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月刊The Lawyers 2011年2月号(第136回)

3. Research Corp. Techs., Inc. 対
Microsoft Corp.事件

No. 2010-1037 (December 8, 2010)

この事件において、CAFCは、関連する米国特許第5,111,310 号 (以下、310特許)及び第5,341,228号(以下、228特許)の特定のクレームが米国特許法第101条に準じて無効であるとした地方裁判所の認定を破棄した。また、米国特許第5,477,305号(以下、305特許)の単一クレームに先願の利益を主張する権利がないとした地方裁判所の認定を一部破棄し、米国特許第5,726,772号(以下、772特許)の2つのクレームが先の出願日の権利を受けることができないとした地方裁判所の判決を支持した。

Research Corporation Technologies(以下、RCT)は、デジタル画像の「ハーフトーン」に関する、訴訟となっている特許の権利者である。CAFCは、ハーフトーン技術では、コンピュータのディスプレイとプリンターは限られた数の主要な色しか使用することができないと説明した。ハーフトーン技術では、新しい陰影の錯覚を与える構成において、主要な色に色付けされたドットを配置することで、付加的な色調をシミュレートする。パワースペクトルグラフは、特定のハーフトーンの質を評価するために使用される。これらのグラフは、特定のハーフトーンにおいてドットの相対度数を示す。少量の低周波ドットを証明する分析結果を有する画像は、視覚的により魅力的である。最初に高周波の構成要素及び極僅かな低周波の構成要素を表示するパワースペクトルグラフが望ましい。この種のパワースペクトルを生じさせるドットの分析結果は「ブルーノイズ」を有すると言われる。訴訟となっている特許は、改良されたブルーノイズマスクを使用したハーフトーン技術をクレームしており、CAFCは、先行技術のブルーノイズマスクと比較すると、より少ない処理能力とメモリを使用する一方で、より高品質なハーフトーン画像を生成すると言及した。

2001年12月21日、RCTは、マイクロソフトの基本ソフト、パッケージソフトのオフィス、及び他のアプリケーションが6つの特許全てを侵害していると主張して、マイクロソフト(Microsoft)に対し訴訟を提起した。略式判決において地方裁判所は、310特許と228特許の主張クレームは、米国特許法第101条における特許適格性の閾値テストを満たさなかったという理由で無効とした。地方裁判所の判決を覆し、CAFCは、第101条における審理は特許権の広い主題に焦点を当てており、単に特定のクレームに特許性がないと認定したからといって、裁判所が主題を拒絶することを許可していないと述べた。実際には、特許が第101条を満たすに十分なプロセスをクレームしていたとしても、不明瞭を理由に無効である可能性がある。特許の主題を判断する上で、CAFCは、特許可能な対象のうち、(1)自然法則(2)物理的現象(3)抽象的観念の3つの例外を確立した Bilski 対 Kappos事件(注)での最高裁判決を頼りにした。特許は明らかに自然法則又は物理的現象をカバーしていなかったために、CAFCはその主題が抽象的すぎて特許性がないかどうかについてのみ審理した。

特許性を損なう「抽象的」とは、特許対象発明(法定の発明の問題と)と、特許要件に明瞭に関係しなければならない。CAFCは、その特許発明は「コンピュータ・テクノロジーの分野において機能的で明白なアプリケーションを示し」、その分野で特有な必要性を扱っていたために抽象的ではないと認定した。CAFCは「既に製品となっているような、具体的な技術、その改良技術に関する発明は、特許法の制定法上の文言と枠組みを覆すほどには抽象的でないと思われる」と述べた。従って、「ハイコントラストフィルム」、「フィルムプリンター」、「メモリ」及び「プリンター及びディスプレイ装置」を含むいくつかのクレームでの特定の製品への言及は、発明に特許性があることの証明となる。

CAFCは更に、特許権者は数式そのものを特許しようとしているわけではなかったので、特定のアルゴリズムと式をクレームされた方法に組み入れることは、発明を抽象的にはしないと述べた。更にCAFCは、特許適格性のある主題に特許が関連している場合、その主題をクレームするプロセスクレームもまた特許適格性を持つと言及した。

次にCAFCは305特許のクレーム29及び772特許のクレーム4及び63が、後に310特許及び228特許となった出願の先の優先日を与えられる資格があるか否かの問題に取り掛かった。772特許と305特許は明細書を同一とし、故に明細書が実際に305特許のクレームをサポートしているか否かについての問題に焦点があてられた。CAFCは310特許及び228特許となった特許出願では、特定のアルゴリズムに従って作成された特定のブルーノイズマスクに限定されていたとした地方裁判所の認定を、どのようにしてブルーノイズマスクが作られるかを記載されていないとして却下した。従って、CAFCは305特許のクレーム29は先の優先日を与えられる資格があると認定した。しかしながら、772特許に関してCAFCは、772特許によってクレームされているハーフトーンマスクのドットの分析結果は、いずれも全てブルーノイズ特性を有していなかったことを理由に、310特許及び228特許となった出願において開示された発明よりクレームが広いと認定した。

この事件を通してCAFCは、Bilski判決に関する裁判所の見解を公表したことになる。係争特許が特定の技術を具体的に記載している場合には、その発明が抽象的であることを理由に特許適格性に異議を申し立てることの難しさが明らかとなった。CAFCの考察は第101条の下での分析を行うにあたり、CAFCは審理の対象となったクレームの文言だけでなく、判決に至るまでのその他のクレーム及び開示を参考にする可能性があることを示唆している。この事件はまた、特許権者が先願の優先権を主張して無効性の主張を打破しようと試みるときには、クレームが先願の明細書によってサポートされていることを含む優先権の資格を証明する責任を負うことになる。

この判決のポイント

この判決は、具体的な技術がクレームに記載されている場合に、その発明が抽象的であると特許の適格性に異議を申し立てることが困難なことを明らかにした。この判決ではまた、特許権者が先願の優先権を主張して特許無効の主張を打破しようと試みるときには、クレームが先願の明細書によってサポートされていることを証明する必要があることも明らかとなった。


(注) 130 S.Ct. 3218.3228 (2010)

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