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月刊The Lawyers 2009年5月号(第116回)

2. Revolution Eyewear, Inc. 対
Aspex Eyewear, Inc.事件

No. 2008-1050 (February 13, 2009)

- 過去の侵害の不争契約が将来の侵害に及ぼす影響について -

この事件は、過去の侵害については訴えないとする特許権者の契約が、将来の侵害については訴訟提起可能とすることを求めた確認裁判へ与える影響に関する。CAFCの審理対象は、特許侵害訴訟を和解させるための契約であって訴えないとする契約が当該訴訟において争点となった同一構造の製品の将来における販売には及ばないかどうかであった。

2003年にRevolution Eyewear, Inc.(以下、「レボリューション」)はAspex Eyewear, Inc. 及び Nonu Ifergan(以下、まとめて「アスペックス」)に対し、磁気で取り付けられる補助眼鏡に関する米国特許第6,550,913号(以下、913特許)の特許権を侵害したと主張し、カリフォルニア州中部地区地方裁判所に訴訟を提起した。アスペックスは、913特許の非侵害、無効及び権利行使不能を主張し、反訴した。

審理前手続の終了後、レボリューションは、過去の侵害については訴えないとする契約を、裁判権の欠如及び憲法上必要とされる事件および争いがないことを理由に自身の特許侵害訴訟の棄却及びアスペックスの反訴の棄却を求める申し立てとともに提出した。アスペックスは、訴訟において争点となっているものと「同じ構造の製品を将来において販売する」ことについて、レボリューションの契約は侵害訴訟を起こす権利を失わせるものではないので、現実の争訟は存在し続けると主張し、拒否した。地方裁判所はSuper Sack Manufacturing Corp. 対 Chase Packaging Corp事件(注1)におけるそれらの判示事項を類推適用し、レボリューションの契約は現在におけるあらゆる現実の争訟を排除したと判断し、もはや請求に対する事物裁判権を持たないと認定した。

アスペックスが控訴したところ、CAFCは判決を破棄した。まず、CAFCはレボリューションの訴えないとする契約とSuper Sack事件における契約とを区別した。Super Sack事件の場合、契約は「侵害訴訟の対象であったものと同じ製品の将来における生産及び販売」に及んでいたが、レボリューションの契約は明確に「この訴訟の棄却の確定までに生産、使用、販売された活動及び製品」のみに言及されていた。

そのかわり、CAFCは状況全体の分析を行い、最近の最高裁によるMedImmune事件(注2)の判決を参照し、アスペックスの無効反訴には事件および争いが残されていると結論づけた。MedImmune事件は、事実が「全ての状況下において、法律上相反する利害関係を持つ当事者間で、確認裁判における争点の正当な理由となる十分な緊急性と現実性のある実質的な争いが存在することを示している」(注3)ときに確認訴訟は提起可能であると認定した。

CAFCは、アスペックスが侵害とされたデザインの変更を予定しておらず、その販売を継続するつもりであったために、アスペックスの活動は単なる推測ではないと認定した。CAFCは、913特許が同じ商品に適用されるため争いに関連していといえ、争いは「明確かつ具体的」であると判断した。レボリューションの意図は、もしアスペックスが過去に生産しておいた商品とともに市場に再参入してきた場合には再び訴訟を提起することであったが、これは争いが「現実かつ実質的」であることを示しており、「法律的に相反する利害関係を持つ当事者の法律関係に抵触する」問題であることを裏付けるものであった。さらにCAFCは、争いが「確定的性格の程度を通じた特定の救済」の影響を受けやすいとした。最後に、CAFCは将来の侵害に対する訴訟権を保持することにより、レボリューションは「十分な緊急性と現実性」のレベルでこの争いを維持していると認定した。すなわち、これらの認定はMedImmune事件で示された要件を満たしているため、アスペックスが確認裁判の反訴を提起することも認められた。

この事件は、訴えないとする契約において将来の活動については触れられていない場合、特許無効の確認を求めるための確認裁判の訴権を失わないことを明確にしている点で重要である。しかしながら、訴訟を提起する当事者は、そのような契約が確認裁判を単独で維持するものではなく、現実の事件および争いに対する要件が満たされなくてはならないことに注意すべきである。


(注1) 57F.3d 1054.

(注2) MedImmune, Inc.対Genentech, Inc., 549 U.S. 118 (2007)

(注3) 同判決127ページ

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