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月刊The Lawyers 2012年2月号(第148回)

1. Teva Pharmaceutical Industries, Ltd. 対
AstraZeneca Pharmaceuticals LP 事件

No. 2011-1091 (December 1, 2011)

この事件では、テバ(Teva Pharmaceutical Industries, Ltd.)は、脂質異常症(高コレステロール)の治療におけるブロックバスターであるクレストール®をアストラゼネカ(AstraZeneca Pharmaceuticals LP)が販売したことに対して、スタチン薬の安定化製剤を権利範囲に含む自身の特許権を行使した。

対象のクレームは、[有効スタチン成分]と、安定化に効果のある量の少なくとも1つの「[アミド基またはアミノ基含有高分子化合物(AGCP)]とを備える脂質異常症の治療ための安定化医薬組成物であって、前記安定化医薬組成物は安定化に効果のある量の別の安定剤または他の安定剤の組合せを含まないことを特徴とする安定化医薬組成物」というものであった。

アストラゼネカは侵害を認め、テバはクレストール®が侵害するという自身の申立てを維持した。それ故、アストラゼネカのクレストール®製剤が各クレーム要件を充足するということ対して争点は存在しなかった。

テバの特許権は2000年4月10日に出願された仮特許出願に対して最先の優先権を主張し、テバが主張した本発明の着想及び実施の具現化日は1999年12月1日であった。

アストラゼネカは、この日付よりも前に、テバの特許の各要件を充足するクロスポビドンという化合物とともに有効成分ロスバスタチンを含む医薬製剤を処方していたことの証拠を提示した。アストラゼネカはまた、この製剤が全体として安定化特性を呈することを理解していたことを示した。しかし、アストラゼネカはクロスポビドンが安定剤として作用することを理解していたことを示さなかった(実際に争わなかった)。

実際に、アストラゼネカの製剤は第三リン酸カルシウムも含み、これは安定剤として動作するが、テバのクレームのAGCP要件には含まれなかった。

アストラゼネカの製剤が各クレーム要件を充足することについて両当事者が争わなかったので、別の安定剤はCAFCの分析に影響を与えなかった。唯一の争点は、テバによる発明前にクレーム要件を充足する製剤を生成していたことを理由として米国特許法102条(g)の先発明をアストラゼネカが十分に立証したかどうかという点だった。

テバは、クロスポビドンが製剤において安定化効果を有することをアストラゼネカが理解していなければ先発明の要件は満たされないので、アストラゼネカはこの立証を行っていないと主張した。アストラゼネカは、製剤が全体として安定化特性を有していることを認識していれば十分であり、テバによる発明の前にこの認識をしていたことを立証していると主張した。

CAFCはアストラゼネカに同意した。まず、CAFCは、「テバが特許の主題を最初に着想する前にアストラゼネカが自身でクロスポビドンに想到し、実施のためにこの薬を具現化したことには議論の余地がない」ことを示した。

次いで、CAFCは「テバの着想より前の時点でアストラゼネカはクロスポビドンが薬内で安定剤として作用するとは理解していなかったことは、仮にクロスポビドンがそのように作用するとしても、議論の余地がない」と指摘した。

CAFCは、控訴が事実問題についての争点を含まないので、「当裁判所は法律問題として、102条(g)(2)の先使用権を得るためにクロスポビドンが安定化効果を有することをアストラゼネカが理解していなければならなかったかどうかのみを判断すればよい」と結論付け、アストラゼネカが理解している必要はなかったと判断した。

CAFCは、(Mycogen Plant Sci. 対 Monsanto Co.事件、243 F3.d 1316, 1332 (Fed. Cir. 2001)を引用して、)「実施のための具現化を立証するためには、先発明者は(1)全クレーム要件を充足する実施形態を構築するかプロセスを実行し、(2)発明が意図された目的のために動作すると判断していなければならない」と説明した。

しかし、これは、その発明がどのようにまたはなぜ動作するかに関して全てを知っていることを必要としない。特許権者が後にクレームで使う単語を使用してその発明を理解しなければならないこともない。

さらに、CAFCは以下のことを示した。「アストラゼネカは、自身の発明として主張する化合物が安定であり、この製剤の成分が何であるかを理解していなければならなかった。アストラゼネカがこの理解を有していたことに疑問はない。しかし、アストラゼネカはどの成分が安定化のために役立つかを理解している必要はなかった。テバは事実上、アストラゼネカが、テバが後にクレームで使用したのと同じ単語でその薬を最初に着想したのではないとの理由でアストラゼネカが過失を犯したとの判断を当裁判所に求めた」。

CAFCは、さらに「発明はクレームの文言ではなくそこに記載される主題である」ことを判断した先行する事件の「判断にこの事件がそのまま当てはまる」ことを指摘した。根本的に、「アストラゼネカが特許発明を最初に発明した際に、アストラゼネカは偶然に発明したわけではなく、何が発明されたかを知っていた。従って、テバの主張は失当である」とCAFCは結論付けた。

この事件で、CAFCはインターフェアレンス手続きにおける優先日をめぐる争いに適用される基準を繰り返した。近ごろ通過した特許法改正法案により、インターフェアレンスはなくなるが、インターフェアレンスはしばらくは重要である。

この判決のポイント

この事件で、CAFCはインターフェアレンス手続きにおける優先権をめぐる争いに適用される基準を繰り返した。その基準では、(1)全クレーム要件を充足する実施形態を構築するかプロセスを実行し、(2)発明が意図された目的のために動作すると判断していなければならない、ことが規定されているが、その発明がどのようにまたはなぜ動作するかに関して全てを知っていることは必要とされないし、特許権者が後にクレームで使用するのと同じ用語を使用してその発明を理解していなければならないこともない。近ごろ通過した特許法改正法案により、インターフェアレンスはなくなるが、しばらくは重要である。

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