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月刊The Lawyers 2012年5月号(第151回)

1. Fort Properties, Inc. 対
American Master Lease LLC 事件

No. 2009-1242 (February 27, 2012)

AML(American Master Lease LLC)は、不動産の投資方法の発明に関する米国特許第6,292,788号(788特許)を所有している。カリフォルニア州中部地方裁判所は、特許適格性のない主題をクレームしていることを理由に、第101条に基づき788特許を無効と認定した。AMLは控訴したが、CAFCは地方裁判所の判決を支持した。

788特許の発明は、納税義務を負うことなく不動産物件を売買するための投資手段に関するものである。CAFCは、788特許のクレームを請求項1〜31及び請求項32〜41の二つのグループに分けて分析した。

本質的に、独立請求項1は、(1)不動産を集めてポートフォリオを形成するステップと、(2)基本契約により前記不動産を抵当に入れるステップと、(3)前記ポートフォリオ中の所有権をいくつかの証書に分割することによって、その各々が前記基本契約の支配下に置かれる複数の不動産証書株を作成するステップとを含む。独立請求項32がコンピュータに「複数の不動産証書株を作成させる」要件を限定として含むことを除き、請求項32と請求項1は類似する。

裁判において、Bilski 対 Kappos事件での米国最高裁判所の判決に先立ち、地方裁判所は「機械または変換テスト」を適用し、788特許は第101条に基づき無効であると認定した。上訴審において、CAFCは現在の第101条の基準を適用し、いずれにせよ特許適格性を有する主題をクレームしていないために無効とした地方裁判所の判断を支持した。

CAFCは、米国特許法第101条を解釈した影響力の強い最高裁判所の判例を審理することにより、自身の分析を始め、コンピュータの使用を要件とするあらゆる限定を含まない788特許の請求項1〜31を審理した。

AMLは、不動産、証書及び契約に関することを理由に、請求項1〜31は現実の世界で発生し、抽象的でないと主張したが、しかしながら、CAFCは、請求項1〜10及び22〜31が不動産取引に関する「概念的ステップ」を含み、請求項11〜21は繰延納税を認める形で同様の「概念的ステップ」と判断した。

CAFCは、788特許の請求項1〜31を双方が抽象的概念である投資手段をクレームしているとして、Bilski事件のクレームと類似すると判断し、788特許の抽象的概念は、それらの概念が証書、契約及び不動産を通して現実の世界と結びつけられることによって、特許性を有する主題に変換されないと付け加えた。そのような現実の世界への結び付けは、請求項1〜31に特許性を与えるには不十分であるとしたのである。

次に、CAFCは、コンピュータに「複数の不動産証書株を作成させる」要件を限定として含む788特許の請求項32〜41を審理した。CAFCは、工程における機械の使用は、特許性を有する主題を創出するために、クレーム範囲に重要な限定を与えなくてはならないとした最近の自身の判断を繰り返した。

更にCAFCは、入り組んだ複雑なコンピュータプログラミング及び、関連するコンピュータ技術の進歩に言及することが、クレームに特許適格性を持たせるためには十分である可能性を明らかにした。

CAFCは、抽象的概念をカバーするクレームに対してコンピュータを使用する限定を付加することは、クレームに特許適格性を与えるには不十分な、ただの課題解決に直結しない些細な工程にしかならないと指摘した。

判例を考慮して、CAFCは、請求項32〜41における「複数の不動産証書株を作成させる」とのコンピュータによる限定は、クレームされた方法において重要でない役割しか果たさない、コンピュータの広く一般的な限定は重要な限定を与えない、そしてコンピュータの限定はただの重要でない課題解決に直結しない些細な工程であると認定した。従って、CAFCは788特許の請求項32〜41を無効とした地方裁判所の判決を支持したのである。

本事件は、投資手段に関する純粋なビジネス方法が特許適格性の法的要件を満たすと主張することにCAFCが慎重であることを示している。Bilski事件を解釈する別のCAFC事件として、この判決は、入り組んだ複雑なコンピュータプログラミングを要件とするクレーム、またはコンピュータ技術における進歩に関するクレームはおそらく特許適格性を有する一方で、ほかの抽象的方法クレームにおけるコンピュータの使用、補助、または操作への重要でない言及は、それ自身によりクレームに特許適格性を持たせるには不十分であることを示している。

この判決のポイント

この事件において、CAFCは、不動産所有者が課税義務を負わずに不動産を売買することができる投資手段を開示する特許を、米国特許法第101条に基づき無効とした地方裁判所の判決を支持した。CAFCは、投資手段に関する純粋なビジネス方法が特許適格性を有すると判断することに慎重であることが明らかになった。

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