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月刊The Lawyers 2010年9月号(第131回)

3. Giacomini事件

No. 2009-1400 (July 7, 2010)

- 仮出願日が先行技術の基準日 -

CAFCは、原告であるジャコミーニ(Giacomini)の米国特許出願第09/725,737号(以下、ジャコミーニ出願)の特定のクレームを、米国特許法第102条に基づき新規性の欠如を理由に拒絶した特許審判抵触部(以下、審判部)の決定を支持した。

審判部は、引例の米国特許第7,039,683号(以下、トラン特許)は、ジャコミーニ出願の出願日より先の出願日の仮出願を優先権主張しているために先行技術であると認定し、CAFCはこれに同意した。

ジャコミーニ出願は2000年11月29日に出願され、「キャッシュ」と呼ばれる容易にアクセス可能なメモリーの中に選択的に電子データを格納するための技術に関係する。その出願は、データに対する要求が複数あった場合にのみ、そのようなデータをキャッシングする方法を開示する。

同様に、トラン特許はデータに対する過去の要求からもまた予測されるデータの予期された要求に基づきキャッシングする技術を開示する。

ジャコミーニと審判部は、ジャコミーニ出願におけるクレームされた全ての特徴はトラン特許により教示される点では一致した。トラン特許は正式の通常出願は2000年12月29日に出願されたが、米国仮出願第60/234,996号により2000年9月付とされている。ジャコミーニと審判部は、これによりトラン特許を先行技術と判断するか否かについて意見を異にした。

第102条は特許要件について規定しており、第102条(e)(2)では「発明が、特許出願人の発明前に他の者により合衆国において出願された特許出願、…である場合を除いて、何人も特許を受ける権利を与えられる」とされている。

特許法では更に、この条文は特許仮出願にも同様に適用されることを明確にしている。また米国特許法第119条(e)は、後で出願される通常出願を対応する仮出願の日付にて出願されたように取り扱い、特許法第111条(a)もしくは363条のもとになされた出願に適用される。重要な制限は、仮出願は続いて生じる本出願においてクレームされた発明に対する明細書によるサポートを備えなければならないことである。

トラン仮出願は、「電子情報に対する予期される要求は…一般に一つ以上の基準、例えば情報に対する過去の要求に基づいて実行される」と開示している。

ジャコミーニは、審判請求するにあたって、トラン仮出願が適切な明細書を備えていないとする主張を一度も行わず、従ってこの論拠を放棄した。

代わりにジャコミーニは、第119条(e)は特許の優先日にのみ適用されるが、先行する仮出願の出願日を基準とする102条(e)の下では適用されないと主張した。この解釈は、先行する外国出願の日付をもつ国内出願に関する事件において、裁判所が第119条のもとの特許優先日と第102条(e)のもとの有効な引例の日付を区別したHilmer事件(注1)の文言に基づいている。

しかしながら、CAFCはジャコミーニが米国仮出願を外国特許出願と類推しようとしたとして、この区別はこの事件には適用されないとした。この類推は、Hilmer事件で国内と外国の出願日が明確に区別されたほど巧妙でなかった。更に、関連する第119条(e)はHilmer判決のずっと後に加えられたものであった。

CAFCは、この判決はMilburn事件(注2)での最高裁判所の見解で示された「特許権者が第一発明者でなくてはならないとする…根本的な規則」を補足すると言及し結論付けた。

この判決のポイント

仮出願を優先権主張した米国特許は、仮出願の時点を基準に他の特許出願に対して米国特許法第102条(e)の先行技術を構成することを明確にした点に、この判決の重要性がある。多くの米国特許が仮出願を基礎としているため、特許事件における被告は、先行技術を仮出願日に遡って調査検討できることが明らかになった。しかしながら、仮出願はその出願を優先権主張する本出願が出願された場合にのみ先行技術として扱われうることに注意しなければならない。


(注1) 359 F.2d 859 (C.C.P.A. 1966) 請求・関税上訴裁判所はCAFCの前身である。

(注2) Alexander Milburn Co.対 Davis-Bournonville Co.事件, 270 U.S. 390, 402 (1926)

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