1. トップページ
  2. 米国連邦裁判所(CAFC)判決
  3. 2010年
  4. 1. Pequignot 対 Solo Cup Company事件

月刊The Lawyers 2010年8月号(第130回)

1. Pequignot 対 Solo Cup Company事件

No. 2009-1547 (June 10, 2010)

- 製品に対する虚偽表示について判断した事件 -

この事件において被告であるソロ(Solo)は、1976年5月4日に発行された米国再発行特許第RE28,797号(以下、797特許)及び1986年5月20日に発行された米国特許第4,589,569号(以下、569特許)を所有していた。

797特許は、プラスチック製の冷たい飲料用カップのふたをクレームし、569特許はプラスチック製の温かい飲料用カップのふたをクレームしていた。それぞれの特許の発行から間もなく、被告はそれぞれの特許番号を付した製品の販売を開始した。

米国特許法第287条のもと、特許権者は製品もしくはパッケージに特許番号を付すことで、自身の製品が特許されていると表示することを認められている。しかし一方で、米国特許法第292条のもと、公衆を欺く意図を持った特許されていない製品への虚偽表示には罰金が課せられる。

ソロは、15年から20年間は使用が可能な鋳型を使って自身の製品に印を付けている。797特許は1998年に失効したが、被告は2000年まで製品に失効した特許番号を付していたことに気づかなかった。

2000年に、ソロは外部弁護士のアドバイスを求め、特許番号は削除すべきであるが、公衆を欺く意図は無いので、ソロが罰金を課せられることはないだろうとのアドバイスを受けた。

このアドバイスを受けて、ソロは摩耗し、傷んでいた古い鋳型に代わる新しい鋳型には特許番号を入れない方針を決めた。ソロの弁護士は、2003年に失効した569特許に対しても、被告がこの方針を採用することに賛成した。

ソロは後に、潜在的な侵害者に対して警告を与える目的で特許されている製品と、されていない製品の双方のパッケージに以下の文言を追加した。「この製品は一つ以上の米国、もしくは外国の出願中または発行済の特許権によって保護されている可能性があります。詳しくは、www.solocup.comへご連絡下さい」。

ソロの外部弁護士は、たとえ特許されていない製品のパッケージに表示されたとしても、その文言は虚偽表示ではないと考えたと証言した。

2007年に、原告は第292条のもと、刑事的民事訴訟を提起した。原告は、ソロが特許権の失効を知りながら、公衆を欺く意図を持って製品に虚偽表示をし、またソロが製品が特許されていないと知りながら「保護されている可能性の文言」をパッケージに表示したと主張した。

地方裁判所は、失効した特許番号と「保護される可能性」の文言を付すことは第292条のもと虚偽表示にあたりうるとして、事件の棄却を求めるソロの申立を拒否した。しかしながら、続いて地方裁判所は、ソロには公衆を欺く意図が欠如していたとして、ソロの略式判決の申立を認めた。

この判決によれば、虚偽表示及び虚偽の認識は、公衆を欺く意図の反論可能な推定にすぎない。この推定は失効した特許番号が製品に付されている場合に、より容易に反証される。ソロは、生産の途絶を防ぎ、費用を削減することを目的として弁護士のアドバイスに誠実に頼ったことを示すことで、この推定の反証に成功した。

CAFCは、虚偽表示法の目的のために、失効した特許により保護される製品は「特許されていない製品」であると判断した。しかしながら、CAFCは失効した特許番号を製品に付すことに起因する損害の可能性は低いとした地方裁判所を支持した。

製品にそれを保護しない特許権が表示されている場合は、競合他社と公衆がその表示を虚偽であるか否か判断することはかなり困難である。対照的に、特許権が失効していた場合、特許権の失効日を判断することははるかに容易である。

CAFCは次に、ソロに自身の製品に虚偽表示することで公衆を欺く意図要求があったかどうかを判断し、失効した特許番号を表示することは反論可能な意図の推定にすぎないとした地方裁判所を支持した。

CAFCはまた、表示が失効した特許権の場合、意図の推定は弱まるとした地方裁判所を支持した。CAFCは更に、ソロが欺くことを自覚していたものでなく、弁護士の意見に誠実に従った行動であり、ビジネスの途絶を最小限に抑え、費用を削減するための意図をもった行動であったことを証拠の優越によって示したことにより、この推定に反証しえたと判断した。この意図はまた、摩耗して傷んでいた鋳型を新しく表示のない鋳型と取り替えようとする方針を反映していたとした。

「保護される可能性」の文言に関して、CAFCは、文言はソロの有効な特許に対する潜在的な侵害者に警告を与えるために外部弁護士の提案により付け加えられ、一部のパッケージにのみ付け加えることは論理的に実用的ではないので、全てのパッケージに加えられたため、ソロが意図の推定に反証したものと地方裁判所が正しく判断したと判決した。

Pequignot事件において、CAFCは「偽装表示」に関する特許の事件において公衆を欺く意図は、必要な要素であると確認した。この判決を通して、最近増加していたこの種の事件が減少する可能性がある。

  1. トップページ
  2. 米国連邦裁判所(CAFC)判決
  3. 2010年
  4. 1. Pequignot 対 Solo Cup Company事件

ページ上部へ