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月刊The Lawyers 2008年9月号(第108回)

1. Cat Tech LLC 対 TubeMaster, Inc.事件

No. 2007-1443 (May 28, 2008)

- 地方裁判所が確認訴訟を扱うための要件を判示した事件 -

CAFCは、米国特許第6,905,660号(以下、660特許)の特許権を侵害していないことを認めた地方裁判所の確認判決を維持した。この660特許はローディング装置が触媒粒子をマルチチューブ化学反応器に入れる方法に関するものである。

この事件の主要な争点は、非侵害の確認判決を求める主張について、確認訴訟法の下での地方裁判所の審理権原の有無に関係していた。第2の争点は、キャットテック社の特許の「スペーシング」エレメントを地方裁判所が正しく解釈したかというものであった。CAFCは両方の争点について地方裁判所の判決を維持した。

キャットテック社の方法は、化学反応器の上部のチューブ板を覆うように設けられた複数のプレートを使用する。

660特許は、「前記マルチチューブ反応器にロードされる最小の単一粒子よりも幅の小さい隣接プレート間のスペース」と記載している。このスペースを設ける目的は、粉塵と不完全な粒子を収集することにある。660特許は2005年6月14日に発行された。

チューブマスター社は、ローディング装置を用いて触媒を反応器のチューブに入れるための4つの構成を有している。プレート間のスペースはさまざまであり、中には触媒の固まり全体がプレート間に入り込めるほど広がっている部分もある。

チューブマスター社のローディング装置は、顧客の反応器のそれぞれの大きさに応じてカスタマイズされており、「これから遭遇するであろう全ての反応器の構成を事実上カバーする」ように設計されている。チューブマスター社は触媒をロードするのに構成3を使用した。

キャットテック社は、チューブマスター社のOLE(商標)ロード装置が660特許の特許権を侵害しているとしてチューブマスター社を訴えた。

これに対して、チューブマスター社は、この装置は特許権を侵害していないことと、660特許は無効であり特許権は行使できないことの確認を求める反訴を提起した。

キャットテック社は、訴状を修正して、特許権侵害の確認判決を求めた。

地方裁判所は争われているクレームの文言を解釈するためにヒアリングを行い、各当事者は略式判決を求める交差申し立てを提出し、まず、構成1、2、4について特許権を侵害していないことの確認判決を求めたチューブマスター社の訴えを認めた。

次に、地方裁判所は、「スペーシング」というクレーム中の「スペーシング」の文言を「粒子全体が入り込めるほど大きくないスペーシング」すると解釈し、構成3について660特許の非侵害の判決を下した。

これに対して、キャットテック社はCAFCに控訴した。

確認訴訟法によれば、裁判所が司法的判断を下す権限を有するためには、その前に、「事件」または「争訟」が存在しなければならない。MedImmune, Inc 対 Genetech, Inc. 事件(以下、メッドイミューン事件)の最高裁判決(549 U.S. 118, (2007))が出される前は、裁判所が確認判決を下す権限の存在を確認するときは2段階テストを適用していた。

第1段階は、特許権者の行為が確認判決の原告側による訴訟の「合理的懸念」を誘発するものだったかを評価するものだった。第2の段階は、確認判決の原告の行為に注目して、侵害行為を潜在的に形成する「重要な準備」が存在していたかを評価するものだった。

最高裁判所は、あまりに限定的であるとして第1の段階を拒絶し、これに代えて「争訟」の認定は「全ての状況」に基づいて行わなければならないと説明した。

この事件において、CAFCは、第2の段階は、依然として「確認判決が適切か否かを判定する際に考慮する必要がある状況の全体において重要な要素」であるという判決を下した。この事件で争点の一つとなった第2の段階は、争いが「緊急」かつ「現実」であることを要している。

第1に、緊急性の要件は、製品を製造又は使用をするための「重要な準備」を立証することである。

一般に、潜在的な侵害行為の前の時間が長ければ長いほど、事件は緊急性を失っていく。侵害行為の年月が離れている場合、確認訴訟法下における「事件」または「係争」が成立するほど緊急とは言えない。

ここで、チューブマスター社は、2つの基本的なローディング装置の設計と4つのローディング装置の構成を開発済みだった。また、チューブマスター社は、この4つの構成について、AutoCAD(登録商標)の図面も作成していた。

さらに、チューブマスター社は、構成3を用いたローディング装置の製造に成功してすでに引き渡しを行っており、構成1、2、4を用いたローディング装置についても、受注したらすぐに生産できる体制になっていた。

このようなチューブマスター社の開発製造能力は確認訴訟法の緊急性の要件に適合しているとCAFCは判示した。

第2に、現実性の要件は、確認的救済の時点で技術がどのくらい具体的か、または「相当に固まっている」かに関するものである。

判例法においては、初期段階にだけ存在する技術は現実性の要件に適合しないとされている。この事件では、チューブマスター社の4つの基本的なローディング装置の設計は全ての反応器の構成を含むように作成されており、したがって、チューブマスター社は、本質的な設計変更を行うことを予期していなかった。

キャットテック社は、チューブマスター社は顧客または潜在的な顧客に対して何も開示しなかったから、構成1、2、4については、争訟は存在しないと主張した。

これについて、CAFCは、製品の宣伝または販売の準備が行われなかったことは争いが緊急性を欠いていることの証拠になりうるが、確定的なものではないと宣言した。メッドイミューン事件において、「全ての状況」を考慮しなければならないことが明らかにされていたからである。

次に、CAFCは確認訴訟法の法目的について言及した。それは、自己の権利が不明確で裁判の遅延により損害を被るおそれがある人から、不可避的損害を防ぐことにある。地方裁判所がその裁量権を行使して、構成1、2、4に関して非侵害の確認判決を下したことは適切だった。

次に、CAFCは、構成3について非侵害の略式判決を発行することについて言及した。

660特許には「前記マルチチューブ反応器にロードされる最小の単一粒子よりも、幅の小さい隣接プレート間のスペースであって、該スペースは粉塵と不完全な粒子を収集する」と記載されている。

これについて、キャットテック社は、クレームは「全ての」スペースが触媒粒子全体の幅よりも小さいことを要求しているのではなく、プレート間の「1つのポイント」(「ピンチポイント」)だけが正しいサイズでなければならないことを要求していると主張した。

CAFCはこのクレームの文言に注目して、「660特許は、隣接するプレート間の各ポイントが触媒粒子全体の大きさよりも小さいことを要求している」という解釈を示した。

また、CAFCは、キャットテック社の「ピンチポイント」の構成は、触媒粒子全体の幅よりも狭いスペーシングが存在することの要件を重要でないものにすると言及した。

さらに、660特許の親出願の審査過程において、キャットテック社は、隣接するプレート間の各ギャップが触媒粒子全体よりも小さいと主張して、その特許出願に係る発明を従来技術から差別化していた。

そのギャップの目的は、粉塵と不完全な触媒粒子を収集することであった。チューブマスター社の方法はスペーシングの限定に適合しなかったため、構成3について非侵害の略式判決を求めるチューブマスター社の申し立てを認めた地方裁判所の判決を、CAFCは維持したのであった。

この事件は、確認訴訟法における裁判権について、最高裁判所が、メッドイミューン事件の「全ての状況」の基準を判示して以来の最初の事件である。

CAFCは、裁判を行うためには、「緊急性」と「現実性」の要件を満たす必要があると判示した。

この事件では、顧客または公衆に対して企業が製品を宣伝しなかったとしても、確認判決の基準は成立するとCAFCは判示した。

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