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月刊The Lawyers 2010年1月号(第123回)

1. Lister事件

No. 2009-1060 (September 22, 2009)

- 特許法第102条(b)に基づく先行引例の認定基準について取り扱った事件 -

最近のこの事件においてCAFCは、リスター(Dr. Richard S. Lister)の特許出願における、ある複数のクレームに対する特許庁審査官の拒絶を覆した。特許庁審査官は、リスターのクレームを新規性の欠如を理由に拒絶し、審判部もその拒絶を維持した。

しかしながら、CAFCは、リスターのクレームは、基準日の時点では公的にアクセス可能であったことを示す十分な証拠がないとして、審判部の審決を破棄し、特許庁に差し戻した。

リスターの発明は、趣味でゴルフを楽しむ人が、指定されたハザードエリアまたはグリーン以外から、個々のショットにおいてボールをティーアップすることに関するゴルフの代替プレイ方法に関するものである。リスターはその発明を「ゴルフの最新ハンディキャップ方法」と名づけていた。

最初に、リスターはこの件で著作権保護を申請し、1994年7月18日付で登録証を受け取った。その後リスターは、著作権より特許を取得すべきとのアドバイスを受け、1996年8月5日、米国特許庁(PTO)に特許出願した。

数回の拒絶理由通知と補正書提出の後、特許審査官は、発明日以前の公知を拒絶理由とする特許法第102条(a)ならびに、1年以上の前の刊行物記載を拒絶理由とする102条(b)に基づき、リスターの著作権登録の申請書により新規性なしとして、残された5つのクレーム(クレーム21〜25)を拒絶した。

特許審査官は、リスターの著作権登録の申請書は、関心のある閲覧者であれば、著作権局の目録をタイトルで検索することによって見つけることができると思われることを理由に、第102条(b)の定義する刊行物とみなされると理由付けた。

リスターは審判部に審判を請求し、審判部は第102条(b)は、出願日ではなく出願人の発明日以前に刊行物に記載された発明に対する特許性の障害となるものであると述べて、第102条(a)の拒絶を取り消した。審判部は、発明する以前に発明を開示することはできないと判断したが、その一方で第102条(b)の拒絶は維持した。これに対し、リスターはCAFCへ控訴した。

著作権登録の申請書が公的にアクセス可能であるか否かを考慮する上で、CAFCはまず、申請書が閲覧可能であったかどうかについて審理した。

リスターは、申請書がワシントンDCの連邦議会図書館に保管されており、図書館の「煩雑な手続き」が煩わしいことを理由に、申請書が公的にアクセス可能ではないと主張した。さらに、連邦議会図書館にあるその申請書は、申請に応じて公的に閲覧可能であるが、閲覧者は限られた特別な状況がない限り、コピーすることができないと付け加えた。

CAFCは、一般大衆の誰でも連邦議会図書館に文書の閲覧をすることが可能であり、閲覧のために相当数の工程を踏む必要があるからと言って、アクセス性が悪いとは言えないことを強調して、リスターの主張を却下した。

リスターはさらに、連邦議会図書館には閲覧申請された記録がなかったことから、申請書は公的にアクセス可能ではなかったと主張した。

しかし、CAFCは、公的にアクセス可能であることは、刊行物が実際に閲覧されたことを要件としていないと述べて、この主張も却下した。むしろ、アクセス可能であることは、一般大衆の誰でも欲しいときに情報を得ることができるかどうかであると述べた。

リスターの申請書が著作権局において閲覧可能であったと結論付けた後で、CAFCは次に、誰でも基準日以前にその申請書の存在を知ることができたかどうかを判断するために、索引が十分であったかどうかに注目した。

まずリスターは、連邦議会図書館のカタログ及びデータベースは、関心を持つ検索者がその申請書に辿り着くのに十分に検索可能ではなかったと主張した。

これに対し、CAFCは、主題によって検索可能か否かが重要な要素であると強調した。両者共、索引が著者とタイトルの最初の単語からの検索だけを可能とするならば、その索引は不十分であるということには同意した。しかし、索引を「ゴルフ」と「ハンディキャップ」という単語で検索することができたならば、その索引が十分であるかどうかについては争点となった。

リスターは、そのような検索は、非常に数多くの検索結果をヒットするが、関連性のある検索結果を提示しないと主張した。さらにリスターは、これらのキーワードはクレーム中で使用されておらず、関心を持った検索者であれば、実際には「ティー」あるいは「ボール」のような他の単語を使用したであろうから、これらは検索用語ではないと主張した。

CAFCは、適切な検索照会とは、その主題や分野の当業者である関心を持つ人物が、合理的な努力を行った上で、争点の先行引例を見つけることが可能か否かであると述べて、リスターの主張は厳しすぎるとして拒絶した。

こうしてCAFCは、「ゴルフ」と「ハンディキャップ」という文言の組み合わせは、合理的な努力をする検索者であれば使用するであろうと結論付け、リスターの申請書は、これらの索引からアクセス可能になった日から、公的にアクセス可能であったと認定した。

次にリスターは、基準日以前にこれらの索引に申請書が実際にリストされたという証拠がないと主張した。

CAFCは記録を再検討したが、申請書の情報が索引会社によって最初に入手された時期や、最初に索引に加えられた時期を示す証拠は見つからなかった。

CAFCはさらに、連邦議会図書館または索引会社の目録作成及び納書における一般的な慣習を立証する証拠がないと述べた。したがって、このような証拠がないことから、CAFCは、申請書が基準日以前に公的にアクセス可能であったことを示す根拠がないと結論付けた。

こうして、CAFCは、審判部が審査官による第102条(b)の拒絶を支持したことは誤りであると認定し、審判部の決定を破棄して、審査を差し戻した。

リスター事件でのCAFCの判決は、第102条(b)に基づき特許の有効性に異を唱える拒絶理由に関連するものである。この事件は、先行技術が基準日以前に公的にアクセス可能であったということを主張する、あるいは否定する証拠を明らかにした。このような形の事実の認定なしに、単に第102条(b)の下で先行技術によって特許が無効であると主張することはできない。

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