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月刊The Lawyers 2010年4月号(第126回)

1. 任天堂株式会社事件

Misc. No. 914 (December 17, 2009)

- テキサス州東部地裁からの裁判地の移管が認められるか否かを判断した事件 -

CAFCは、任天堂株式会社及び Nintendo of America Inc.(以下、まとめて任天堂)による職務執行令状を求める申立を認め、テキサス州東部地方裁判所からワシントン州西部地方裁判所への裁判地の移管を命じた。

モティヴァ(Motiva LLC)は、任天堂Wiiのゲームシステムが、人間動作計測システムに関するモティヴァの米国特許第7,292,151号を侵害していると主張し、テキサス州東部地方裁判所において任天堂に対し訴えを起こした。

任天堂は、連邦民事訴訟法第1404条a項の下、裁判地をワシントン州西部地区へと移管するよう申し立て、証拠はそもそもワシントンか日本のどちらかにあり、4名の証人はワシントン在住であるため、ワシントンがはるかに便利な裁判地であると主張した。

加えて、3名の証人は日本、1名はニューヨーク、1名はオハイオ在住であり、テキサスに居住する者はいなかった。任天堂はさらに、当事者のどちらもテキサスにおいて法人格を取得しておらず、またテキサスにオフィスがなく、テキサスに証拠は存在しないと主張した。

モティヴァは、証人と証拠の不在に関らず、テキサスは適切な裁判地であると主張し、その申立に反対した。地方裁判所は、任天堂の移管の申立を拒否した。

控訴審において、CAFCは裁判地移管の申立は、現在の裁判地よりも移管後の裁判地が「明らかに便利である」ことを示した上で認められるべきであると述べた。

第5巡回区の判例を適用し、CAFCは裁判地移管の申立に判決を下す上で、便利でない法廷(forum non convenience)を判断するために、「公的」と「私的」利害要因を分析し、判決において、参加予定の証人の出廷に係る費用と、証拠源へのアクセスへの容易さに関する私的利害要因に注目した。

CAFCはまず、利便性と証人の出廷に係る費用は重要な要因であると言及した。現行の基準のもとでは、証人の不便さは100マイルを越える距離と直接的な関連を持って増加する。この基準を適用し、CAFCは6名の確認されている国内の証人は、テキサスへ向かう場合にはワシントンと比べて、平均して700マイル多く移動しなくてはならないと認定した。

CAFCはまた、4名の日本人の証人は、テキサスへ向かう場合にはワシントンと比べて、各々1700マイル多く移動しなくてはならないと述べた。これらの事実について、CAFCはこの要因は明らかに移管に対し有利に働くと結論づけ、この要因がほんのわずかしか有利に働かないとした地方裁判所の判決の誤りを認めた。

証拠源へのアクセスの容易さに関して、CAFCは、特許権侵害訴訟の証拠のほとんどは、特許権者と対立する訴えられた侵害者にほとんど関係し、任天堂は関連のある書類のほとんどが日本かワシントンのどちらかにあると地方裁判所に報告した。

しかしながら、地方裁判所は関連のある証拠は日本とワシントンにある任天堂の大きなオフィスとカリフォルニアとニューヨークにある小さなオフィスに跨って存在していると想定しており、テキサス州東部がこの証拠のために中心的な位置としての役割を果たしうると述べた。

控訴審において、CAFCは、証拠のほとんどは日本かワシントンに存在しテキサスには証拠がひとつもなかったため、この要因は移管に有利な要因であり非常に重要視されるとし、異議を唱えた。

CAFCは更に、地方裁判所は原告の裁判地の選択を重要視しすぎると言及し、原告の裁判地の選択は移管の分析において、ひとつの要因として扱われるべきではないとする自身の考えを表明した。

むしろ、原告の裁判地の選択は、移管後の裁判地が明らかにより便利な裁判地であることを示さなくてはならない義務を構成する。原告の裁判地の選択に対し重大な敬意を支払うことで、地方裁判所は誤った方法論を応用した。

任天堂事件におけるCAFCの判決は、裁判地が争点となっているすべての事件に関連する。CAFCは、適切な移管の分析は、裁判地がどこか他のところに存在する証拠と証人のための中心的な位置としての役割を果たす可能性ではなく、証拠と証人の実際の所在と係りがある利便性を考慮に入れることを明らかにしたのである。

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