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月刊The Lawyers 2012年5月号(第151回)

3. Zoltek Corp. 対 United States 事件

No. 2009-5135 (March 14, 2012)

CAFCは米国連邦請求裁判所(United States Court of Federal Claims)の控訴審に関する専属裁判管轄権を持っている。連邦請求裁判所とは、米国連邦政府に対する補償請求に関する管轄権を持つ裁判所である。

連邦請求裁判所が扱う事件の種類の一つに、米国連邦政府に対する特許侵害訴訟がある。この訴訟を司る制定法は米国裁判所法、28USC§1494(a)であり、以下のように規定している。

「米国特許に記載され、それにより保護される発明が、特許権者の許諾無しに、またはその発明を使用・製造する法的権利を有することなく、米国政府により、もしくは米国政府の為に使用または製造された場合、その特許の使用及び製造に対する合理的かつ十分な補償請求を求めて、連邦請求裁判所において米国政府に対する訴訟を提起することにより、特許権者の救済が行われる。」

大法廷で、特許製品が米国政府によって、もしくは米国政府の為に米国内で使用、もしくは米国内に輸入された場合に、米国政府、またはその請負人による特許侵害に対する§1498(a)に基づく法的責任を米国政府は負うものとする、とCAFCは認定した。

ゾルテック(Zoltek Corp.)は、炭素繊維から作られる紙状シート製品の製造加工に関する方法クレームを包含する米国再発行特許第RE34,162号を所有する。

米国政府は、ロッキードマーチン(Lockheed Martin)と、炭素繊維製品を使用したF-22戦闘機の設計・組立に関する契約を交わした。F-22に使用される炭素繊維の製造工程は、日本国内でのファイバーの炭素化から始まる。繊維はその後米国内に輸入され、シート状に加工される。

1996年、ゾルテックは米国政府を§1498(a)に基づき提訴した。2006年の判決において、CAFCの合議体は、§1498(a)に基づく法的責任の認定のためには§271(a)の要件が満たされなければならないと結論付け、個々のステップが米国内で行われていない限り、特許の工程が米国内で行われたことにはならないとして、この基準には該当しないと認定した。

炭素繊維のクレームされた工程の1ステップが米国外で行われたのであるから、§271(a)の侵害とはならず、§1498は適用されないとCAFC合議体は判示した。

差戻し審においてゾルテックは、ロッキードマーチンを被告に加え、ロッキードマーチンに対する特許侵害の主張をジョージア州北部地方裁判所に移送することを申請した。

CAFCは、先の合議体の判決は、§1498(a)が政府との契約者に対して提供する保護を限定するものであり、ロッキードマーチンが米国政府との契約履行の下で行った行為が特許侵害により法的責任があると認定される可能性を生じると認定した。

大法廷は、§1498(a)の条文の目的及びその単純な意味を審理して、米国政府は特許発明の非合法な使用または製造に対する国家主権による免責特権を放棄しているだけではなく、政府との契約者による非合法な使用または製造の法的責任も負っていると述べた。

CAFCは、軍需製品の調達は、政府との契約者に対する特許訴訟によって中断され、結果として§1498の適用を回避される可能性を示した。CAFCは、合議体判決は、制定法の文言の単純な意味に着目しておらず、過去の判例からの拘束力のない法律に頼ったものであったと判断した。

CAFCはさらに、§1498は特許法とは独立して機能し、その法律独自の訴因を生ずるものであると述べ、特許法§271(a)の侵害認定により§1498による法的責任を含意することは、米国特許の工程に由来する外国製品を特許権者が米国内に輸入することを救済する、不正輸入貿易の法律に矛盾する、と結論付けた。

つまり、CAFCは先の合議体判決を取り消し、§271(a)の特許侵害は§1498に基づく法的責任を含意しないと認定したのである。

事件の事実に立ち返ると、争点は、ロッキードマーチンの行為が§1498に基づく法的責任を生ずるか否か、またその法律によりロッキードマーチンの免責が認められ、米国政府からの補償を受ける権利がゾルテックに与えられるか否か、という点にあった。

§1498に基づく法的責任は、もし、発明が民間企業によって使用されたならば、特許の直接侵害と裁判所が判断するように、政府が「法的権利なく」特許を使用したことを、申立人が立証することを要件とする。この基準を適用して、CAFCは、もし民間企業が最終的な製品を作るためのゾルテックの特許の工程を使用していたならば、ゾルテックは特許法35USC§154(a)(1)及び§271(g)に基づき償還されていた、と認定した。

従って、CAFCは、政府は§1498に基づく同様の法的責任を負うと判示した。

CAFCはまた、§1498(c)についても触れ、「§1498(a)の規定は外国からの申し立てには適用しない」と述べた。CAFCは、政府による侵害行為、すなわち、(特許の)工程から作られた製品の使用または輸入は、米国内で生じたものであり、したがって、ゾルテックの救済の申し立ては外国では生じない。こうして、CAFCは、制定法の規定は適用されない、と認定した。

反対意見として、ダイク判事は、大法廷判決は裁判所の管轄権を超えていると述べた。ダイク判事はさらに、多数派による§1498の解釈は治外法権の推定を無視するものであり、§1498の要件である米国内における特許の工程の「使用または製造」は無かった、と述べた。

ゾルテック事件の判決は、特許の工程が少なくとも部分的に米国外で実施された場合の、§1498に基づく米国政府の法的責任の範囲が再定義された点で重要である。また、この判決は、政府の契約者が政府と共に、及び政府のために行った侵害行為に対する免責の範囲は、§1498に基づく政府の法的責任の範囲と同様に広範であることを示した。

この判決のポイント

この事件においてCAFC大法廷は、CAFC合議体による先の判決を取り消し、企業が、連邦政府との契約に従い、製造方法の特許の工程によって作られた製品を米国内に輸入した場合に、米国政府には特許の無断使用を理由に28USC§1498(a)に基づく法的責任があると判決した。

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