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月刊The Lawyers 2010年6月号(第128回)

3. MBO Laboratories, Inc. 対
Becton, Dickinson & Co.事件

No. 2008-1288 (April 12, 2010)

- 再発行特許における取戻し禁止規定を
再発行特許に関連する一連のパテントファミリーの審査経過に広げて解釈した事件 -

MBOラボラトリー(MBO Laboratories, Inc.)は、フランジにより覆われた保護物で針を覆うことにより針による損傷を防ぐ皮下用安全注射器のデザインを開示する米国再発行特許第RE36,885号(以下、RE885特許)を所有している。

患者から抜かれた針は、スライドしながら「ブロッキングフランジ」を通過して引っ込む。「ブロッキングフランジ」は針先を覆うようにして折れ曲がることで、針先が鞘に収められて保護される。

RE885特許は、米国特許第5,176,655号(655特許)として登録された最初の出願を基礎とした米国特許第5,755,699号(699特許)の再発行特許である。これらの特許ファミリーのうちで二番目の出願は、655特許の一部継続出願として出願された。

三番目の出願は、二番目の出願(後に放棄された)の継続出願であり、四番目の出願は、さらなる継続として出願され、699特許として発行された。

655特許に、MBOはベクトン(Becton, Dickinson & Co.)に対し、ベクトンのセイフティーグライド(登録商標)皮下用注射器がRE885特許の請求項13、19、20、27、28、32及び33に係る特許権を侵害していると主張し、特許権侵害訴訟を提起した。

CAFCがクレーム解釈を覆したことによる差戻し審において、ベクトンは、リキャプチャルール(取戻し規定)の違反により請求項27、28、32及び33を無効とする略式判決の申し立て、及び請求項13、19及び20に係る特許権を非侵害とする略式判決の申し立てを行った。

地方裁判所は、ベクトンによる特許無効の申し立てが請求項27、28、32及び33に限定されていたにもかかわらず、RE885特許における全てのクレームを無効であると認定した。地方裁判所は、ベクトンの非侵害の申し立ては審理不要として却下し、ベクトンに有利な判決を下した。

控訴審において、MBOは、地方裁判所が取戻し規定違反のために請求項27、28、32及び33を無効と認定したことは誤りであると主張した。MBOはさらに、地方裁判所がRE885特許全体と、特に請求項13、19及び20を無効としたことは誤りであると主張した。

CAFCは、取戻し規定違反のために請求項27、28、32及び33を無効とした地方裁判所の判決を支持した。この結論に至るにあたり、CAFCは、再発行されたクレームのより広い態様が審査経過において放棄された主題に関連するか否かを決定する取戻し分析の2番目のステップに着目した。

CAFCは、審査経過での供述に基づき、MBOが固定式の針に関連して移動する保護物の形態を開示する先行技術と二度にわたって区別することで、固定式の針に関連して移動する保護物をクレームすることを放棄したと説明した。

パテントファミリーの1つである699特許よりも前の出願の審査経過において、MBOはこれらの先行技術の装置とクレームされた発明を、その針が保護物と関連して移動可能であることを強調して対比していた。

CAFCはまた、この放棄された主題は、再発行において取り戻そうとされたより広いクレームと直接的に関連すると認定した。

再発行出願宣誓書の中で、MBOは、原クレームは針と保護物とに関連したいかなる動きをもクレームしていなかったと主張した。結果として、CACFは、MBOの再発行特許が保護物の方へ引っ込む針の代わりに、針と保護物の間にある全ての関連した動きを包含するクレームを取り戻そうとしたと結論づけた。

MBOは、先行技術についての議論が、針を引っ込めることに基づいてクレームの許可を得ようとするものではなかったと主張した。CAFCは、それを否定した。針を覆うように移動する保護物を有する先行技術の注射器とクレームされた発明を区別するために、MBOが引っ込めることができる針の特徴に依拠したことを審査経過の記録が示していたからである。

再発行クレームにおける地方裁判所の判決を支持しつつ、CAFCは、あらゆる関連する特許出願の審査経過において、特許権者は放棄された主題を記載することにより取戻し規定に違反した可能性があることを明らかにした。

よって、CAFCは取戻し規定を扱う際に、パテントファミリーの審査経過全体を適切に考慮した。この結論を説明する上で、CAFCは再発行により訂正された特許の審査経過のみに取戻しの分析を限定することはないと述べた。

さらに、再発行の規則と取戻し規定の原理が、放棄された主題を再発行によって訂正された特許の審査経過に現れるものだけに限定する理由はないと述べた。

請求項13、19及び20に関して、CAFCは、地方裁判所が取戻し規定のもと、これらのクレームを誤って無効としたと判断した。請求項13、19及び20は699特許に存在しており、従って取戻しのために無効であるとすることはできない。このため、CAFCは原請求項13、19及び20に対して非侵害の略式判決を求めるベクトンの申し立てを考慮するために事件を地方裁判所に差し戻した。

この判決は、より広い再発行特許を取得しようとする場合には、パテントファミリーの審査経過全体を考慮に入れることの重要性を明らかにした。この事件はさらに、たとえ関連性が遠い特許出願での供述であっても、特許権者は審査経過において許可を得るための供述に拘束されることを強調した。

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