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月刊The Lawyers 2012年1月号(第147回)

2. Ultramercial, LLC 対 Hulu, LLC事件

No. 2010-1544 (September 15, 2011)

ウルトラマーシャル(Ultramercial, LLC)の事件で、地方裁判所が、発明が特許可能な対象物ではないことを理由とする請求棄却(dismissal for failure to state a claim)を行ったが、CAFCは、この請求棄却を覆した。

CAFCは、クレームされた方法は、特許適格を有する対象を構成する、インターネット経由の広告を伴う実用的用途(practical application)であると判断したのである。

権利行使された特許権のクレームは、著作権で保護された製品に関連する広告を消費者が視聴するという条件の下、著作権で保護された製品をインターネット経由で配信する方法に関する。

クレームされた方法が必要とするステップの中でもとりわけ、配信者は、著作権で保護された製品に対するアクセス要求を消費者から受信し、著作権で保護された製品に関連する広告を消費者に対して表示することを促進し、広告の表示の促進後に消費者が著作権で保護された製品に対してアクセスすることを可能にし、広告の表示に対する対価を広告者から受け取る。

ウルトラマーシャルは、とりわけワイルドタンジェント(WildTangent, Inc.)を相手に、カリフォルニア州中部地区の地方裁判所に対して特許権侵害訴訟を提起した。

ワイルドタンジェントは、クレームは特許適格を有さないと主張して、請求の趣旨不十分を理由とする請求棄却の申立てを行った。地方裁判所がワイルドタンジェントによる請求棄却の申立てを認めたため、ウルトラマーシャルは控訴した。

控訴審で、CAFCは最初に、特許可能な対象の分析に関する枠組みについて説明し、特許適格の分析を、クレーム解釈要否の閾値を確認し(threshold check)「審理の方向性の基準」("course gauge")となるものとして説明した。

CAFCは、最高裁判所による Bilski 対 Kappos の判決において再確認された、特許可能な対象に関して判例により生み出された3つの例外―自然法則、物理現象、及び抽象概念―を確認した。

これらの例外に関して、CAFCは、抽象性を定義して特定することは困難であることが判明していると説明し、また、自己の分析において、特許可能な対象の範囲に関して法律には明示的な限定が何ら存在しないということも重視した。

これらの原理を適用することにより、CAFCは、権利行使された特許発明は抽象概念ではなく、むしろ広告が通貨としての役割を果たし得るという概念に関する実用的用途(practical application)であると判断した。

CAFCは、クレームされた必要で複雑なコンピュータプログラミングの多くと幾つかのステップは、製品が売り出される市場としてインターネットを使用することを伴っていると述べた。

CAFCは、インターネットを使用するコンピュータ実装の方法の全てが特許適格を有するという訳ではないが、本件訴訟において権利行使されたクレームは米国特許法101条の下での特許可能な対象に関するものであると判断したのである。

CAFCは、特許適格の審理に関して幾つかの追加的指針を提供した。CAFCは、101条の分析は、不明瞭性、開示不足、あるいは実施可能要件の問題に基づいて特許を無効化するために使用されてはならないと説明した。

CAFCはまた、最近の判決である CyberSource Corp. 対 Retail Decisions, Inc., No. 2009-1235 (Fed. Cir. Aug. 16, 2011)についても言及した。この判決では、CAFCは、純粋な精神的ステップに関するものであるとして方法クレームを無効にした。

サイバーソースと区別するに際して、CAFCは、精神的ステップという除外要件は「極めて狭く」、ウルトラマーシャルが権利行使した方法クレームは単なる精神的ステップからは遥かに遠いものであると判断した。

ウルトラマーシャルの判決は、特許可能な対象の範囲に関する、Bilski後におけるCAFCの最近の別の解釈を表すものである。この事件は、実用的用途(practical application)を有する方法は、特許可能な対象である可能性が高く、抽象概念として扱われる可能性は低いということを強調している。

この事件はまた、特許適格要件は「審理の方向性の基準」("course gauge")であり、適格性の分析はクレーム解釈を行うことを必要とする場合もあれば必要としない場合もあるということを思い出させるものでもある。

この判決のポイント

この事件では、権利行使された特許発明が特許可能な対象であるか否かが争点となった。CAFCは、クレームされた方法が、特許適格を有する対象を構成する、インターネット経由の広告を伴う実用的用途(practical application)であると判断した。この事件は、実用的用途(practical application)を有する方法は、特許可能な対象である可能性が高く、抽象概念として扱われる可能性は低いということを強調するものである。

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