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月刊The Lawyers 2009年11月号(第121回)

1. Cardiac Pacemakers, Inc., et al. 対
St. Jude Medical, Inc., et al.事件

Nos. 2007-1296, -1347 (August 19, 2009)

- 米国特許法第271条(f)の方法クレームへの適用の可否 -

カルディアック・ペースメーカーおよびその他の会社(Cardiac Pacemakers, Inc., Guidant Sales Corp., Mirowski Family ventures, LLC 及び Anna Mirowski 以下まとめてカルディアック)は、命にかかわる可能性のある異常な心拍リズムを検出し、矯正する小型の装置である埋め込み型心臓除細動器(ICD)に関するカルディアックの特許権を侵害したとして、セント・ジュードほか一社(St. Jude Medical, Inc.及びPacesetter, Inc.以下まとめてセント・ジュード)に対し訴訟を起こした。

インディアナ州南部地方裁判所の陪審員は、米国特許第4,316,472号(以下、472特許)の侵害に対する特許使用料としてカルディアックに1億4000万ドルの損害賠償を認める一方、米国特許第4,407,288号(以下、288特許)は有効であるが、侵害はないとする一審の評決を行った。

複数のトライアル後の申し立て、控訴及び差し戻しを含む複雑で長期化した審理手続は、最終的に、法律の問題として472特許の無効と侵害なしとするセント・ジュードの判断を認め、その結果1億4000万ドルの損害賠償は無効となり、288特許の特許権侵害に関するカルディアックの略式判決の申し立てを認め、288特許の新規性(無効)に関するセント・ジュードの略式判決の申し立てを認める結果をもたらした。CAFCでの控訴審における争点は288特許に関する判決のみであった。

CAFCはまず、特許無効と不公正行為というセント・ジュードの主張に取りかかった。CAFCはカルディアックの主張を認め、差し戻し審での地方裁判所における新規性は適切でなかったとした。

CAFCは差し戻した先のCAFC判決を再検討し、その先の判決においてCAFCは特許を有効であるとした陪審員評決を明確に復活させており、新たな裁判は侵害の査定と損害賠償額の計算に限定されるべきであったと説明した。

先の判決がクレーム文言のひとつの解釈を変更していたが、CAFCは、その変更は陪審員による特許有効の判断に影響を与えなかったとした。結果として、CAFCは地方裁判所の特許無効の略式判決を破棄し、再び288特許は有効であるとの陪審評決を復活させた。

不公正行為に関して、CAFCはセント・ジュードが裁判で主張を訴追しない、CAFCに控訴しない、またはそのような答弁を訴追しないことを要求しないという程度で、それらの主張を放棄したとした。

次に、CAFCは288特許においてカルディアックが方法クレームしか主張していなかったという事実に基づき、セント・ジュードが限定的な損害を主張することができるかどうか、米国特許法第271条(f)の下、カルディアックがセント・ジュードのICDの海外販売に対する損害を回復することができるかどうかの問題に取りかかった。

第271条(f)は、特許発明の「要部」が海外での組立てのために「供給」される場合の特許権侵害の訴訟原因を規定している。CAFCは真っ先に法律の文言、特に「要部」と「供給」という単語に注目した。

CAFCは方法ないしプロセスクレームは、処理のステップという形で「要部」があると認めたが、方法を実行するための装置はその方法の「要部」であるとするカルディアックの主張は却下した。

結果として、第271条(f)をプロセスクレームに適用するためには、特許権者は形のない処理のステップが他の国々へ「供給」されることを示さざるを得ない。

「供給」を物体の物理的移動を意味するように解釈することで、CAFCは最終的に「方法のステップを供給することは不可能であるから、第271条(f)は方法ないしプロセスクレームには適用できない」と結論付けた。

この判示の更なる裏づけとして、CAFCは第271条(f)は、権利の侵害者が組立てられていない特許製品を後に組立てるために海外に輸送することを可能にする法律の抜け穴をふさぐことを目的としており、その立法経過は「方法の特許権の保護に対する言及をほとんど完全に欠いている」と言及した。

CAFCはまた、第271条(f)を方法クレームにまで拡大適用することは、治外法権に反する推定によって禁止されているとした。「第271条(f)の下で特許された方法を保護するための議会の意向の完全なる欠如」と、Deepsouth Packing Co., Inc, 対 Laitram Corp., 406 U.S. 518 (1972)事件(特許されたエビの背わたをとる機械の組立てられていない部品を海外へ輸出した製造業者が特許権侵害の責任を負わないとした事件)を却下した議会の明確な意思がCAFCをこの結論へと導いた。

CAFCは、最高裁判所が治外法権に反する推定には国際的な範囲で法律が適用され、そのような法律の範囲は、法律のなかで具体的に述べられたところより広義であるべきではないとしたAT&T Corp. 対 Microsoft Corp., 550 U.S. 437 (2007)事件の理由付けを採用した。

実のところ、このマイクロソフト事件において、法律は「供給」が海外で製造された複製ディスクを包含するように明確には定義されていなかったので、最高裁判所はマイクロソフトの行為が第271条(f)に含まれないとする考えに賛成の立場で推定を論じた。

第271条(f)は方法やクレームされた方法を実施するために用いられる装置を包含しないとの見解を踏まえ、CAFCは第271条(f)の下で、288特許のクレーム4の特許権侵害に対してセント・ジュードは責任がないと結論付け、判決を破棄した。

ニューマン判事は反対意見を表し、CAFCの見解は制定法上の本文、立法経過、判例及び法律の目的と矛盾すると主張した。ニューマン判事の見解によると、「法律はアメリカ合衆国特許の回避を目的としていて、特許性のある係争物の特定の種類に限定されていない」という。

事実上、カルディアック・ペースメーカー事件におけるCAFCの判決は、方法クレームしか持たない特許権の輸出による損害を制限するように働くであろう。

つまり、輸出されたアイテムが特許装置の「要部」である限りは、特許権者はその要部の輸出に対する損害を回復することができるということである。

結果として、この判決は、自身の技術革新を方法クレームでしか保護できない特許を獲得しようとしている出願人にとって特別な重要性がある。

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