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月刊The Lawyers 2011年6月号(第140回)

3. Crown Packaging Technologies, Inc. 対
Ball Metal Beverage
Container Corporation事件

No. 2010-1020 (April 1, 2011)

クラウン・パッケイジング(Crown Packaging )事件においてCAFCは、非バイオ関連発明の記載要件の争点に関する現在の扱いについて明らかにした。Crown Packaging Technologies, Inc.、Crown Cork、及び Seal USA, Inc. (合わせて以下、「クラウン」)の所有する米国特許第6,935,826号(826特許)及び第6,848,875号(875特許)のクレームは、記載要件を満たしておらず、新規性もないとして、これらの特許の無効を主張したボール・メタル・ベバレッジ(Ball Metal Beverage Container Corporation、以下「ボール」)の申し立てを認めた地方裁判所の略式判決に対し、クラウンは控訴した。

CAFCは判決を破棄し、記載要件の争点に関しクラウンの主張を認め、新規性の争点に関し、事件を差し戻した。

クラウンとボールは共に、主要な飲料メーカーに対し、飲料を入れる缶本体と缶の端部を販売するビジネスを行っている。缶の端部とは実質的に飲料缶の頂部に接続される蓋であり、缶本体とは概して円筒形の空洞の容器であり、缶の端部で閉鎖される。

826特許及び875特許共に、缶本体と缶の端部とを溶接する際の金属を少なくする方法について述べており、一つは製品を、他方は製造方法をカバーしていた。

その2つの特許は「チャック壁の傾斜を大きくして、非尖ビードの幅を狭めることによる金属使用量の削減」を教示した共通の明細書を使用していた。この2つの改良は、缶の直径全体を小さくする必要がなく、現存する機械を稼働したまま大幅に金属の使用量を節約することを可能にするものであった。

この金属使用量の削減は2つの異なる方法で実現される。第一に、内壁部の角度を、ほぼ垂直な状態であったものにかなりの傾斜をつける変更をしたことである。第二に、補強ビードの幅を小さくしたことである。

特許は、溶接機の一部をなす独特なタイプのチャックを開示している。そのチャックは缶の頂部内側に配置し、缶の縁がそれに対して巻き込まれ、チャックは補強ビードの中深くに入り込まないようになっている。このようなタイプのチャックは、小さい補強ビードに特に有効である。

裁判において両者は、明細書の記載が、補強ビード内に深く入り込まない改良型チャックを使用せずにチャック壁の傾斜を大きくすることによって金属使用量を減らすという発明をサポートしているか否かについて意見を異にした。地方裁判所は、主張クレームは缶の補強ビードの内側あるいは外側をチャックが動くことをカバーしているが、明細書は補強ビードの外側を動くことだけをサポートしているとして、記載要件違反によりクレームは無効であると認定し、ボールの主張に同意した。

記載要件は米国特許法第112条第1項に基づき、明細書には発明及びその製造や使用方法を、当業者にとって製造及び使用できるように、十分に明らかに記載することを要件としている。

CAFCは、記載要件を満たしているか否かの判断基準は、発明者が何を発明したかを、(明細書の)開示内容から当業者が明瞭に理解することができるか否かである、と判示した(注1)。明細書に注目すると、当業者であれば、発明者が出願日の時点でクレームされた発明の主題を所有していたことが分かるはずであると述べた。

クラウンは控訴審において、明細書は金属使用量の削減に関する2つの別々の解決法を教示していると主張した。第一の解決法は缶の端部のチャック壁の傾斜を大きくすることであり、第二の解決法は補強ビードの幅を狭めることである。

クラウンは、明細書において、すべての場合に両方の方法を用いることを要件としていないと主張した。CAFCは、明細書の記載は主張クレームをサポートしていると認定し、クラウンの主張を認める判決を下した。

過去の判決に基づき、CAFCは「発明者は、1つもしくはいくつかの課題に着目してクレームを構築することができ、記載要件は、発明者がクレーム中に挙げた発明を十分に把握していることが明細書の記載から伝わる限りにおいて、個々のクレームに関する記載要件を満たしている」とした(注2)

この事件は、Ariad Pharmaceuticals, Inc. 対 Eli Lilly & Co.事件に終結した、バイオテクノロジー関連の判決において過去10年に及び確立された記載要件の法律学と並んで、機械発明における記載要件をCAFCがどのように扱うかの一例となった。

バイオテクノロジー特許においては、強力な記載要件が、いくらか、より重要であるように見受けられる一方で、もっと予測可能な技術分野においては、さほど重要ではないようである。クラウン・パッケイジング事件においてCAFCは、記載要件の争点を分析するための問題解決のアプローチは、Ariad Pharmaceuticals事件における2010年の大法廷判決の後においてもなお健在であることを再確認した。

この判決のポイント

方法クレーム特許の侵害を認定するためには、単独の当事者が方法クレームのすべてのステップを実行することが必要である。この事件の方法クレームの実行に複数の当事者が関与している場合は、それぞれの行為がある当事者のコントロールまたは指示の下にあることが要件とされたが、今後のAkamai事件の大法廷での再審理において、共同直接侵害の責任に関する基準が明確となるであろう。しかし、方法クレームの記載において、ステップをその主体(誰がそのステップを実行する主体)に注意して、記載することが必要である。


(注1) Ariad Pharms., Inc. 対 Eli Lilly & Co.事件、598 F. 3d 1336, 1351 (Fed. Cir. 2010)(大法廷)

(注2) Revolution Eyewear, Inc. 対 Aspex Eyewear, Inc.事件、563 F.3d 1358, 1367 (Fed. Cir. 2009)

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