認可に適さなくなった。

カラコは、「特許権が医薬品の認可された使用法(中略)をクレームしていないことを理由に[2つの条文]の下、(中略)提出された特許情報を訂正または削除するよう[先発医薬品メーカー]に命じる決定を求めて反訴を主張することがジェネリック医薬品メーカーに認められている法律に基づいて、ノボに358特許に関するユースコードを訂正させようとした。

当事者及び下級裁判所は「認可された方法」との文言の意味について合意に至らなかった。仮にその文言が、ノボが主張するように「あらゆる認可された方法」を意味するなら、掲載された特許権がその医薬品の認可された使用法のいずれもクレームしていない場合にのみ、反訴は有効となる。

一方で、仮にその文言が、カラコが主張するように「特定の認可された方法」を意味するなら、特許権がANDAの申請人がその医薬品を販売しようとする使用法をクレームしていない限り、法律は反訴を認めている。

最高裁判所は、内容によりどちらにも解釈できるので、法律がいささか不明瞭であることを認めた。しかし内容を検討して、最高裁判所は「認可された方法」とは「特定の認可された方法」を意味するというカラコの見解に同意した。

裁判所は、より広義な法律は、特定の特許されていない使用におけるジェネリック医薬品の販売を認可する権限をFDAに与える、と言及した。それは、特許されていない使用法に限定したラベルを付した製品を迅速に市場に登場させるために、ジェネリック医薬品メーカーに特許されていない使用法を特定するための仕組みを提供する。

従って、最高裁判所は法律の枠組みは、ある特許された使用法が他の特許されていない使用法におけるジェネリック医薬品の販売を排除しないことを意図するとした。

この枠組みの中で、最高裁判所は争点となっている反訴の規定の目的は、ジェネリック医薬品メーカーが求める別の使用法に関する特許権者の権利の主張に異議を唱えることを認めるものであるとした。

最高裁判所は、法律に基づき、反訴の有効性をFDAの認可の有効性と対抗するように解釈した。換言すれば、企業はある使用法が特許されていないことを立証するために反訴を提起することができる。なぜならばそのステップを満たすことはFDAがジェネリック医薬品の申請を認可することを可能にするからである。従って、最高裁判所は、法律に基づきカラコがノボに対して有効な申立を有していると認定した。

カラコ事件は、製薬業界における先発医薬品メーカーとジェネリック医薬品メーカー間との関係に関する最高裁判所の最新の見解を示している点で重要である。先発医薬品メーカーは、全ての認可された使用法の一部のみをクレームする方法特許を用いてジェネリック医薬品メーカーを阻止しなければならないより困難な時期を迎える可能性があるので、その意見はいくぶんかジェネリック医薬品メーカーに有利と考えられる。実際問題として、ジェネリック製品が使用法の一部についてのみ認可された場合でも、患者は全ての使用法についてジェネリック製品を使用すると思う。

従って、カラコ事件の後、限定的な使用法に関する特許権を持つ先発医薬品メーカーは、特許されていない使用法のみの薬のラベルを貼った潜在的なジェネリック医薬品メーカーと対峙することで、市場の独占性及び、高騰している医薬品の価格を維持することができなくなるだろう。

この判決のポイント

この事件において、最高裁判所は、医薬品の使用法の特許権の権利範囲を不正確に主張する特許権者に対して、ジェネリック医薬品メーカーが法律に基づき反訴可能であることを認定した。この認定により、先発医薬品メーカーが医薬品の認可された使用法の一部のみに有効な特許権しか持っていない場合、ジェネリック医薬品メーカーの市場参入を阻止することが難しくなると思われる。

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