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月刊The Lawyers 2012年2月号(第148回)

3. Link_A_Media Devices Corp. 事件

No. 2011-M990 (December 2, 2011)

In re Link_A_Media Devices Corp.事件においてCAFCは、ラムド(Link_A_Media Devices Corp.)の申し立てを認め、ラムドによる裁判地移送の申立てを却下したデラウェア州地方裁判所の決定を破棄し、デラウェア州地裁に対し、事件をカリフォルニア州北部地方裁判所へ移送する職務執行令状を発行した。

CAFCは、地方裁判所が裁判地移送の申立による利益を深く考慮しなかったことは裁量権の濫用であると認定した。

バミューダ諸島に本拠地を置くマーベル(Marvel International Ltd.)は、ラムドによる特許侵害を主張して、デラウェア州地方裁判所に提訴した。デラウェア州地裁がカリフォルニア州北部地裁への事件移送の申立てを却下した後、ラムドはCAFCに対し職務執行令状の申立てをした。

ラムドはデラウェア州に法人格を持つ企業であるが、本拠地はカリフォルニア州北部であり、全ての従業員と裁判資料もカリフォルニア州北部に所在していた。

CAFCによると、職務執行令状は、明らかな裁量権の濫用もしくは司法権の剥奪を是正する非常事態にのみ発行される。

CAFCは、ラムドには、明らかに疑う余地もなく、令状を発行してもらう権利があるとして、第三巡回区法に基づき、この事件において令状は不適切な移送指令を訂正するために適切に用いられると認定した。

地方裁判所は、2つの要因を過度に重視し、他の全ての移送理由を無視したことにより、申立てによる利益を深く考慮しなかった。移送の申立てを却下する上で、地方裁判所は、マーベルが、ラムドの本拠地がデラウェア州内にあるという事実からデラウェア州を裁判地に選択したという事実に過度に依存した。

CAFCは、地方裁判所が原告による裁判地の選択に固執し過ぎていたと説明した。第三巡回区法は、原告による裁判地の選択を重視しているが、その裁判地が原告の本拠地ではない場合にはその限りではない。

この事件において、デラウェア州はマーベルの本拠地の裁判地ではない。実のところ、マーベルはデラウェア州には何の所縁もない。マーベルはバミューダ諸島の会社であり、社員と全ての書類はバミューダ諸島に所在していた。

特許発明者は、実際にはラムドが選択した移送先の裁判地であるカリフォルニア州北部に所在していた。地方裁判所が、ラムドの法人格がデラウェア州にあるという事実に固執したことは、同様に不適切であった。

CAFCは、形式的なものとは反対の、公正となるような現実に重点を置く、不便な裁判地の原則に基づき、法人格のある州についてはほとんど考慮すべきではないと説明した。更に、判例法は、当事者の法人格のある州を、裁判地の調査のための要素として挙げておらず、ましてや争点を解決する手掛かりとはしていない。

ラムドがデラウェア州に法人格があるという事実にも関わらず、本拠地はカリフォルニア州北部にあった。そこにはオフィスと全ての証人及び関連書類が存在していた。これらの事実をラムドが提示した際、地方裁判所はそれを無視し、現代の技術的進歩の中で、それを考慮することは時代遅れで無意味であり、したがって重要ではない、と述べていた。

CAFCは、地方裁判所がこれらの考慮事項を不適切に扱ったと述べてこれを否認した。技術的進歩はこれらの要因を重視することを変えるものであるかもしれないが、それらの要因を全て無視することは不適切である、と述べた。

次にCAFCは、公共の利益の分析において、地方裁判所がラムドの法人格のある州だけを考慮したことを批判した。CAFCは、ラムドが提示した考慮されるべき他の公共の利益の要因を確認した。それらには、(i)判決の法的強制力、(ii)裁判を容易・迅速・安価に行うことを可能にする実施上の配慮、(iii)裁判の過密状態、(iv)地域論争を解決するに当たっての地元の関心、及び、(v)裁判地の公の秩序、が含まれる。

最後にCAFCは、デラウェア州地裁は特許係争の経験値が高いというマーベルの最終弁論には説得力がないと述べた。

CAFCは、マーベルは事実審裁判所が「適用可能な州法」に熟知している、ということに関して公共の利益を混同しており、この特許侵害事件において州法は適用されないと説明し、特許法は国内で統一された法律であり、カリフォルニア州北部地裁も同等に争点のクレーム(pending claims)について審理すると指摘した。

こうしてCAFCは、デラウェア州地裁に対し、ラムドの申立て却下の決定を破棄し、カリフォルニア州北部地裁へ事件を移送するよう職務執行令状を発行した。

歴史的に、デラウェア州地方裁判所では特許事件が多く扱われている。この判決は、CAFCがデラウェア州地裁から事件を移送する職務執行令状の申立てをどのように判断するかを示している点で重要である。

この判決のポイント

この事件においてCAFCは、地方裁判所が原告による裁判地の選択を過度に重視し、裁判地移送による利益を全く考慮せずに移送の申立てを却下したことは裁量権の濫用であると判断し、裁判地移送の職務執行令状を発行した。CAFCは、第三巡回区法は原告による裁判地の選択を重視しているが、その裁判地が本拠地ではない場合にはその限りではなく、公共の利益の要因を考慮すべきであることを示した。

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