1. トップページ
  2. 米国連邦裁判所(CAFC)判決
  3. 2010年
  4. 1. Koninklijke Philips Electronics N.V. 対 Cardiac Science Operating Co.事件

月刊The Lawyers 2010年5月号(第127回)

1. Koninklijke Philips Electronics N.V. 対
Cardiac Science Operating Co.事件

No. 2009-1241 (January 5, 2010)

- インターフェアレンスにおけるサポート要件の判断基準 -

フィリップス事件は、改良された除細動器に関する発明の優先性を判断するインターフェアレンスの手続に関するものである。除細動器は、心不全の治療のために心臓に対して電気パルスを供給する機器である。争点の発明は、単に何らかの除細動パルスを供給するということではなく、むしろ、「インピーダンスが補償された除細動パルス」を供給することに関係していた。

フィリップス(Koninklijke Philips Electronics N.V.)は、「インピーダンスが補償された」除細動パルスを供給可能な除細動器をクレームした特許を所有していた。この特許は(1)電気パルスを供給して患者の胸郭(心臓)組織の電気的インピーダンスを補償する能力を有するだけでなく、(2)電気ショックを供給するためにオペレータが選択可能なさまざまなエネルギーレベルを供給する能力をも有するインピーダンス補償機能を持つキャパシタセットに関係していた。

カーディアック(Cardiac Science Operating Co.)は、フィリップスの特許からコピーしたクレームを含んだ特許出願を行い、先発明であると主張して、インターフェアレンスの手続を開始した。

インターフェアレンスにおいて、フィリップスは、カーディアックの出願には、米国特許法第112条第1項に従った、コピークレームに対する明細書の十分なサポート記載がないと主張した。より具体的には、フィリップスは、カーディアックの出願は単に「患者のインピーダンスのみに基づいてキャパシタを構成すること」を開示しているだけであり、エネルギーレベルを開示していないと主張した。

審判部は、米国特許施行規則第41.200条(b)(以下、規則第41.200条(b)に従うUSPTOのインターフェアレンスの手続は、クレームの文言は「その出願または特許に照らして最も広義の合理的な解釈」を与えることを要件としていることから、特許明細書の記載は(文言の)分析とは無関係であると結論付け、フィリップスの主張を拒絶した。

要するに、審判部は、カーディアックの出願における「インピーダンス補償」という文言の非限定的な用法は、エネルギーレベルの設定を要件としていないので、フィリップスによるその文言のより限定的な用法に基づく発明の優先性に関する立証責任はカーディアックにはない、と結論付けた。

そのような理論に基づき、審判部はカーディアックに対して発明の優先性を与えた。

フィリップスは、米国特許法第146条に従い、審判部の決定に対する再審理を求めて地方裁判所に出訴した。

地方裁判所は、クレームについていかなる解釈を行うことも略式で認めず、フィリップスがいかなる証拠を提供することも認めないで審判部の決定の全てを支持してフィリップスの事件を終結させた。地方裁判所は、審判部の、「各主張を認めなかった理由は、審判部自身の手続及び規則の適用に基づいている」というものであった。

そこで、フィリップスはCAFCに控訴した。フィリップスは、自身の特許明細書の記載は「インピーダンス補償」という文言を患者のインピーダンスと所望のエネルギーレベルの両方を含むように定義しているのに対し、カーディアックの特許明細書は所望のエネルギーレベルを開示していないというものであった。

フィリップスは、インターフェアレンスにおいてクレームの文言を常に広く解釈するという規則第41,200条(b)の要求は、明らかに判例と矛盾していると主張した。その判例とは、特許出願人によって発行済み特許からコピーされたクレームに対する明細書のサポートは、元の開示(発行済み特許)との関係で評価しなければならないとするものである。

CAFCはフィリップスの主張を認め、CAFCの判例である Agilent Technologies, Inc. 対 Affymetrix, Inc., 567 F.3d 1366 (Fed. Cir. 2009) 及び In re Spina, 975 F.2d 854 (Fed. Cir. 1992)を引用した。これらの判例は、インターフェアレンスの手続において、明細書の記載要件と有効性の要件とを区別するものである。

CAFCは、「インターフェアレンスにおいて当事者がインターフェアレンスのカウント、つまりコピークレームのための明細書のサポートに異議を唱えた場合、元の開示が関係するクレームの文言の意味を決める」とした(Agilent, 567 F.3d at 1375(CAFCによる強調付加))。

一方ではそれとは対照的に、「しかしながら、当事者が米国特許法第102条、103条」に基づいてクレームの有効性に異議を唱えた場合、CAFC及び審判部はそのクレームが記載されている明細書を考慮してそのクレームを解釈しなければならない」とした(同判決)。

CAFCが明確に指摘したことは、「我々は地方裁判所及び審判部に対して次の事実を指摘する。即ち、PTOは判例を差し置いて実質的な規則制定を行う権限はないのであるから、インターフェアレンスの手続において当事者が他者の明細書に異議を唱えた場合、地方裁判所及び審判部は規則第41.200条(b)ではなく判例に従わなければならない」。

  1. トップページ
  2. 米国連邦裁判所(CAFC)判決
  3. 2010年
  4. 1. Koninklijke Philips Electronics N.V. 対 Cardiac Science Operating Co.事件

ページ上部へ