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月刊The Lawyers 2012年3月号(第149回)

3. Abbott Point of Care Inc. 対
Epocal, Inc. 事件

No. 2011-1024 (January 13, 2012)

当事者適格の欠如を理由に地方裁判所がアボット(Abbott Point of Care Inc.'s)の訴えを棄却したことについて、CAFCは全員一致ではなかったが、地方裁判所の決定を支持した。

CAFCは、地方裁判所の決定を精査した後に、特許侵害の主張に必要な当事者適格をアボットが有していることを立証する責任をアボットが果たしていないと判断した。

当事者である、アボット及び被告のエポカル(Epocal, Inc.)は、2つの係争対象特許の所有を主張していた。これらの特許は、血液のサンプルを試験するシステム及び方法をクレームしている。発明者であるロークス博士(Dr. Imants Lauks)は、以前はアボットの前身に勤務しており、その後、エポカルを起業して2つの係争対象特許をそこへ譲渡した。

特許の所有に関するアボットの主張は、2つの雇用契約と、ロークス博士とアボットの前身との間の1つのコンサルティング契約とに基づくものであった。

1984年1月10日に、ロークス博士は、アボットの前身であるIntegrated Ionics Inc.との雇用契約(以下、「1984年の雇用契約」)を締結した。この雇用契約は、とりわけ、全ての発明をインテグレイテッド(Integrated Ionics)に譲渡する契約を含んでいた。インテグレイテッドはその後、アイスタット(i-STAT)になった。

1992年1月に、ロークス博士は、アボットの前身であるアイスタットとの雇用契約(以下、「1992年の雇用契約」)を締結した。この雇用契約は、ロークス博士の雇用に伴う義務、補償、利益、契約終了、及び退職手当を定めていた。

1999年9月に、ロークス博士はアイスタットを退職し、アイスタットとの18ヶ月のコンサルティング契約(以下、「1999年のコンサルティング契約」)に署名した。

1999年のコンサルティング契約は、ロークス博士がアイスタットにおける全ての地位を辞任したことを宣言し、ロークス博士のコンサルティングサービスを定義し、コンサルティング関係が如何なる新製品にも及ばないことを定めていた。

1999年のコンサルティング契約には、発明の譲渡の条項は存在せず、1984年の雇用契約における守秘義務条項、不招請勧誘条項、及び競業避止義務条項が有効なままであると定めていただけだったので、以前の如何なる譲渡義務も明示的には組み込まれていなかった。

2001年6月に、ロークス博士は、後に係争対象特許となる出願を行い、その後、2003年12月にこれをエポカルに譲渡した。アボットは2004年にアイスタットを買収し、2009年8月にエポカルに対する訴状を提出した。

エポカルは、当事者適格の欠如を理由に請求棄却の申立を提出した。地方裁判所は、1999年のコンサルティング契約が1984年の雇用契約における発明の譲渡の条項を継続していないと判断して、請求棄却の申立を認めた。従って、地方裁判所は、アボットが係争対象特許を所有しておらず、侵害の訴えを提起する当事者適格を有していないと判断した。

当事者適格は裁判管轄上の問題なので、控訴審で、CAFCは地方裁判所の判断及び結論の拘束を受けずに精査した。CAFCは、ニュージャージー州法を適用して契約を解釈し、地方裁判所の判断を支持し、ロークス博士の辞任によって1984年及び1992年の雇用契約が終了し、これに基づく全ての義務も終了したと判断した。

更に、CAFCは、1999年のコンサルティング契約が、以前の雇用契約の条項の全てではなく、守秘義務条項、不招請勧誘条項、及び競業避止義務条項を継続しているだけであると判示した。

CAFCは、この事実が、両当事者が発明の譲渡の条項を含むその他の条項を継続することを望んでいなかったという明確な意図を示していると確信した。CAFCはまた、ニュージャージー州法に照らせば発明の譲渡の問題に関して契約に曖昧な部分は無いので、外部の証拠を考慮する必要は無いと判断した。

少数意見として、ブライソン(Bryson)判事は、発明の譲渡が継続しないという明確な意図を認定した多数意見に反対した。

ブライソン判事は、譲渡条項が存在しないことにより1999年のコンサルティング契約がこの問題に関して曖昧になっているので、1999年のコンサルティング契約の一部として譲渡条項も継続しているのか否かを判断するために地方裁判所は外部の証拠も考慮すべきであったと述べた。

それゆえ、ブライソン判事は、1999年のコンサルティング契約が譲渡条項を継続しているか否かに関する外部の証拠を更に調べるために事件を差し戻すべきであると主張した。

この判決のポイント

この事件から、特許侵害の訴えを提起する当事者適格(正当な特許権者)を立証する責任が原告にあることを再確認できる。特に、発明者との間で、発明の譲渡に関する明示的な契約がない場合、その発明に関して誰が正当な権利者であるかという問題を引き起こしかねない。発明の承継に関して、具体的な契約が望まれる。

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