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月刊The Lawyers 2010年3月号(第125回)

2. Hewlett Packard Co. 対 Acceleron LLC.事件

No. 2009-1283 (December 4, 2009)

- 特許に関する確認の訴えを提起できる要件である法律上の争いの有無について -

ヒューレット・パッカード (Hewlett Packard Company以下、HP)は、確認判決の裁判管轄権がないとするアクセレロン(Acceleron LLC)の主張を認め、HPの申し立てを却下したデラウェア地区地方裁判所の判決に対して控訴した。CAFCは、HPにはデラウェア州における確認判決の裁判管轄権があったと認定し、地裁の判決を破棄した。

アクセレロンはデラウェア州に法人格を有し、テキサス州タイラー(テキサス州東部)に本部を置く特許権保有会社である。2007年9月14日、アクセレロンの社長はHPのゼネラルカウンセル宛に手紙を送った。

その手紙において、とりわけ、(i)アクセレロンの米国特許第6,948,021号(以下021特許)について言及し、(ii)021特許はHPのブレードサーバーに関連していると主張し、(iii)アクセレロンは021特許についてHPと話し合いの機会を持ちたいと述べた。

そのレターにおいて更に、HPのゼネラルカウンセルに対し、「アクセレロンが、HPの継続中、あるいは計画中の活動に対する権利を主張した、あるいは、他の021特許に関する現実の事件もしくは議論を起こしたという主張を含むがそれに限定されない」両社間で交わされるいかなる情報も一切訴訟目的に使用しないことに同意するよう求めていた。

HPの上級訴訟弁護士は、2007年10月1日付の応答レターにおいて、HPが021特許を評価したと述べ、アクセレロンがHPに対し訴訟を起こさないことに同意するならば、HPは確認判決の申立をしないという、120日間の保持提案をした。

4日後、アクセレロンの社長は回答レターにおいて、HPには確認訴訟を提起する根拠がないと述べて、HPに対しアクセレロンの前回のレターに同意することを求めた。2007年10月17日、HPはアクセレロンを相手に確認判決の申立を地方裁判所に行なった。

地方裁判所は、「侵害の指摘、クレーム、クレームチャート、過去の訴答あるいは訴訟履歴の指摘、及び他のライセンシーの特定がないこと」と、「アクセレロンのビジネス形態が競合のない特許保有専門会社であること」は、確認訴訟の裁判管轄権がないことを評価するものであると認定し、アクセレロンの裁判管轄権の欠如を理由とする棄却の申立を認めた。

CAFCは、「全ての状況において、もし主張の事実が確認判決を保証するために、相反する法的利害関係にある当事者間で、十分に緊急かつ現実的な、実質的争訟があることを示した場合のみ」、裁判所は確認判決の事物管轄権を有すると述べた。MedImmune, Inc. 対 Genentech, Inc.事件、549 U.S. 118, 127(2007)。

特許事件において、「特許権者が、他方の当事者のある特定の継続中、もしくは計画中の活動に対して特許権を主張し、その当事者が、ライセンス無しにその活動に従事する権利があると主張した場合に」確認判決の事物管轄権がある、と述べた。SanDisk Corp. 対 STMicroelecronics, Inc.事件、480 F.3d 1372, 1377 (Fed. Cir. 2007)。

HPは、特許権者から他方の当事者に対する、その特許と他方の当事者の製品一覧を示すレターを、確認判決の事物管轄権が成立する基準とすべきであると主張した。アクセレロンは、HPに対するレターが、特許侵害で提訴するという脅威を与える文言でも、ライセンスを要求する文言でもなかったことから、確認判決の事物管轄権を生ずるような裁判に付せられるべき事件も議論もない、と主張した。

CAFCは、特許権者から他方の当事者に対する、その特許と他方の当事者の製品一覧を示すレター自体が、確認判決の事物管轄権が成立する基準であるべきとしたHPの主張を退けた。しかしながら、CAFCは、確認判決の事物管轄権が成立することを示す他の要素を発見した。

CAFCは、HPに対し「提訴しない」ことを要求したアクセレロンのレターが、機密保持契約を提案しておらず、HPによる120日間の保持提案、反対の提案、もしくは提訴しないという何らかの確約の提案を受け入れてもおらず、021特許がHPの製品一覧に「関連している」ことを主張したものであることを指摘した。

更にCAFCは、アクセレロンは単なるライセンス企業であり、権利行使無しには、特許からは何の利益も得られない企業である、と述べた。本裁判において、確認判決の事物管轄権が存在することを認定するにあたって、CAFCは、「客観的かつ全体的に見て、アクセレロンがHPに対して2回にわたり直接的に連絡をとるという積極的措置を講じており、HPのブレードサーバーに対する021特許に基づく権利を暗黙に主張しており、HPがこれを拒否したことを提出された事実が示していた」、と述べた。

ヒューレット・パッカード事件のCAFC判決は、特許事件における確認判決の事物管轄権の基準を規定している点で興味深い。判決文において、CAFCは、ヒューレット・パッカード事件が、過去の確認判決事件から明らかにシフトしたことを認めている。このシフトは、特許権者からのレターを受け取る側にとって、そのレターが訴訟の脅威を明確に述べていない場合でも、そのような特許権者に対して確認判決を提起することを容易にするものである。

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