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月刊The Lawyers 2008年8月号(第107回)

3. E.I. duPont 対 MacDermid Printing事件

No. 2007-1568 (May 14, 2008)

- 仮出願による優先日の利益を享受するための法律上の要件 -

CAFCは、マックダーミッド(MacDermid)による米国特許第6,773,859号(859特許)の侵害行為を禁止する仮差止めを求めたデュポン(Dupont)の申し立てを棄却した地方裁判所の判決を破棄し、事件を差し戻した。859特許は感光部材を用いたフレキソ印刷プレートの製造に関するものである。

CAFCは、地方裁判所が、現存する特許の有効性に関する実質的な問題の認定において、裁判権を乱用したと判断し、通常出願は、法律上、仮出願の出願日の利益を享受するものであると述べた。

デュポンは2002年2月27日に出願された859特許の譲受人である。

859特許の手続において、デュポンは、元々、2001年3月6日付で仮出願を提出していた。通常出願において提出した出願情報シート(ADS)には、「継続出願データ:本願は現在審査中の仮出願番号:60/273669、出願日:2001/3/6に基づく通常出願である。」と記述されていた。

仮出願と通常出願は同じ明細書及びクレームであったが、通常出願が5名の発明者であるのに対し、仮出願は1名の発明者であり、その1名は通常出願の5名のうちの一人であった。

特許が2004年8月10日付で発行された際、849特許の公報表紙には仮出願の参照が記載されていなかった。そのため、デュポンは訂正証明書を要求し、それは2005年7月26日に発行された。

デュポンは2006年4月、マックダーミッドを特許権侵害で提訴し、仮差し止めを申し立てた。

マックダーミッドは、とりわけ、もし特許の優先日が通常出願の出願日であるならば、特許性判断の基準日は2002年2月27日となるため、2000年9月のトレードショーで発明が公用された事実が、特許法第102条(b)の法定阻害理由になるとして、特許無効とする反訴を提起した。

デュポンは当初、基準日を通常出願の出願日とすることについて争っていなかったが、後に、適切な基準日は仮出願の出願日に基づくべきであると地方裁判所に指摘した。

デュポンは、第102条(b)の目的の適切な基準日は、実際には2000年3月6日であるため、基準日は、2000年9月に実施されたトレードショーにおける公用より前であると主張した。発明日が公用された日よりも早ければ、この公用は法定阻害理由から除外されるからである。

マックダーミッドは、以下の理由から、特許は仮出願による優先日の利益を享受することができないと主張した。

(1)仮出願と通常出願は同一の発明者によるものではない。

(2)ADS中の仮出願に関する記述は審査基準(MPEP)の文言を使用していない。

(3)出願受付証(filing receipt)、公開公報、特許公報のいずれも仮出願の参照を記述していない。

(4)デュポンは米国特許庁に対し、この不備について特許が付与された後まで指摘せず、訂正証明書で指摘したのは不適切である。

地方裁判所は、優先権に関するマックダーミッドの主張は、それより前のデュポンの優先日に関する供述と組み合わせると、実質的な有効性の問題を生ずると認定し、それに基づき仮差止めの申し立てを棄却した。

CAFCは、地方裁判所が仮差止めの申し立てを棄却した判決を破棄し、地方裁判所が、デュポンの特許について仮出願の優先権を認めなかったことは不適切であると認定した。

CAFCは、マックダーミッドが仮出願に気付いていたことは特に重要であると述べた。

CAFCは、仮出願の優先権の資格は米国特許法第119条(e)(1)に規定されており、当該条文には以下の4つの要件が列挙されていることを指摘した。

(1)仮出願は第112条第1項の要件を満たさなければならず、かつ、通常出願はそれと同一発明でなければならない。

(2)通常出願は仮出願日から12ヶ月以内に提出しなければならない。

(3)発明者の重複がなければならない。

(4)通常出願には仮出願を特定するための記述が必要である。

マックダーミッドは、適切に5名の発明者を特定するよう仮出願を補正すべきであったと主張した。

CAFCはこの主張を2段階に分けて拒絶した。第一に、法律問題として、双方の出願が少なくとも1名の共通の発明者を含んでいれば、発明者の重複の要件が満たされる。第二に、仮出願の発明者の訂正は、発明者の重複の立証のみに必要となる。

マックダーミッドは、仮出願の優先権の主張において、通常出願の出願情報シート(ADS)の中に、標準的ではない文言をデュポンが使用したと主張した。

CAFCは、優先権の要件となるような「魔法の言葉」はMPEPには規定されていないと判示した。むしろ、基準は「分別のある人がその記述を読んで、(中略)出願人がその出願より早い仮出願について優先権を主張していると判断するかどうか」であると述べた。

マックダーミッドは、審査経過には、米国特許庁がデュポンの優先権主張を元々認識していなかったという証拠が含まれており、特許付与前までに瑕疵が確実に訂正されるように出願人は努力しなければならないと主張した。

CAFCはこの主張を拒絶し、「審査過程で努力が欠如したからといって、少なくとも本件の事実の下では、米国特許庁の瑕疵を、登録後の訂正証明書の提出を目的とした出願人の瑕疵に転嫁することはできない」と述べた。

結論として、CAFCは、特許は先の優先日の利益を享受すると判断し、差止めを棄却した地方裁判所の決定を破棄し、正しい優先日を考慮した上で仮差し止めが適切か否かの検討について、事件を地方裁判所に差し戻した。

CAFCは、本件における優先権の争点のような、仮差止の申し立てについての法律上の「実質的問題」によって、実質的に勝訴できる可能性があることを明確にしている。

地方裁判所は、通常出願が仮出願による優先権の利益を享受できるかどうかについて特許の有効性に関する実質的な問題を侵害被疑者が提起したことを支持していた。

しかし、CAFCは、このアプローチを拒絶した。通常出願は、法律上、仮出願による出願日の利益を享受していたからである。

このように、地方裁判所は、基礎となる事実が争点となっていないため、他の仮差止めの要因を検討し、争点を解決しなければならない。

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