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月刊The Lawyers 2010年5月号(第127回)

2. Therasense, Inc. 対
Becton, Dickinson & Co.事件

Nos. 2008-1511, -1512, -1513, -1514, -1595 (January 25, 2010)

- 対応外国出願で行った米国出願と矛盾する主張はフロードになりえる -

アボット(旧社名はTherasense)は、何名かの被告に対し、使い捨て血糖試験紙に関する特許権を行使した。アボットの特許は、電極を覆う膜を用いずに、全血(いかなる成分も除去されていない血液)を検査するための電気化学センサーを備えた試験紙をクレームしている。

その特許の審査手続での中心的問題は、先行技術が、全血用の膜を用いないブドウ糖センサーを開示しているか否かであった。

特許を得るために、アボットは米国特許商標庁(以下、USPTO)に対し、先行技術は、膜を使用しない全血センサーを教示していないと主張した。

アボットは、先行技術が他の種類の流動体に使用される膜のない試験紙を開示、クレームしていることに対して異議を唱えなかったが、先行技術では社会通念上、血液の検査に膜は不可欠と考えていたと主張した。

審査官との面接においてアボットの代理人は、「(審査官に対し)(先行技術が)全血用に設計された活性電極は、保護膜を必要とすることを教示していると」指摘した。そこで、審査官はアボットが発明の時点において、そのような膜が(全血には)不可欠であったことを示す宣誓供述書または他の証拠を提出すれば、先行技術による拒絶を撤回することに同意した。

この同意に従い、アボットはUSPTOに対し、膜のないセンサーに関する先行技術中の文言は、全血を包含するように解釈されるべきでなく、当業者であれば「全血サンプルに使用する場合、酵素と媒体により構成される活性電極には保護膜が必要と感じただろう」とする専門家証言を提出した。

しかしながら、地方裁判所によって認定され、CAFCによって言及されたように、アボットはヨーロッパ特許庁(以下、EPO)に対し、係争中の米国特許の対応ヨーロッパ出願に関連して、先行技術の教示に関し直接的に矛盾すると思われる説明を行い、その上、アボットはUSPTOに対し、それらの矛盾した説明を開示しなかった。

例えば、アボットの専門家はEPOに対し、全血用であれば膜は任意とされること、及び「好ましくは生体内測定に用いられる、係争中の特許権における保護膜の目的は、使用中に粒子が抜け落ちる(原文のまま)ことを防止するための安全な測定であり、基板に対する浸透性の制御ではない」ことは「絶対的に明らか」であると主張した(CAFCの強調)。

CAFCは、アボットがそのような矛盾した供述をUSPTOの審査官に差し控えたことは、USPTOに対する出願人の誠実義務の甚だしい違反であると認定した。すなわち、「重要でないとの理由で、審査官にEPOでの供述、USPTOに対するアボットの説明と全く正反対の供述を与えないことは、開示義務を骨抜きにする。更に、もし仮に、実際そうではないが、これが結審した事件であると見なされたら、我々は、開示義務は問題となっている資料が出願人によって差し控えられるのではなく、むしろ審査官に提出されるべきであることを要求していると繰り返し強調する」としたのである。

CAFCは更に、欺く意図があったとした地方裁判所の判決を支持する実質的な証拠を認め、よって、アボットの特許権は不正行為のために行使不可能であるとする地方裁判所の判決を支持した。

この事件は、様々な法域においてなされる供述がお互いに一致するようにするため、同じまたは類似する主題に関連する特許権の世界的な審査における協調の重要さを明らかにした。この事件は更に、審査における米国審査官に対する完全な資料情報開示の重要性を強調している。

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