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月刊The Lawyers 2011年6月号(第140回)

2. McKesson Technologies, Inc. 対
Epic Systems Corp.事件

No. 2010-1291 (April 12, 2011)

マッケソン(McKesson Technologies Inc.)は、非特許権侵害の略式判決を求めるエピック(Epic Systems Corporation)の申立を認めた地方裁判所の判決に対し控訴した。

マッケソンは、患者の通院後に、医師と患者間のコミュニケーションを円滑にする個別のウェブページを用いた電子的方法に関する米国特許第6,757,898号(以下、898特許)を所有している。

例えば、898特許は、患者が毎回の通院後にオンラインで「医師との典型的な対話により患者が得ることができたであろう情報よりもかなり多くの情報」を含む、通院限定のコンテンツにアクセスすることができるシステムを開示している。患者はまた、オンラインにて予約を取り、処方薬の補充を申請することもできる。

エピックは、ヘルスケアプロバイダーにソフトウェアをライセンスするソフトウェア開発企業である。マッケソンは、エピックの商品である MyChart が898特許を侵害していると主張した。MyChart は、ヘルスケアプロバイダーが個別のウェブページと患者の医療記録とを関連付けるために医療記録を連携させることを可能とする。

患者は、MyChart の個別ウェブページを通して、自分のヘルスケアプロバイダーとコミュニケーションをとることもできる。エピックは MyChart のソフトウェアを使用しておらず、むしろ患者へ提供するか否かを選択するヘルスケアプロバイダーに対しそれをライセンスする。

ヘルスケアプロバイダーは、実際に患者が MyChart を使用することを必要としない。もし患者がソフトウェアの使用を決めた場合、ヘルスケアプロバイダーの MyChart ウェブページにログオンし、認証されなければならない。これらのステップが行われた後で初めて、患者は個別のウェブページに入ることができる。

マッケソンは、間接侵害の一種である誘導侵害を主張した。間接侵害の主張を成功させるためには、直接侵害をした当事者が存在しなくてはならない(注1)。方法クレームが特許権侵害されるためには、クレームされた方法のすべてのステップが、単独の当事者によって実行されなくてはならない。

マッケソンとエピックの双方は、患者がシステムにログインし、登録することにより、エピックのソフトウェアにおいて通信プロセスを開始しなければならないため、主張された方法クレームのすべてのステップを実行する単独の当事者は存在しないことに同意した。

地方裁判所の判決を支持し、CAFCは、複数の当事者の行為が、クレームされた方法のステップを実行するために組み合わされるが、方法クレームのすべてのステップを実行する単独の当事者が存在しない場合に、特許権侵害を確立するために必要な証拠について取り扱った。

最近のAkamai判決(注2)に基づき、CAFCは、複数の当事者の行為がすべてのステップを実行するために組み合わされる場合に特許権侵害を認定するためには、ある当事者が、すべてのステップがその支配的当事者に起因するように、プロセス全体に対して「コントロールまたは指示」を行わなくてはならないと述べた。

共同直接侵害を認定することも可能であったにもかかわらず、これは、もし方法ステップを実行する当事者間に代理関係が存在する場合、または契約によりある当事者が他者にステップの遂行を義務づけた場合にのみ認定される。

地方裁判所とCAFCの双方は、患者はヘルスケアプロバイダーの代理人でなく、またサービスに登録する契約上の義務を負っていないと認定した。ある当事者が方法のステップのすべてを行わず、ヘルスケアプロバイダーは患者に対してコントロールまたは指示をしないために、直接侵害者は存在せず、エピックを誘因侵害に責任があると認定することは不可能であった。

マッケソン事件は、方法クレームのすべてのステップを単独の団体が行うことを要求するCAFCの過去の判決に続いた。しかしながら、この事件は、次の3つの見解を生じさせたことにより若干通常とは異なっている。

上記で議論された大多数の意見、問題の大法廷による検討が請け負うであろうことを示唆する同意、そして「単独の団体ルール」の適用が実際は判例と矛盾すると主張する反対意見である。従って、この事件はCAFCが大法廷での審理において主張された共同直接侵害に対する責任に関して近いうちに取り扱うであろうことを示唆する。CAFCがその問題に再び立ち戻るまで、クレームをドラフトする際には、発明が適切に保護されることを確かにするために、潜在的な共同直接侵害の問題を認識することが重要である。

マッケソン事件の判決後、CAFCは、マッケソン事件で裁判所が大きく依存したAkamai事件の大法廷での再弁論の申し立てを認めた。CAFCは様々な判事の異なる意見をまとめるために、大法廷で審問を行う。

CAFCはAkamai事件の大法廷での再審理において、仮に別々の団体が、それぞれ方法クレームの別々のステップを実行した場合に、どのような状況においてクレームは直接侵害となるのか、そして、それぞれの当事者はどの程度の責任を負うべきであるのか、という争点を審理するであろう。この大法廷判決により、連帯侵害の責任に関する基準が明らかになると思われる。

この判決のポイント

方法クレーム特許の侵害を認定するためには、単独の当事者が方法クレームのすべてのステップを実行することが必要である。この事件の方法クレームの実行に複数の当事者が関与している場合は、それぞれの行為がある当事者のコントロールまたは指示の下にあることが要件とされたが、今後のAkamai事件の大法廷での再審理において、共同直接侵害の責任に関する基準が明確となるであろう。しかし、方法クレームの記載において、ステップをその主体(誰がそのステップを実行する主体)に注意して、記載することが必要である。


(注1) BMC Resources, Inc. 対 Paymentech, L.P., 498 F.3d 1373 at 1379 (Fed. Cir. 2007)

(注2) Akamai Technologies, Inc 対 Limelight Networks, Inc.事件、629 F. 3d 1311 (Fed. Cir. 2010)

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