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月刊The Lawyers 2010年7月号(第129回)

3. Anascape, Ltd. 対
Nintendo of America Inc.事件

No. 2009-1557 (June 2, 2010)

- プリアンブルにおける用語の定義に基づきクレーム本文を解釈した事件 -

この事件では、原告ヘモネティクス(Haemonetics)と被告フェンオール(Fenwal)はともに、アフェレーシスによって人間の血液の赤血球を他の成分から分離するように設計された携帯用遠心分離機の製造業者であり販売業者である。

アフェレーシスとは、抜き取られた血液から赤血球を分離し、残りの血液成分をドナーへ戻すことによってドナーから赤血球のみを収集する手法である。

ヘモネティクスは米国特許番号第6,705,983(以下、983特許)の特許権者であり、この特許は血液のような液体の成分を分離して収集する小型血液遠心分離機をクレームする。

この特許は、(1)分離チャンバにおいて血液成分を分離する容器と、(2)前記容器との間で血流を出し入れする管とを備え、前記管は前記回転容器を非回転支持体へ接続し、前記容器の周りでクエスチョンマーク型のループを形成する遠心分離機を記載する。

2005年にヘモネティクスはフェンオールのALYX遠心分離システムが983特許を侵害すると主張してフェンオールを訴えた。クレーム解釈及び略式判決申立てが提出された後に、原告はこの訴えを983特許のクレーム16に限定し、フェンオールは記載不備、新規性及び自明性によりクレーム16が無効であると反論した。この事件の争点はクレーム16の適切なクレーム解釈であり、関連部分を以下に引用する。

「遠心分離コンポーネントと複数の管と…を備える遠心分離ユニットであって、複数の流路が前記遠心分離ユニットの基台から放射状に延びており、…前記遠心分離ユニットは、半径が25から50mmであり高さが半径の75から125%であることを特徴とする遠心分離ユニット」

地方裁判所はクレーム16において「遠心分離ユニット」が異なる2通りの方法で使用されていると解釈し、プリアンブル内の「遠心分離ユニット」の用法を「容器及び管の両方の組み合わせ」であると解釈した。

しかしながら、地方裁判所は、「遠心分離ユニット」が容器のみを意味することを当事者が認める他の独立クレームにおいて用いられるものと同じ寸法のクレームの用法に基づいて、このクレームにおける残りの2つの「遠心分離ユニット」の用法を容器だけであると解釈した。

容器と管とが合わさると常に容器単独よりも大きくなるため、「遠心分離ユニット」を容器と管とが合わさったものであると解釈すると与えられた寸法の文脈において「矛盾を生じるだろう」と地方裁判所は論理づけた。

CAFCはクレーム解釈を新たに法律上の争点として再検討した。一般的に、クレームの文言は、発明時点において関連分野の当業者に理解されるような通常の理解に沿って解釈される。

CAFCは、プリアンブルが「遠心分離ユニット」という文言を「遠心分離コンポーネント」と管との両方を備えるものとして明確に規定していると判断した。後続する「遠心分離ユニット」のすべての用法はこのように解釈されるべきである。なぜなら、後続する「遠心分離ユニット」は「一つの遠心分離ユニット」または「遠心分離コンポーネント」ではなく「前記遠心分離ユニット」と参照していることをその理由とした。

従って、地方裁判所は、先行する定義ではなく寸法限定の観点で後続する用法を不適法に読み取った。

CAFCは、この解釈が寸法限定の観点で無意味な結果を生じるかもしれないことを指摘したが、「無意味な結果を避けるためにそのままの言葉に相反するようにクレームを書き直すようなことはしない」と、付言した。

審理の最後に、地方裁判所はクレーム16が不明確でないというJMOLを許可した。

しかし、CAFCはこの地方裁判所の判断を無効にして、「遠心分離ユニット」の正しいクレーム解釈及びクレーム16が明確であるかどうかの正しいクレーム解釈のもとで「半径」及び「高さ」の意味を判断するために地方裁判所へ差し戻した。

審理の終了時に、陪審は、被告がクレーム16を侵害し、本クレームが有効であり、1130万ドル以上の逸失利益と430万ドル以上の合理的ロイヤリティを損害賠償として認定した。

続いて裁判所はフェンオールによる意見なしの新規性及び自明性に関するJMOLについての申立てを却下し、終局差止命令に入り、侵害という陪審評決に従って、被告が販売したすべてのキットの10パーセントのロイヤリティを命じた。

この事件では、CAFCは、プリアンブルにおける文言の明確な定義がクレーム内のこの文言のすべての後続する用法の解釈を制御するというルールを説明した。このルールは結果として生じる構成が「無意味なもの」として表現される場合であってさえも適用される。

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