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月刊The Lawyers 2012年5月号(第151回)

2. MySpace, Inc., et al 対 GraphOn Corp. 事件

No. 2011-1149 (March 2, 2012)

原告であるマイスペース(MySpace, Inc.)及びクレイグスリスト(Craigslist, Inc.)は、グラフオン(GraphOn Corporation)の特許である米国特許第6,324,538号、米国特許第6,850,940号、米国特許第7,028,034号、及び米国特許第7,269,591号(以下、まとめて「グラフオンの特許」と呼ぶ)が無効であると主張して、グラフオンに対する確認訴訟を提起した。

グラフオンは反対に特許侵害の訴えを行うと共に、フォックス(Fox Audience Network)に対するthird-party claims(第三者請求)を行った。カリフォルニア州ノーザン地区の地方裁判所は、侵害被疑者による特許無効の略式判決の申立てを容認した。控訴審で、CAFCはこれを支持した。

グラフオンの特許は、コンピュータネットワークを介してデータベースのレコードを作成し、修正し、格納することに関するものである。控訴審の争点は、「データベース」という用語を地方裁判所が正しく解釈したか否か、そして、先行技術に鑑み、グラフオンの特許が§102及び§103に基づき無効であるか否かであった。

地方裁判所は、「データベース」が階層型データベースシステム及びリレーショナルデータベースシステムの両方を含むものと解釈した。他方、グラフオンは、グラフオンの特許において使用されている「データベース」はリレーショナルデータベースシステムだけを包含すると解釈すべきであると主張した。

CAFCは、クレーム解釈の分析に際して、まず、クレーム解釈に対する2つのアプローチが存在するという最近の提案に言及した。これら2つのアプローチは、それぞれが異なる結論を導く可能性を持っている。

CAFCが説明した第1のアプローチは、特許明細書に開示される発明に注目し、説明されている発明に最も良く適合するようにクレームの意味を解釈するというものであった。

CAFCが説明した第2のアプローチは、主としてクレームの文言に注目し、解釈に関する法的基準を適用して文言に意味を与えるものであった。CAFCは、これらのアプローチは相補的なものであり、競合するものではないと主張した。

CAFCはまた、クレームされている発明を厳密に判断するためにはクレームの厳密な文言に注目しなければならないが、一方で、明細書及び好適な実施形態はクレームの文言を理解する上での一助となるとも述べた。

本件に関して、CAFCは、明細書が様々な種類の先行技術のデータベースシステムについて論じていると判断した。それゆえ、クレーム中の一般的な用語である「データベース」は、発明時の「様々な種類の」データベースを含み得るものであり、階層型データベース及びリレーショナルデータベースを含み得るものである。

CAFCの結論は、Mother of All Bulletin Boardsと呼ばれる階層型データベースシステムを開示する先行技術のシステムが、グラフオンの特許の全クレームを開示するかまたは自明なものにした。

少数意見として、マイヤー判事は、グラフオンの特許は抽象的であるから§101に基づき無効とされるべきであると考え、先行技術の観点での無効の問題には踏み込まなかった。マイヤー判事は、裁判所が他の条文に基づいてクレームが無効であるか否かを検討する以前に、特許適格性が閾値の問題として扱われなければならないと述べた。彼の考えでは、このアプローチは、低品質の特許や「実にばかげた」クレームを持つ特許を排除するものである。

当事者等は控訴審で特許適格性の問題を主張しなかったが、マイヤー判事が少数意見を述べたので、多数意見も§101に言及した。

多数意見は、特許適格性の分析を行う目的で「抽象的アイデア」の実効的な定義を表明することに関して、裁判所がこれまで苦しんできたと述べた。

裁判所は、「抽象的アイデア」に関する曖昧な性質は、今やかつてよりもずっと大きな問題であると考え、この問題を立証するためにCAFCの最近の判決を引用した。

この問題を回避するために、多数意見は、特許適格性に注目する前に一般的には§102、§103、及び§112などに基づく他の無効理由を扱うべきであると判断した。

裁判所は、有効性の問題を解決するために法律で規定された特許無効の抗弁の条件に注目することで、不明確な「抽象性」テストの適用を避けるのが実務上好ましいと述べた。

多数意見は、このアプローチの方が効率的で、司法資源を節約し、特許権者及び競争相手に対して確実性を与えると述べた。しかしながら、多数意見は、場合によっては特許適格性に関する法的問題に取り組む方が効率的かもしれないが、そのような場合は普通でも一般的でもないだろうとも述べた。

マイスペース判決の重要性は、多数意見及び少数意見の双方が、特許侵害訴訟において特許無効の問題に取り組むにあたっての競合する分析の枠組みを提示した点にある。

多数意見は、§101に基づく現在の特許適格性の分析は適用困難で非効率的であり、他の特許無効の抗弁に基づいて特許無効の問題を解決できるのであれば、特許適格性の分析は避けるべきであると述べた。

少数意見は、品質が疑わしい特許を扱うための追加的なメカニズムを提供するために、適切な特許無効の枠組みは、特許適格性の分析から開始すべきであると主張した。

この判決のポイント

この事件では、特許無効の抗弁に関して、§101に基づく特許適格性の分析と§102、§103、及び§112などに基づく他の無効理由とのいずれを先に扱うべきかに関して、前者を優先すべきであるとする少数意見と、後者を優先すべきである多数意見の、相反する判断が示された。

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