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月刊The Lawyers 2010年2月号(第124回)

2. Imation Corp. 対
Koninklijke Philips Electronics N.V. et al.
事件

Nos. 2008-1208, -1209 (November 3, 2009)

- ライセンス契約内容と新たな組織に対するその適用の是非 -

イメーション(Imation Corporation)とモーザー・ベア・インディア(Moser Bear India Limited、控訴者)は、Koninklijke Philips Electronics, N.V.と被控訴者のPhilips Electronics North America Corporation(以下、まとめてフィリップス)の主張を認める判決を下したミネソタ州地区の地方裁判所の部分終局判決に対してCAFCに控訴した。

フィリップスは、1995年に光学情報記憶装置及び光磁気情報記憶装置並びに検索技術について3Mと特許のクロスライセンス契約を結んだ。

その契約は、3Mが支払う既存のライセンスに関する現行のロイヤリティ・レートを修正し、また、生産、使用、輸入、販売の申出及びライセンス特許の存続期間中に相手当事者により特許された技術を組み込む他の製品の販売に関し、ロイヤリティ・フリーの一時払いであり、非排他的であるクロスライセンスを契約の各当事者に付与するという内容であった。1996年に、3Mはイメーションを分離新設し、この契約はイメーションとフィリップスの間で継続した。

契約の第2条において、各当事者は、相手当事者及びその子会社に対して製品及び方法についてのライセンスを付与した。

この事件はイメーションのライセンスの範囲に関し、このライセンスのそれぞれは関連部分において、フィリップスは「[イメーション]及びその子会社に対して、非排他的であり、不可分であり、譲渡不能であり、取消不能であり、世界規模であり、且つロイヤリティ・フリーであるライセンスをフィリップス・ライセンス特許のもとで付与することに合意し、契約によって付与する」という内容であった。

この事件は契約で定義された用語に注目した。契約の第2条第12項では、「ライセンス特許」の範囲について3部から成る定義を明確にした。この定義に含まれる特許は、(1)付与側当事者またはその子会社が契約の範囲内でライセンスを付与する権利を現在または契約後に取得するように付与側またはその子会社により所有または管理され、(2)光学情報記憶装置及び光磁気情報記憶装置並びに検索技術に関し、(3)契約の満了日[2000年3月1日]にまたは満了日前の出願日を有するまたは優先日を主張する、若しくは優先日を主張する権利を有するまたは有していたもの(強調を付加した)。

第12項の次の第13項は「子会社」が「当事者が現在または契約後に50パーセント(50%)超の所有権を有する任意の形態の事業体(強調を付加した)」であると定義した。

2000年3月1日の契約満了日後に、イメーションは少なくとも2社の追加の子会社であるグローバル・データ・メディア(Global Data Media以下、GDM)及びメモレックス(Memorex)を設立または取得した。

イメーションは、とりわけGDM及びメモレックスもこの契約の下でライセンス付与された子会社であるという確認を求めて、フィリップスに対して確認判決訴訟を起こした。

地方裁判所は、(1)この契約の満了条項は満了日前にライセンスを取得した子会社のみにライセンス付与範囲を制限しており、(2)GDM及びメモレックスは、契約満了日前の「子会社」という定義を満たさないため、契約の下では子会社としての資格を有していないという判決を下した。

この契約によるライセンス付与は一つの一体のライセンス付与であるのか、地方裁判所の認定のように、長期にわたって複数のライセンスを付与する契約なのかが控訴審の争点であった。契約の第2条は、「付与することに合意し、契約によって付与する」という文言を有していた。CAFCは、契約が州法に従って解釈されると指摘した。本事件ではニューヨーク州法であった。

ニューヨーク裁判所がこのような文言を直接取り扱った事件はなかったが、連邦裁判所が取り扱ったことがあった。「付与することに合意し、この契約によって付与する」という文言は将来の発明を現時点で処分するように解釈できので、発明の譲渡・処分は前もって可能である。

発明が誕生した時点でのさらなる行為は必要とされず、移転の効果は法律(契約)の適用で発生する。この事件において、CAFCは、満了日後に出願された特許が契約の満了日以前の優先権を主張している限り、この特許は「ライセンス特許」に含まれると認定した。

さらに、CAFCは、GDM及びメモレックスが満了日後に誕生したために両社が「子会社」としての資格を有しないという地方裁判所の認定を破棄した。CAFCは「現在またはこの契約後」という簡単な文言は将来のある時点において誕生し得るものを含むと認定したのである。

当事者は「現在」という文言を支持して「現在または今後」を省略することを選択でき、または当事者は契約時点で存在していた関連子会社を単にリストアップできた。

CAFCは、契約解釈のことでは、当事者が明示的に含めることを怠っていた例えば時間限定のような事柄を黙示的に記載しているものとしてこの合意を解釈することが極めて不合理であると指摘した。さらに、12項、3部から成る「ライセンス特許」の定義は、後になって出願または取得された特許をライセンスが包含するようになることを両当事者が望んでいることを示している。なぜならば、前述の定義の(3)だけがこの契約の満了日についての言及を含むからである。

この事件におけるCAFCの判決はライセンス論争に関与する事件に有益である。ライセンスは州法に従って解釈される契約である。そのライセンス契約が「付与することに合意し、この契約によって付与する」という文言を含む場合に、当事者は、契約の運用によりいかなる将来の行為も要求されることなく、将来の発明についてライセンスが付与されるかもしれないことを警戒すべきである。

さらに、そして特に、文言が「現在及びこの契約後に」存在する組織に言及する場合、ライセンス契約は契約の有効日後に設立された組織に拡張して解釈されるかもしれない。

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