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月刊The Lawyers 2012年4月号(第150回)

3. Ninestar Tech. Co. Ltd. et al. 対
Int'l Trade Comm'n 事件

No. 2009-1549 (February 8, 2012)

ナインスター(Ninestar Technology Co., Ltd.)は、関税法第337条(19USC§1337)違反による排除命令及び禁止命令に従わなかったとして、ナインスターに対する民事罰を裁定したITC(国際貿易委員会)の決定を不服として控訴した。

第337条に基づき、ITCは米国の知的所有権を侵害する製品、もしくは侵害して作られた製品を米国内から排除する権限を持つ。

337条の処分において、ITCはナインスターが中国で製造されたインクプリンターカートリッジを米国内で輸入・販売したことにより、不正な取引に従事したと認定した。

ITCは、エプソンが所有するいくつかの米国特許をカートリッジが侵害していると判断し、カートリッジの輸入及び販売を禁止する排除命令及び禁止命令を下した。

しかしながら、ナインスターとその子会社は、ITCが排除命令を下した後もインクカートリッジの輸入・販売を継続した。ITCの制定法に基づき、ITCは、事業体がITCの命令に違反しているかどうかを判断し、違反者に民事罰を科すために強制執行を行う権限を持つ。

ここで、ITCは強制執行を行い、それによりナインスターに対して民事罰を科した。ナインスターは民事罰及びその罰金額についてCAFCへ控訴した。

ナインスターは、インクカートリッジがエプソンの特許権を侵害しているとしたITCの判断、ITCによる製品の排除命令及び罰金は誤りであると主張した。

ナインスターはITCの命令に反してインクカートリッジを製造・輸入し続けたことについては否定しなかった。しかしながら、Quanta Computer Inc. 対 LG Elecs., Inc.事件の最高裁判決以降、米国内に輸入された製品が外国で製造され、まず外国で販売されていた場合には、その製品に対して米国特許権は権利行使ができないと主張した。

CAFCは、Quanta Computer事件の最高裁判決は、最初の販売の規定に関する管轄要件を除外するものではないと判断した。なぜならば、この事件とは異なり、Quanta Computer事件の判決は、米国内で製造され、最初に販売された製品に関するものであったからである。

CAFCはナインスターの誠実さの主張を信用せず、ITCの排除命令後のナインスターの販売及び行為に関する証拠は、ナインスターが法律およびITCの命令を理解していたことを示すものであると述べた。したがって、ナインスターが排除命令を理解しながら悪意を持って違反したとするITCの決定をCAFCは維持した。

ナインスターはまた、ITCが罰金を科したことは誤った法律に基づいている、という誠実な信念をナインスターは持っていたのであるから、ITCが科した法定の罰金を払うべきではないと主張した。

CAFCはナインスターによるインクカートリッジの輸入の継続・販売、及びエプソンの遺失利益に関するITCの判断を審理した。そしてCAFCは、これはITCの権限の範囲内であり、特許権侵害を防ぐ役目を果たしていたと述べて、ITCによる千百万ドルの罰金の裁定を維持した。

次にCAFCは、ナインスターの中国の親会社ではなく、米国の子会社だけに罰金が科せられるべきであるというナインスターの主張を審理した。ナインスターは、ITCには親会社に対する管轄権はなく、米国子会社は罰金を支払う十分な資金力がないと述べた。CAFCは再度記録を調べ、親会社が米国子会社を管理しており、禁止命令について知っており、禁止された製品の販売による利益を得ていたと判断した。

その結果、CAFCは、ナインスターの三社全ての事業体の連帯責任及び個別責任があるとしたITCの判断を維持した。

最後に、ナインスターはいくつかの憲法上の主張を行った。その一つは、ITCの罰金は、刑事被告人と同じ保護条項がある、憲法第三条(司法権)に基づく正規の裁判所による裁判を必要とする刑事罰の範疇の罰金であると主張した。

さらに、ナインスターには陪審裁判を受ける権利があり、ITCは陪審裁判ではないので、ITCの制定法全体が無効であると主張した。

CAFCはナインスターによるこれらの主張を拒絶し、この事件には刑事罰は関係なく、罰金額はナインスターの違反行為による金銭的価値に比例していると説明した。

CAFCはさらに、第337条の手続は「取引の不正競争の取り締まりに不可欠な」手続であり、ITCには民事罰を科す権限が正当にあると述べた。

CAFCはまた、禁止命令は、影響を受けたインクカートリッジを特定しておらず、その型番も示していなかったのであるから、文面上曖昧であり違憲であるというナインスターの主張も退け、ナインスターがITCの釈明手続を利用しておらず、意図的に命令から逃れたと述べた。

ナインスター事件は、侵害品の輸入者に対抗してITCを介して特許権者の救済が可能であることを気付かせる事件である。また、事業者がITCの命令を知りながら意図的に違反したと判断されると、特許権侵害を阻止し、ITCの命令を行使するためにITCの権限により高額な罰金を科せられることを強調している。

この判決のポイント

この事件において、CAFCは、ITCの排除命令及び禁止命令を無視して侵害品の輸入・販売を継続した企業に対し、千百万ドルの罰金を科したITCの決定を支持した。CAFCは、違反者の関税法第337条違反による排除命令及び禁止命令は、不正競争の取り締まりに不可欠な手続であり、ITCには民事罰を科す権限があることが確認された。この事件は、ITCへの提訴が特許権者の救済手段として有効であることを喚起させるものであり、ITCの命令に違反した場合の罰金が非常に高額であることを示している。

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