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月刊The Lawyers 2010年3月号(第125回)

3. Intellectual Science and Tech., Inc. 対
Sony Electronics, Inc.事件

No. 2009-1142 (December 15, 2009)

- ミーンズ・プラス・ファンクションクレームの解釈における専門家の証言について -

インテレクチュアル・サイエンス(Intellectual Science and Technology, Inc.)は、被告であるソニー(Sony Electronics, Inc.)、US JVC Corporation, JVC Americas Corporation 及び Panasonic Corporation of North Americaを勝訴させて米国特許第5,748,575号(575特許)を非侵害とする略式判決を認めたミシガン州東地区地方裁判所の判決(order)に対して控訴した。控訴審の係属中に、インテレクチュアル・サイエンスは、ソニー以外の被告とは和解した。

575特許は、光ディスクを読み込むためのマルチタスク機能を有する情報処理装置に関する。575特許は、とりわけ、「データ送信手段」をクレームしている。地方裁判所は次のように解釈し、当事者たちは異議を唱えなかった。「データ送信手段」はミーンズ・プラス・ファンクション形式の限定であり、少なくとも4つのエレメント、即ち、「高速制御バス」、「インテリジェント時分割マルチプレクサ(ITDM)」、「広帯域ホストインタフェースバス」、及び「リードオンリーメモリ及びランダムアクセスメモリ(ROM/RAM)」を含む。控訴審の焦点は、クレームされた「データ送信手段」と、ソニーの侵害被疑デバイスである2つのモデルのCDレコーダとの比較にあった。

CAFCは、侵害被疑デバイスにおいて関連する構造がクレーム中で列挙されたものと同一の機能を実行し、且つ、その構造が明細書中の対応する構造と同一または均等である場合には、ミーンズ・プラス・ファンクションのクレーム用語は侵害被疑デバイスを文言上カバーすると考えた。Welker Bearing Co. 対 PHD, Inc.事件, 550 F.3d 1090, 1099 (Fed. Cir. 2008)。

略式判決の基準を満足するためには、特許権者側の専門家は、侵害の主張に関する事実に即した根拠を十分詳細に説明し、裁判所が採用するクレーム解釈の下で侵害被疑製品の特徴が侵害の認定をサポートするであろうと、相手方に味方した場合に導き出されるあらゆる合理的な推論を考慮しても裁判所が確信できるようにしなければならない。Arthur A. Collins, Inc. 対 N. Telecom, Ltd.事件, 216 F.3d 1042, 1047-48 (Fed. Cir. 2000)。

インテレクチュアル・サイエンスは、ソニーのデバイスの具体的な構造を特定するのではなく、ソニーの侵害被疑デバイスにあるエレメントが「既製の(off-the-shelf)」コンポーネントであるという意見を盛り込んだ専門家の報告書を提示した。

インテレクチュアル・サイエンスは、専門家の報告書が少なくとも、ソニーのデバイスにおいてITDMとして機能する構造を特定することはしていると主張した。報告書は、ソニーのデバイスの概略図においてマルチプレクサを特定していた。

専門家の報告書は、侵害被疑デバイスの構造が「クレームされた『データ送信手段』と同一の機能(即ち、ホストコンピュータへの送信)を、同一のやり方で(即ち、時分割多重構造で)実行することにより、同一の結果(即ち、送信された情報のセット)を達成している」という陳述も盛り込んでいた。

インテレクチュアル・サイエンスの専門家によって特定されたマルチプレクサがITDMであると結論付けるためには、専門家が「最低でも具体的な特徴(及び侵害被疑デバイスの機能)に関する何らかの説明を提供する必要があった」、とCAFCは認定した。

CAFCは、専門家の報告書が、デバイスの何らかの構造がITDMであるということを明確には述べていないと認定した。CAFCはまた、インテレクチュアル・サイエンスの代理人の主張が専門家の陳述を一層不明確にしていると認定した。例えば、インテレクチュアル・サイエンスの代理人は、専門家が「シリアル入力バスが各光ドライブからITDMへの情報を受信する」と述べることによって「ホストインタフェースバス」を特定していると主張した。

しかしながら、専門家の報告書は、「シリアル入力バス」が、クレームで必要とされているようにホストとインタフェースするのではなく、「ITDM」とインタフェースするということを示している。

CAFCは、インテレクチュアル・サイエンスの専門家の陳述はクレームされた「データ送信手段」のエレメントを十分には特定していないと結論付け、記録(record)が、重要な事実に関する本当の争点を取り上げるのには十分ではない、侵害に関する不十分な結論を超えるものを開示してはいないと認定した。また、CAFCは、地方裁判所がソニーを勝訴させて非侵害の略式判決を認めたことを支持した。

インテレクチュアル・サイエンスの事件におけるCAFC判決は、特定の機能を実行する複数のエレメントを必要とするミーンズ・プラス・ファンクション形式の限定を伴う特許権の侵害を申し立てることを検討する際に、教訓となる。

インテレクチュアル・サイエンスの事件は、補佐する専門家の報告書が、最低でも、クレームされたエレメントを侵害被疑デバイスにおいて特定し、ミーンズ・プラス・ファンクション形式の限定の場合には、侵害被疑デバイスにおけるこれらのエレメントの特徴及び機能に関する説明を提供しなければならないということを、明確にした。

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