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月刊The Lawyers 2010年4月号(第126回)

3. Wyeth & Elan PharmaInt’l Ltd. 対 Kappos事件

No. 2009-1120 (January 7, 2010)

- 審査手続きの遅延を調整する場合の、調整日数の計算方法を判断した事件 -

米国特許庁(以下、PTO)は、米国特許法第154条(b)に基づいて、PTOの審査手続きの遅延を原因とする特許期間の延長が、Wyeth & Elan Pharma International Ltd.(以下、ウィース)に与えられるとした地方裁判所の略式判決に対し控訴した。CAFCは地方裁判所の判決を支持した。

1999年米国発明者保護法は、PTOによる手続きのある特定の遅延に対し、特許期間の延長を保証している。その保証の1つであるA保証は、PTOが所定の審査期限を1日遅れる毎に特許期間を1日延長するというものである。

第二の保証であるB保証は、米国出願から3年以内に特許発行に至らなかった場合に3年目から1日経過につき特許期間を1日延長する。これらの制定法上の保証は、「遅延期間」の「重複」する範囲に対して、特許発行の遅延日数を超えないという制約を受けている。

この事件の争点は、A、B保証に基づく遅延日数の計算における「遅延期間」および「重複」に対するPTOの解釈に関するものである。

PTOの解釈では、B保証に関する「遅延期間」は、出願日から3年目からではなく、出願日から始まっている。この解釈では、A保証に基づく遅延は、B保証に基づく遅延との「重複」を生じる。その結果、PTOの計算では、A保証またはB保証に基づく遅延のどちらか長い方が加算されるが、2つの保証による遅延が合算されることはない。

ウィースは、自社の米国特許第7,179,892号(892特許)および第7,179,819号(819特許)の、特許調整日数の追加をPTOに指令する判決を求めて、地方裁判所に提訴した。

ウィースは、PTOの計算は、892特許および819特許に適用される特許調整期間を少なく計算していたと主張した。ウィースの主張では、B保証に関する「遅延期間」は、出願日からではなく、出願日から3年後から始まる。この解釈は、A保証とB保証との「重複」は、出願日から3年後から発生することを意味する。

実例として、例えば892特許では、PTOはA保証による遅延を610日と計算し、そのうち51日が出願日から3年目以降に生じたものであると計算した。B保証の遅延日数は345日であり、出願人側の理由による遅延は148日である。AまたはB保証のどちらか長い方を適用する方法を用いて、PTOは、A保証の遅延日数610日から、出願人遅延日数の148日を差し引いた462日を調整日数として認定した。

ウィースによれば、A保証の遅延日数610日に、B保証の遅延日数345日を足し、重複する51日を差し引き、さらに出願人遅延日数の148日を差し引いた、756日が合計調整日数となる。

地方裁判所はウィースの解釈に同意し、ウィースの主張を認める略式判決を下した。控訴審において、CAFCは、判決文の冒頭において、制定法上の文言は曖昧ではないと述べた。

CAFCは、制定法の文言は、本件を支配し、PTOの解釈に従うべきであると判示し、A保証における「遅延期間」という文言を、PTOが規定された期限までにアクションを発行しなかった時点から始まり、PTOがアクションを起こした時点で終了する、と解釈した。

B保証は、出願の3年後から始まり、出願が特許として発行された時点で終了する、と解釈した。これらの解釈から、CAFCは、出願から3年以内にA保証とB保証に基づく遅延の間には「重複」は無い、と結論付けた。従って、CAFCは、PTOとは相違する解釈は制定法に調和しないと述べた。

PTOは、A保証に基づく遅延は、B保証に基づく遅延を導くものであり、結果として二重に重複期間をカウントするものである、と主張して抗弁した。

PTOの主張を審理する上で、CAFCは、PTOの解釈と制定法の文言の両方共に、「類似した状況下の特許権者に対するいくらか公平性を欠いた扱い」をする可能性を認識した。しかしながら、CAFC自身の役割は、制定法の不公平さを修正することではなく、制定法を行使することにある、と述べた。

ウィース事件のCAFC判決は、PTOに起因する審査期間の遅延によって与えられる特許期間調整日数を理解する上で重要である。ウィース事件は、米国特許法第154条(b)に基づく特許期間調整が特許権者に更に付与されることを明らかにした。最近、特許発行された権利者は、更に追加の特許期間が付与されるかどうかを直ちに再考すべきである。

2010年1月28日、PTOは、2010年3月2日から遡る180日以内に付与される特許に対し、特許期間調整の暫定的な訂正申請手続きを発表した。

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