月刊The Lawyers 2009年4月号(第115回)
3. Comiskey 事件
No. 2006-1286 (January 13, 2009)
- ビジネス方法に代表される方法と法上の発明 -
この事件で、スティーブン・コミスキー(Stephen Comiskey)は、特許審判・抵触部(以下、審判部)の決定に対して控訴した。
審判部の決定は、スティーブン・コミスキーの特許出願におけるいくつかのクレームは先行技術に鑑みて自明であり特許できないという審査官による拒絶を維持するものであった。
大法廷で、CAFCは自身の2007年の判決を破棄する一方、2つの独立クレーム及びその従属クレームの大部分は再び特許法第101条に基づいて特許できないと結論付けた。そして、別の2つの独立クレーム及び残りの従属クレームについては、を特許商標庁(PTO)に差し戻し、更に検討させた。
コミスキーの特許出願09/461,742は、遺言書及び契約書を含んだある法律文書のための調停方法をクレームしている。そのクレームは、その方法を適用するに際しての機械の活用には言及していないが、出願明細書の記述は、(i)調停のための自動システム、及び(ii)コンピュータネットワークの使用を伴う強制調停システムの使用について言及している。
コミスキーの出願の拒絶を維持した審判部の審決を検討する際に、CAFCは、「事実、方針、または政府機関の専門知識について争いが無い場合に政府機関が依拠しない法的根拠」にCAFCが依拠する権利が与えられていると説明した(注1)。
CAFCは、審判部によって検討または依拠されていない拒絶について裁判所が検討することは不適切であるとした判例の存在を認めたが、この判決を狭く解釈し、政府機関が関連する事実判断を未だ行っていない状況に対してのみこの判例が当てはまると述べた(注2)。
CAFCはそれゆえ、コミスキーの出願の独立クレーム1及び32、並びに大部分の従属クレームについて、自明性の争点に立ち入らなかった。というのも、コミスキーの出願は、特許法第101条に基づいてクレームが特許できないという入り口での法的結論に達していたからである。
101条は、特許の対象についての入り口の要件を概説するものである。特許の対象が101条の要件に合致すると判断されるまでは、自明性に対する調査は行われない。
コミスキーの特許出願の独立クレーム1及び32を分析する際に、CAFCは、ビジネス方法を含む方法は特許可能であると説明した。それにも拘わらず、CAFCは、メンタルプロセスだけでは特許不可能であると強調した。
抽象的な方法でも、それが具体化され動作し、変質するものであるか、あるいは別の種類の法定発明を含む場合は、特許可能な発明であるが、アイデアそのものが完全に抽象的であり「実用的な応用例がクレームに記載されていない場合は」特許不可能であるとしたのである。
有効な特許クレームにおいて、抽象的な概念を含むものはほとんどない。CAFCは、そのようなことは次の2つの状況でのみ発生し得ると説明した。
それは、(i)方法が特定の装置に結び付けられている場合、または(ii)方法自体が「物質を別の状態または物に変化させるように動作する」場合である(注3)。
コミスキーの特許は調停のためのメンタルプロセスだけに関するものであったので、CAFCは、関連する最高裁の判例並びにCAFCの前身の裁判所の判例(注4)に基づき、コミスキーの特許は特許不可能な対象のままであると考えた。
明細書は機械の使用に対する何らかの言及を含んでいたが、CAFCは、抽象的なアイデアを特許出願の明細書において単に説明しただけでは、そのアイデアは特許可能になっていないと説明した。
次にCAFCは、コミスキーのクレーム17及び46、並びにいくつかの関連する従属クレームは、広義に解釈すれば調停システムの一部として機械の使用を必要とし得ると考えた。
CAFCはそれゆえ、101条に基づいてこれらのクレームを無効にしないで、その代わりに、クレームが法に基づく特許可能な対象を伴うか否かを検討をさせるために特許商標庁に差し戻した。
この事件は、ビジネス方法の特許性を扱っているので重要である。この事件では、ビジネス方法がメンタルプロセス以上のものを伴わない限り、ビジネス方法自体は方法として特許可能ではないと考えられた。
それゆえ、方法ベースの特許出願は、何らかの具体的な装置に具体的に結び付けられるか、または、物に物理的変質を伴うことが、要求される。
(注1) Securities & Exchange Commission 対 Chenery Corp.事件、318 U.S. 80 (1943)
(注2) 例えば、In re Margolis, 785 F.2d 1029, 1032 (Fed. Cir. 1986)
(注3) PTO Supp. Br. 4 (internal quotations omitted)
(注4) Gottschalk 対 Benson, 409 U.S. 63, 64 (1972); 及び、例えば、In re Meyer, 688 F.2d 789, 795-96 (CCPA 1982)