1. トップページ
  2. 米国連邦裁判所(CAFC)判決
  3. 2011年
  4. 2. Spectralytics, Inc. 対 Cordis Corp.事件

月刊The Lawyers 2011年9月号(第143回)

2. Spectralytics, Inc. 対 Cordis Corp.事件

No. 2009-1564 (June 13, 2011)

スペクトラリティクス(Spectralytics)事件において、CAFCはたとえ「特許権がおそらく無効である(中略)と認定されるであろう」場合でも、地方裁判所が陪審員による有効性の認定を採用したことを支持し、謙譲的な審理の基準を陪審員の認定に適用することを支持した。

更に、CAFCはシーゲート(Seagate Technologies)事件の判決によって、意図的な特許権侵害に対して損害賠償額が増加されるべきか否かの判断において考慮されるべき要因は変更されないことを明らかにした。

スペクトラリティクスは、冠動脈手術に使用される管状ステントの中でパターンを切断するための方法の特許権を取得した。スペクトラリティクスは、ステントとステントを作る機械の双方を製造している。

ノーブル(Norman Noble, Inc.)もまた冠状動脈ステントを製造し、コーディス(Cordis Corporation)によって提供、販売されている。スペクトラリティクスは、コーディスとノーブルを特許権侵害で訴えた。

ミネソタ州地方裁判所は、有効性、特許権侵害及び損害賠償額の問題について陪審員裁判を行った。陪審員は特許権の有効性を支持し、コーディスとノーブルは意図的に特許権を侵害したと認定し、コーディスに対するノーブルの侵害性のある販売に対し5%のロイヤルティーで計算された損害賠償額を認めた。

被告は新しい審理と、法律問題としての判決を求める申立を行ったが、地方裁判所によって却下された。地方裁判所はまた、損害賠償額の増額を求めるスペクトラリティクスの申立も却下した。双方は控訴した。

控訴審で被告は、陪審員の認定の審理の際、地方裁判所がその役割を果たさなかったと主張した。しかし、CAFCは地方裁判所が審理の適切な基準を適用したことを確認した。

更に具体的に、CAFCは法律問題としての判決を求める申立に対する陪審員の認定を覆すためには、申し立てた当事者が陪審員の事実認定は実質的証拠に裏付けされていない、もしくは証拠が評決までの過程で陪審員が出した認定と結論を裏付けるには必ずしも十分でないことを立証しなくてはならない。

被告は、陪審員が先行技術にスペクトラリティクスの特許製品に対する阻害要因を認定できなかったことを理由に、陪審員の認定は裏付けがないと主張したが、CAFCは、被告の主張は誤った阻害要因の理解だとして却下した。

CAFCが明らかにしたように、阻害要因は先行技術が特定の発明を予見すること、及びその方針をとらないよう明確に警告することを必要としない。更にCAFCは、模倣と商業的成功の認定を裏付ける実質的証拠が存在し、それらが非自明性を支持すると考えられうるとした。そのようにして、CAFCは地方裁判所が実質的証拠に裏付けされた陪審員の認定に対し正しい法的基準を適用したことを認めた。

CAFCはまた、陪審員による損害賠償額の判断を検討し、これらの認定も同様に実質的証拠に裏付けられていることを認めた。

最後に、CAFCは損害賠償の増額の要求を却下したことに対するスペクトラリティクスの控訴について検討し、地方裁判所が、度を超えた厳格なやり方でシーゲート事件の判例を適用したと認定した。

特に、CAFCは、特許権侵害が意図的か否かを判断するためにシーゲート事件で示されたテストは、意図的な特許権侵害を認定した後で、別の問題である損害賠償額の増額の判断に適用されるべきではないことを明らかにした。

CAFCは、損害賠償額が増額されるべきか否かを判断するための要因は Read Corp. 対 Portec, Inc.事件(注)において示されていると述べた。シーゲート事件はこれらの要因の適用を変更しなかったので、CAFCは損害賠償の増額の却下を無効とし、この問題の再判断のために差し戻した。

スペクトラリティクス事件におけるCAFCの判決は、陪審員の認定に対する控訴に成功することの難しさを示した。特に、もし認定を裏付ける実体的証拠が存在すれば、たとえ地方裁判所がおそらく異なった認定をするであろう場合でも、陪審員評決は支持される。

CAFCの判決はまた、シーゲート事件が損害賠償の増額の判断にまで及ばないことを明らかにしたために重要である。むしろ、シーゲート事件は侵害者が特許権侵害を回避するための当然の注意を怠ったことに起因する意図的な特許権侵害の推定を排除したが、全ての事実と状況を踏まえた上で被告の失錯が損害賠償額の増額に影響を与え得ることを認定した事件である。

この判決のポイント

この事件において、CAFCは、もし地方裁判所が「特許権は無効であるとおそらく認定するであろう」場合でも、陪審員が特許権の有効性を認めた場合には、陪審員の認定を支持する謙譲的な審理の基準を適用した。CAFCはまた、意図的な特許権侵害に関して損害賠償額の増額を決定するために適用されるリード事件の要因は、シーゲート事件の判決によって変更されないことを確認した。


(注) 970 F.2d 816 (Fed. Cir. 1992)(これらの要因は、(1)侵害者が意図的に他人のアイディア若しくはデザインを模倣したか否か、(2)侵害者が他人の特許権保護を知ったときに、特許権の範囲を調査し、それが無効であるか、侵害していないのかについて誠実な意見を形成したか否か、(中略)(3)裁判に関わる当事者としての侵害者の行為、(中略)(4)被告の規模及び経済状況、(中略)(5)事件への近接性、(中略)(6)被告の不公正行為の継続期間、(中略)(7)被告による改善措置、(中略)(8)損害に対する被告の動機付け、及び(中略)(9)被告が不公正行為を隠蔽しようと企てたか否か、を含む)

  1. トップページ
  2. 米国連邦裁判所(CAFC)判決
  3. 2011年
  4. 2. Spectralytics, Inc. 対 Cordis Corp.事件

ページ上部へ